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その腹黒さも一面である  作者: 縁側之猫
2章 宮仕え
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028 社

三日を要して儀典院の社へ到着した。


宗教組織というのはどこも信者から搾取した金で豪勢に過ごしていると思っていたのだが割と質素なようだった。


門構えなどは綺麗なものだったのだし、建物面積はかなり広いようで奥はどこまで続いているのか解らないのだがそれでも建物は古く年期の入っているものだ。


神社仏閣の建物にある風格が有るように思える。


それでもところどころ痛んだ壁や床を見て取れるので絢爛豪華とはいっていないようだ。


対応してくれたのは巫女服を来た女の人。


しかし、巫女服は独特な感じがよいなあ〜。


見惚れていると案内された部屋に着いたようだ。


去っていく巫女さんに少し残念な気持ちが。


通された部屋に居たのはかなりご年輩の宮司さんのようだ。


「ようこそお越し下さいましたヨシカ様」


頭を下げられたのだが様付けになんともむず痒い気持ちになる。


「ご指名により来ましたヨシカです。詳しいことはこちらで聞いて欲しいと言われましたので、何かとご迷惑をおかけしますがお願いします」


うむ、これぐらいの社交辞令は言えるのだ!!


社交的なのか疑問は尽きないがな。


「催事に関してですね。それでは一から説明させて頂きます」


そういってかくかくしかじかと説明が成された。


要約すると神様の話相手として呼ばれて、一月逗留してご機嫌を取る。上手く行くと翌年の気候が穏やかになり、機嫌を損ねると天災が多くなるということだ。


一月拘束され、その上そこで過ごした記憶は曖昧なものにされるというのは確かに生け贄に値するかもしれないな。


「質問よろしでしょうか?」


「どうぞ」


「気分を損ねると一月待たずに帰されるという事は有り得るのですか?」


「過去に三度程記録が有ります。その時は例外無く飢饉となる天災が起こり人々が苦しみました」


気分でそのレベルなのか、ますます失敗しそうな気がしてきた。


それでも行かねばならないのだが、ご飯どうしたものかな・・・。


基本逗留期間は自炊が必要なのだが、それほど料理などは得意じゃない。


最近は調味料を使った美味しい料理に慣れてしまったから自分で作る粗末な食事に一ヶ月耐えれるのか?


殺人料理レベルではないのだが、心配だ。


「そこまで心配されなくても余程の事をしなければ催事の一月を終えずに返される事はありません」


眉をひそめたこちらに気を使ってそう言ってくれたようだが実際は食べ物の事を考えていたのは黙っておこう。


「ありがとうございます」


「いえ、突然の大役を仰せつかったのですから緊張して当たり前です。私どもも精一杯ご助力しますのでご心配なく」



心配が減る要素は少ないのですがね。


「それで何時頃山に迎えばいいのですぁ?」


「今からです」


えっ、・・・・なにいってるんだこの人は。


「急ですね・・・」


「再三の催促が来ておりますのでこれ以上お待たせ出来ないのです」


今さっき気遣うような発言があった気がするのだが流石宗教系の組織だけあって神様至上主義なんだろうな。


疲れてはいたが、仕方がないので山の社でさっさと休む事にした。


秘境というような獣道を進みながら山奥へと進んでいく。


道も悪いので歩きに変えたが、体の丈夫さのおかげで苦ににはならなかった。


結構な時間を移動に費やして、山奥の社に到着したのが夜中になった。


空気が綺麗なのか月明かりは山道を歩くのに十分な光量だった。


山道を歩くのには少し自信があったのだが、案内の巫女さんのほうが歩き慣れてる感じが凄くした。


足早なのもそうだが、歩きが安定して軽いようにも見える感じだった。


嫌がらせで早足なのではなく、こちらの歩き方を見て早さを調整しているようだ。


本気を出されるとはぐれそうだなと感嘆した。


そうこうしていると到着。


社とは聞いていたのだがどう見てもあばら屋です。


なんとか雨露を凌げる程度のようだが、すきま風はひどそうだ。


送ってくれた巫女さんにお礼を言って現状確認を開始。


食料は別にある倉庫まるまる揃っていたようだが、それ以外には特に無い。


隔離された世界だなこれはと改めてそう思った。


まあ静かで寝て過ごすには丁度良さそうだとおもったのだが。


状況はよくわからないの一言に尽きるのだ、が決まってしまったものは仕方が無いとして休暇気分でゆったりする気まんまんだった。


実際未だにまだ声も顔もしらないのでどうしたものかと不安もあるんだけどな。


それ以上に食っちゃ寝、食っちゃ寝できるのは久しぶりなので楽しみなぐらいだ。


社に荷物を下ろして適当に布団をしくとどさっとそこに倒れ込んでだらーとする。


疲労の蓄積というほどでもないが、考え過ぎも含めて疲労感が酷いので仕方がない。


しっかり日中干されていたようで、日向の匂いががしてどんどん眠くなっていく。


本当は近くの祠へ挨拶に行くらしいのだが、面倒なのでもうどうでもいい・・・・。


「寝るか」


とりあえず投げ出して睡魔に任せてそのままうとうとと寝入った。


夢は見なかったが翌日起きた時にはかなりすっきりした気分だった。

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