表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その腹黒さも一面である  作者: 縁側之猫
2章 宮仕え
24/61

022 帰郷

突然日本に帰れた!!

という話では当然ありません。

一年も経過すると、それはもう仕事が苦痛になってくる。


成果も最初ほど伸びずになだらかに上がり始めるからだろうか。


むしろ、城内(ここ)では親しく会話する人間が居ないからだろう。


ツバキに怒られてた頃が懐かしいとは。


人によっては遣り甲斐がある仕事なのかもしれないが、最終的には隠居したい身としては面倒だという所だろう。


と、そういえば。


「都市に一度行きたいのですが構わないでしょうか」


その日登城して、大名へそう切り出した。


一度考えるようにしていた大名だが、今の成果に満足しているのか好きに致せと返された。


「そうそう、息子の近況も報告致せ」


そういえば、そんなのも居ましたね。


しかしあの馬鹿息子でも可愛いのか、親馬鹿なんだろうかなそんな所は。


それとも自分に見る目が無いのか、色眼鏡で見ていたのか。


評価は保留にして、出かける事にしたのだが。


「コジュウロウさん、なんで付いてくるんですか?」


「お前の補佐をするのが役目だからだ」


相変わらず厳つい顔でそう言われる。


最近思うのだが、この人は左遷でもされて付き合わされているのではなかろうかと。


季節が一巡りしたにも関わらず相変わらずこちらの補佐から離れないのだ。


繋ぎを取れる人員もほどほど出来ているのに、嫌われているのか大名に?と思ってしまうほど。


まあいろいろ顔が効くのと、城内の風当たりが弱くなるので重宝するんですがね。


久しぶりの里帰りになるわけだが、都市も人生の比率では長くないので郷愁には至らないだろうか。


それでも懐かしい。


が、


その筈なのだが。


「・・・・・・・・・・・」


都市の運営拠点にして、統治者の出迎えを受けた事で脳が思考停止した。


この、丸い物体はなんだろうか。


一言で云い現わせば、


「豚」


「なにかいったか?」


思わず声に出してしまったが、呟き程度だったので聞き取れなかったようだ、セーフ。


「いえ、得には」


「お前の活躍も耳に届いているぞ、父上もこの頃頓にご機嫌がいい」


ぶほっほっほっほと笑い方も酷くなっている。


なんでこうなった・・・、一年前はまだ細身だが筋肉もあり背のあった嫌みな男だった筈だが。


なにがあると人間ここまで進化できるんだろうか。


適度に挨拶だけして、学院とギルドに顔を出す事にした。


町並みを見る限り、順調に栄えているようだ。


ギルド前まで来て少し建物が増築されている事に気付いた。


1年程離れただけだが変化はあるものだな。あれは行き過ぎだが。


ギルドに入ると割と混雑していた。


受付のフロアを抜けて2Fへ上がっていくと懐かしい顔ぶれが集まっていた。


「ヨシカ!!」


一番にこちらに気づいたのはツバキだった。


嬉しそうに駆け寄って手を取りぶんぶんと振り回してくれる。


「ようやく戻ったか」


ふんっと鼻をならしながらノブヨシも声を掛けてくれた。


他の面々も次々と声を掛けてくれる。


思わず涙腺にきそうになる。


ちなみにコジュウロウは末息子に任せて置いて来た。


「順調そうだね、ここは」


都市を見た感想を正直に告げるがツバキにはずいっと迫られる。


「順調じゃないわよ!!大名に呼ばれてそのまま帰ってこないんだから。事務処理その他どれだけ苦労した事か!!」


そう迫らないで欲しいのだが、こ・・・怖いじゃないか。


「そうわ言っても、皆が送り出したんじゃないか。それにあの時点で居ても居なくても運営は回ってたと思ったけど?」


「それはそうだけど、その直ぐ後にアレが来たお陰でどれだけ苦労したか!!」


だから・・・目が怖いと。


「そのアレに当たる末息子だけど、なんであんなになったんだ」


ここで贅の限りを尽くしているのかと不安になるのだが、ツバキからは違う理由が告げられた。


「あの馬鹿は、就任当初から税の引き上げや商人からの賄賂を貰おうとかふざけた事を始めたから直ぐに施政から外れて貰ったわよ。やる事もないから毎日毎日食っちゃ寝食っちゃ寝してたから1年であの体型になったわけ」


それでよく満足してたものだと思ったが、会話の端々から見える器量では直ぐに言いくるめられたのではと思いいたる。そしてそのまま疑問も抱かず現状に至ると。


どうでもよかったのでそこで切り上げる。


「なんにしても心配していた事態にならなくて良かった」


最悪の場合も考えて色々指示書や手立てを講じて置いたが、無用だったようだ。


みんな優秀だな。


「なんにしても、ただいま」


うん、これがしっくりくる。


「「「おかえり」」」


返された挨拶に、本当に涙腺が揺るんだ。


ああ、こんなにもここに馴染んでいたんだなと。

そう思ったのだ。


----追記----


コジュウロウの弟である使者は、なぜか看病に当たった女性に惚れこんでここに住みこみ、医院の手伝いをしているという。


嫌み満載だった記憶しかないのだが、コジュウロウのように厳つく言葉が悪いだけだったのだろうか。


正直聞かされるまですっかり忘れていた。

すまなかったと思うが、出会いがあったならチャラだなと思った。

改訂しました。読み返すと誤字脱字が多い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ