表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その腹黒さも一面である  作者: 縁側之猫
2章 宮仕え
32/61

030 オロチと食事

「君がヨシカか、よく来てくれたね」


欠伸をしながら男はこちらにようやく答えた。


「貴方は?」


ここに居るのだがから儀典院の所属員だと思うが服装も整っていないので判別できない。


こちらの名前を知っているようなので関係者なのは間違いはないだろうが。


「私がオロチだよ」


・・・・ふむ


「帰っていいですか?」


「いやいやいや、来たばかりでしょう君」


可能性として竜神が人の姿を超常現象で取っている。

もしくは竜神の血を引く一族の人。

最悪の場合は単なる詐欺師。


どれだろうがとりあえず帰りたくなった。


「貴方がオロチだとして、私はここで何をすればいいのですか?」


基本は帰りたいのだが、一応仕事だから気を遣ったほうがいいだろう。


「話し相手になるのとご飯つくって」


軽いな、神とはこんな感じなのか。


そういえば兎もこんな感じだったきがするのだが、こんなものか。


抗議の声が聞こえてきそうだが、気のせいだろう。


「私を指名した理由はなんです?」


かなり気安く話しているが、オロチは気にしないようだ。


「この間の宴の時に兎から話を聞いてね。会ってみたくなったから」


迷惑の原因は兎肉からの情報らしい。やはりあのとき絞めておけばよかったか、


「労働時間は朝から夕方まででいいですね?」


「え、いや一ヶ月ここで」


「朝から昼に掛けてと昼から夕方に掛けて二度休憩を貰います。また昼食は別で時間を頂きます」


「だから一ヶ月まるまると」


「人間には休みが必要ですし、個人的に気を休める時間が必要です。仕事をするに当たっては緊張を持続させるのは効率が悪いのですが」


「・・・はい」


「では用があるときのみオヨビクダサイ」


言うだけ言って襖を閉めて、部屋から出る。


いろいろ問題が在ったとしてもとにかく一月終われば帰れる訳だ。


休暇だと思って最低限の仕事をこなして楽をしよう。


今日はもう話をしたので、あとはご飯の準備だろう。


台所を目指して暫く彷徨ってから料理に取り掛かった。


食材として米があるようなので適当に炊く。


他人の台所の使い勝手など良くわからないので、基本知識を元に適当に。


他にあったのは調味料の塩と干からびたにんじんだろう。


皮を剥いて残り少なくなった硬い身を細かくして塩を振りかけて炒める。


米が炊けるのを待って見つけた器に盛って、先ほどの部屋へ向かう。


「ご飯ですどうぞ」


出されたご飯と一品に少し不満が見て取れる。


「食材が無かったので二品ですが、清貧を重んじるのも神の勤めかと」


神話の中には酒池肉林を体現する神もいるのだが、大概身を滅ぼすな。


「昼には少し食材を持ち込みますので」


それだけ言って、部屋を後にする。


米が食べれるだけ上等なものだと思うのだが、神様だしな。


まあなんにしても飯と会話をすればきっと良かろう。


残った時間は本でも読んで寝て過ごすか。


役割については思うところもあるが、面倒が先に立つので仕方が無い。


娯楽のために一月の時間を差し出すのも対価としては問題だ。


しかし来年はきっと不作になるのか。


日照り対策と川の氾濫用の対策を早急に行わなければな。


「実を取るなら遜って、誠心誠意仕えるべきだったのだろうが・・・」


いい加減に権力に媚びるような生き方にも疲れが来ていた。

大名の所でも相当のストレスだが、あそこはまだ予算を使って強権が発動できるだけましなのか。


逆にいえば神様相手のほうが慎重に行くべきなのだが、自堕落な生活をしてそうな神を崇め奉るのもなにやら納得が出来ないのだろう。


自分に折り合いが付けれないのだから、どうしても駄目だな。


今後のやり方を検討しつつ、結局何も好転する要素がないまま小屋へ戻ってきた。


食料倉庫を見てみると保存食やら生鮮食品やらが結構揃っている。


あまり肉や魚の類の生ものはないのだが、野菜類はあるていど日持ちするものが多い。


味噌汁は作れそうだ。


贅沢を言えば豚汁が作りたかったが流石に豚肉は無かったのだ。うむ残念だ。


色々と疲れたのでご飯を食べて昼まで本でも読んでいよう。


昼食はおにぎりでも持っていけばよかろう。


しかし神様とか普通の飯は食べない様な気が・・・。


お神酒と生米だけでいいか。


きっと食べなくても平気なんだろうし、一日一食でもいいのではないだろうか。


しかし仮にも神だからやはりモット丁寧に扱った方が良かっただろうか。


まあ神なんて日本ならどこにでも居ると言われてるのだから、気を使いすぎても駄目だろう。


なにより、味噌汁とご飯が美味いのだから細かい事は後回しにしていいのだろう。


腹の虫にはどんな人間も敵わないだろうしな。


それでも昼食用に味噌汁は多めに作ってしまっていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ