013 試し
なにをもって順調とするのか解らないが一応は順調なんだろう。
経過報告では、交渉は上手くやっているとの事。
物流が動き出すのが来週ぐらいだが。
以外に貯まっていた事務仕事を片づけながらお茶を一杯飲んで一息をつきながら現状を思う。
商業、交通、一次産業と進んで来たが次は二次産業あたりだろうか。
その先には娯楽産業も立ち上げないとだが。
報告書の一部にある住宅の建築あたりの懸案も片づけなければならないだろう。
まずは集合住宅から作るべきか。
家族構成の多い人間には狭いという問題あると思うが、おおむね初期に転居してくる人間にとっては衣食住のう住居の手配がかなり好評のようだ。
多少窮屈でも屋根がある暮らしは有り難いようだ。
現状は生産サイクルも考えると長屋建てが一番量産しやすいようだが、そのうち多階層の建物も建てたいところだな。
親方に頼んで計画を進めておくか。
それともう一つ、二次産業のすすめだが加工業全般が二次産業という考えて合っていたかどうか・・・。
まあ言い方はどうでもよく産業として成り立てばいいのか。
まずは単純に加工食品として保存食と酒あたりの製造を考えるが職人が要る・・・かな。
簡単な干し肉やら漬け物といったものから作っていくか。
燃料に当たる木炭類も山が近いから考えねばか。
最後に消費を促す為に販売所を兼用して酒場のような施設もつくるか。
労働の対価を消費して貰わなければ経済回らないしな。
経費を浮かせる為に肉体労働に従事しますかね。
事務仕事よりは肉体労働の方が楽だとは思っていたが実際一昔前より効率があがっているようだ。
具体的に筋力が上がっているような?
ゲームで言うところのレベルが上がった時の様に木の切り倒しや運搬時の難易度が下がっている。
慣れのせいかもしれないが、目安になる能力値が見えるわけでもないので感覚の問題だけかもしれない。
切り出しに使っている道具も良質の物になっている事も影響を与えていそうだ。
そう思うとゲームのレベルアップというのも、最適化と道具の性能向上という意味であながち的外れでもないのかもしれない。
人間どんな事にでも慣れるということか。
まずは酒場の建築から着手する。
労働者の慰労も考えると優先度が高い気がするのと、冒険者の情報交換はやっぱり酒場だろうと流行っていないギルドを思い決断した。
大通りにする予定の道沿いのスペースに建築を始めるが酒場の内装と間取りとかどんな感じなのか?
こういった描写は店内のみが多いから厨房関連はわからないのだが、親方に丸投げしてみた。
人を使うというのはこういった事だろう・・・たぶん。
兼用として宿屋スペースを若干2Fに建てる事とする。
親方は悪戦苦闘していたようだが知りうるアイデアをイメージとして伝えるとなんとなく出来るというのは凄いものだな。
できあがった酒場で開店祝いと称して馬鹿騒ぎをしてみたが・・・酒とかもう一生飲まない。
うっぷ・・・、
二日酔いとか酷い仕様だ。
さて、仕事の斡旋と住居の管理だが以外な事に適任者が居た。
ノブヨシと一緒に拾ってきたサトウとタナカだ。
冗談のような没個性の名前だが才能は別のようだった。
サトウは職の斡旋をせっかっくなのでギルドの仕事として受付でやらせてみたら合っていたようだ。
タナカの方は役所よろしく住居系の管理をやらせてみたら合っていたようだ。生き生きと管理人をやっている。
ノブヨシはというと相変わらず畑仕事に性を出しているようだが、ふと思って声をかけた。
「ノブヨシ、ちょっといいか」
「なんだよ、今からまた畑に出るんだからよ。くだらねえ事なら後にしろよ」
「いやなに、好奇心だが。腕試ししないか?」
「???」
なにいってんだという顔をされたが、疑問がよぎったのだから仕方がない。
気になったのはよくある兵士に畑仕事をさせるといい訓練代わりにるというものだ。
理屈としては鍬をもって畑を耕す動作が武器を扱うのと似た動作で体が覚えるというのと、肉体労働を毎日していれば体が出来上がってくるという事らしい。
たしかにあれは鍛えているというに値する重労働だが。
「いいから付き合ってくれ」
自身の調子もみておきたいというのもあった。
実際問題として武芸を専門としてやっている人間と組み手のような事をやらないと上達しないのだろうがある程度こなしておかないと今後の荒事に対応できなさそうだとも。
刃物はいまだに違和感があるので長い棒枝からこしらえてお互い構える。
一合、二合と撃ち合いを始めるがやはり筋肉の着き方が良くなっているのか打ち込みが激しい。
カンッ、カンッと打ち合わせる棒もいい音を上げている。
武芸を習得した事は無いが胴体視力と身のこなしを含めて捌けるのだから、この身体の性能は常人よりやはり高いのだろう。
ただし見てから避けるまでが早いだけで瞬間の判断では鍛え方が物をいいそうな感じだが。
本格的に鍛えておいた方がいいのだろうか。
小一時間もして汗だくになった所で切り上げた。
「ノブヨシも腕力上がっているな。打ち込みがかなり激しかった」
手の痺れを見てそう評価した。
「なにいってやがる。一発も当てられない上におめえの打ち込みの方が重いじゃねえか。おかげで手が痺れて、このあとの仕事ができやしねえ」
「それは・・・悪かったよ」
「へっ、別にかまわねえよこれぐれえ」
そういって畑へ向かって行ってしまった。
「悪いことをしたな」
「そうでもないわよ」
急に声をかけられびくっとした。
「脅かさないでくれ。心臓に悪い」
「心臓に毛が生えてそうなのになにを言ってるのよ」
声をかけてきたのはツバキだったが、心臓に毛が生えるとかどんな人間だと思われているのだろうか。
「あれでも嬉しそうだったから大丈夫よノブヨシも」
「そうなのか」
「ええ、そうよ」
幼なじみの見解ということであれば相違ない・・・だろうがそれでも悪いことをしたというのに変わりはないだろうから後で手伝うか。
それにしても、畑仕事が好きになったんだなあいつは。
前に町で因縁をつけてきた時の事を重うと変わったものだと思ってしまうな。