032 知
なんか居るって程度の存在なのに神なのかと呆れもしたが、実際に居るのだからそんなものかと諦めた。
「理解はしたが納得は出来ないという事だな」
「普通は理解できない場合が多いんだけどな、さすがは異なる所から来たものか」
ほう・・・・
「ここの世界にいる事情が分かるの?なら帰り方とかも??」
当たりくじを引いたのだろうかという希望が出た。
「事情という程の事は分からない、ただここに居るはずではないものが存在するというのが分かるだけだな。帰り方なんて検討もつかない」
「あーそうか」
そんなものだよな。
「それが分かりそうな神様のこころあたりは?」
「無いな」
「さようか・・・」
手掛かりなしだな。
「しかし、話相手としてこれ以上会話が出なさそうなのだが?やっぱり帰ってもいいかな?」
「ご飯用意してくれるんでしょ?それがまずお仕事なのと、ヨシカの居た場所の話が聞きたいかな。ここではないどこかのまだ見ぬ世界といのに興味がある」
「仕事か・・・」
はぁ・・・とため息が出るが仕事と言われると断りづらい。
恐るべき仕事中毒だな、それでもこんな話をする機会も無いかもしれないしなによりも色々と情報を収集できるかもしれない。
そう割り切って自分が居た町や日本についていろいろと語って聞かせた。
関心したり色々と面白がってオロチは聞いた。
様々な事を話し、ご飯を食べてぐーたらと過ごした。
そして一カ月があっという間に過ぎた。
・・・・・・・・・。
となると思ったが実際は10日ぐらいで別件が発生した。
神についての情報収集をしている時にある事が分かったのだ。
神がもつ知識ついて。
気付いたのはオロチとの会話の端々での違和感だろうか。
現代日本の話をしているときに、ついつい現代の用語を交えて話をしたのだがそれについての反応だ。
たとえばテレビや冷蔵庫などの電化製品について。
この世界には当然無いものだからそれは何って聞かれるとする。
電気を使って絵を写すものだとか冷やすものだと説明すると納得するのだ。
だが「電気」については言及しない。
そう言った違和感から結論として、神はどこかの情報端末から自動的に知識の保管をしているようだ。
万能のようだがこれもまた話す人間が理解できている内容に係わる事を補足として理解しているようで、話を聞かせる方が形容できていない事については引き出せないようだ。
便利なものだと思ったのだが、やはり知り得ない知識は呼び出せないという制限のようなものが伺えた。
使える機能だなと思ったのだが残念だ。
それでもそれに気づいてから一つだけ知りたい事があったので、いろいろ手間暇を掛けて攻略する事に決めた。
喜ばれる食事を作り、起源をとりつつそれに関して話を振って行きなんとか知識として使えるものを引き出そうと頑張ってみた。
手探りの作業は難攻してだんだんといらいらしてくるのだが、苦労をしてでも欲しかったものなので挑戦は続いたのだ。
それ以外にやる事があまりなかったと言うのも理由の一つなのだが。
攻略開始からかなりの日数を掛けて、お役目一カ月の前日まで要してなんとかそれっぽい知識を引き出せた。
他事であれば、とても面倒なので二度とやらないと思えるほど精神的にも肉体的にも疲れ果ててしまったのだった。
それでも知りたかった事あ一つ知れて満足だ。
しかし神様とはこういったものかという気持ちが強く成りすぎて、もう祈りとかするのは無理だと確定しまったのは良かったのか悪かったのか。
一カ月近くも世話を焼いているとかなりオロチとも仲良くなった。
自分の目標やらの話、神様の宴や異国の神の話などお互いに興味を持てる話をしたりした。
楽しみだから是非頑張れとまで言われて少し嬉しかったが、神の理不尽さについても聞けたので少し今後の行く末が心配になる場面もあった。
気になっていた事の一つで今の自分の祖先になる神についても聞いてみた。
来たばかりの時に「鬼」の血が混じっているという話を聞いたが、外観が変わったり力が付いたりと恩恵ばかりをもらっていた。
神の一人なんだとかいう話だが、随分昔から姿を現さなくなったそうだ。
神は新しくどんどん生まれて消えていくらしい。
基本人間の一生があっという間に思えるほど長生きらしいが、ちょくちょく?入れ替わりがあり会えなくなる神もいるようだ。
消えた神がどうなったのかは分からないとの事で、ヨシカのようにここではないどこかへ行ったという憶測もあるし代替わりをするや無に帰ったなんて話も出た。
概念的な存在であれば人々から忘れ去られて消えるっていう話がありそうなのだが、実体をもつ事ができるこの世界ではアピール三昧する事で忘れられる事なく存在できるだろう。
個人的には長く生きて飽きたから自消するだとか、人に紛れて暮らしているなどあるんじゃなかろうかとオロチを見ていると思ってしまう。