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その腹黒さも一面である  作者: 縁側之猫
2章 宮仕え
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023 学舎

ギルドに顔を出したあと学院へ足を運んだ。


学院跡地にはやたらと豪華な建物が建っているのだが、門の所には学院の表札がある。


おおう、何があった・・・・。


平屋建ての建物が進化したものだ。


木造建築2階建てだが、最近流通しだしている瓦屋根や支柱に朱色などの派手な色が塗られている。


無駄遣いだなーと思いつつ受付に顔を出す。


「すみませんが学長の部屋ってどこですか?」


「はい、廊下を右に曲がって頂いて一番奥になります」


受付で答えてくれた女性はにっこりそう教えてくれた。


笑顔か、ここでそれが見えれるは嬉しい事だ。


教えてもらった通り進んでいく。


区切られた部屋の前を通ると、数学や文字学などいろいろな事を講義しているのが覗けた。


識字率が上がるといいな。野望の為にも。


長い廊下の奥の突き当たりにようやく辿り着きノックをする。


「どうぞ」


渋い声を聞き扉を開ける。


「お久しぶりです」


声を掛けたのは質素な机といすに腰掛けている老人だった。


「おお、ヨシカさんじゃないか。いつこちらの戻ったんだい」


「今日着いたばかりですよ、ギルドと末息子さんの所に挨拶に行っていたので」


「ははは、気にしないでください。私はお飾りのようなものなので」


さわやかに笑う顔が癒しになるような、そんな感じだ。


少し禿上がった頭のこの老人は学院の学長を務めているヤスナカさん。


識者として旅をしていた所紆余曲折があり学長を押しつける事に成功したのだ。


流石が旅をしていただけあって見聞が広く、自分では考えつかない事も次々と発令してくれている。


「ここも1年でかなり立派になりましたね?」


建物が建て替わってるのにも驚いたので聞いてみた。


「君が大名の所でいろいろやってくれた結果かな、街道が整備広範囲に広がったから遠くからも噂を聞きつけてここに来る人が増えたんだよ。お陰で研究施設の方も面白い人材が増えて来たりして毎日楽しませてもらっているよ」


本当にうれしいという様に笑われると心苦しいのだが、正直面倒なので押しつけた感が有ったからな。


「それはなによりです」


とだけいっておいた。


「それはそうと、今製鉄関連の村と次は新しく工芸関連に特化した村を作る予定です。機会があれば見に行ってみてください」


「ほう、それは興味深いな。是非伺わせてもらうよ」


発展の為にもそうしてくださいと言って学院も後にした。


報告書でも学院に研究施設が増築され、水車小屋の機構などを取り入れた様々な研究が行われているのだが爆発的な技術革新もまだまだのようだ。


それでも生活の役に立つものは徐々に浸透してきているのだとか。


3番目に訪れたのは商人ギルドだった。


先ほどギルドで顔を会わせていた長も戻って来ているようだ。


「おおうこっちにも顔出したのかヨシカ」


思わずムッとしそうな暑苦しさを醸し出しているのだが、なぜか憎めない。


「一応見ておこうと思ってね。全体的な統計はどうだ?」


去年ここを出るまでは、経済発展は当然あったのだがやはり地方都市の周辺のみの取引が主体だったので発展にも行き詰まり感があったのだが、


「城下と道が繋がった頃からまた徐々に変化かな」


そういうと資料をこちらに見せてくれた。


推移としては今までこの付近では取れなかった物が入ってくるようになったのと、城下と他の町の商会とのやりとりだ。


相変わらず各町での商会の影響力は高いようで、利益の享受が見受けられる報告だ。

富を得るのはいいのだが、踏み台を使って得るようなものは自分だけでいいだろうと利己的に理解した。


大名の後ろ盾もあるのでその辺りも少し改善していかないと、下の階級まで還元しないと思われる。


ざっとした方向性だけ話し合って商人ギルドも後にした。


最後に訪れたのは自宅住まいだ。


ツバキが管理していてくれたのか荒れ放題という事はなかったが、ここの一角だけは変わり映えがないような気がする。


初期につくられた粗い仕上げの木造建築。


建物の中に入っても大した家具は無い。


奥の部屋に入ると幾つもの本棚が有るのだが、そこに収まるべき物は無かった。


申し訳程度にいくつかの棚を埋めているのが見えるだけ。


分かっている事なのだが、少し物悲しくもなりその日はゴザを引いただけの簡素な造りのベットに横たわった。


懐かしい我が家なのだが、なにか心をかき乱す天井を見ながらヨシカはその日眠りに就いた。


夢を見た。


目を開けるとそこは良くしる自分の部屋で"蛍光灯"の明かりに照らされた、文明の香りの色濃い部屋だった。


お気に入りの書籍は本棚にあり、明日持っていくだろう学業に必要なものが詰まった鞄は膨らんで机の上にある。


窓から差し込む朝日が眩しかった。


扉を叩く音と掛けられた懐かしい声を聞いた所で目が覚めた。


部屋の内装で夢だったなと気付いた。

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