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その腹黒さも一面である  作者: 縁側之猫
1章 村造り
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011 推察

識字率は教育や経済の度合いを測る目安になる、と昔なにかで読んだ気がする。


文字が読めるから幸せという事もないのだろうが、それでも読めないから起きる問題といいうのもあるのだろう。


実際問題いくつかの問題がそれで発生している。


一例としてはこうだ、国の上の方から派遣された役人が更新の書類だというのを持って現れた。


ざっと目を通すとこの村に関する税金関連の書類だったのだが、更新書類としては四年後の書類を持ってきていた。


しかも内容がかなりの重税のようで本来払う租税の他訳の分からん税金も上乗せされているのだ。


役人は署名を迫ったのだがよく分からない上に四年先の書類と言うことで確認をとると、なぜか狼狽し始めた。


租税内容と税率についても説明を求めると不機嫌になっていいから署名をしろといって騒ぎ出す始末。


町の役所で最初に確認しておいた租税の率やら更新時期についてこちらか説明してやると顔を赤くして帰ってしまった。


後の話によると不当な租税を何年か先に取り立てるため前倒しで書面を造り承知させようとしていたのだという。

本来そのあたりも厳しいはずなのだが、署名後二年の申し立て期間があるためそれを過ぎたものは確定として扱われる。


おおざっぱな詐欺を役人がやるのかと思ったものだが、新しい村などは必ず一度はこの手の詐欺にあうらしい。


文字をあまり読めない為文章を理解できない事や文面の意味を理解できないなどの理由で役人の言うことならと署名してしまい後日後悔するというわけだ。


法の目を掻い潜った法の悪用という所だが、それがまかり通るのは知識と考える力が無い為あっさりとまかり通る。


正直者が馬鹿を見るというよい凡例だろう。


ここのように階級社会では特にあり得る話だろうし、人間頭を使うのは面倒なものなのでその日食べれれば幸せという観念も影響しているのだろう。


実際損をしていもその存在を知らなければ損をした気もしない。不満が出てこなければ騙す側も良心の仮借もないんだろう。

詐欺師にそんなものが有るかわからないし、騙す時点で極刑ものだと思うが。


幕間を経て


町中へ出張中。

資金源の一つとして店舗経営に乗り出すべく下見に来たのだがなかんか賃貸物件がない。


そもそも賃貸物件で店をやるという事例が無いようだ。


一日歩き回ってみたが土地勘もその手のつても無いので無駄足に終わった。


職業的に何かを始めるにはやはり色々な事が壁として立ち塞がるものだが、初歩的な所で躓くとへこむものだな。


その日はツバキが住んでいた町の家を宿にする。


やはり素人が色々とやってみるというのは無理があるのかな。


就職経験もなく、やっていたのはバイトぐらいだ。


本は大量に読んできたが半端な知識では太刀打ちできないものだな。


圧倒的な知識量を武器にと行きたいが、博識でもないし。


思いつきで生きるのも悪くないと思うが。


考えを巡らせるのは好きなので、星明かりの中で天井を見ながら翌日からの行動を考える。


そういえば


「日本でもよくこうして天井を見ながら寝る前に考え事をしていたな」


ーーー 回想 ーーー


平凡な家庭に生まれたはずだ。


両親に兄が二人いて末の子として生きてきた。


学校でも優等生よりの、それでも優秀とは言えない成績と生活態度を取り友人とも程々の付き合いをしていた。


それでも運動部のような体育会系のノリにも馴染まなかった自分はもっぱら本の虫になっていた。


自分が絶対に手にできない非日常あふれるその物語たちに夢中になっていた。


社会に出るには必要のないその膨大な時間も人格形成には大いに役に立ったのではないかと、ニュースで事件を起こす馬鹿を目にする度に思ったものだ。


人としての常識は何かから生きるうちに学ぶものだが、それが出来ない人間はやはり活字分が足らないんじゃないかと思うぐらいに。


とにかく本を読まない時以外は平凡過ぎる退屈な日々で、寝る前にはよく自分の生き方について考えたものだ。


筋肉脳に言わせれば無駄な悩みという事なんだろうが。


今の自分は悩みが無いだろうか?


夢にまで見た非日常の中にいるはずだが、なにもかも思い通りに押し通すだけの力が自分にはない。


結局はまた寝る前に考え事をするんだと。


「何にしても、本が読めない世界は願い下げだな」


読みかけのシリーズも有ることだしな・・・。


慣れるなんて事があるのだろうか。


半年以上はここで過ごしてきたが、改めて現状を考えるのは久しぶりだろうか。


勝手の違う世界というのもこれはストレスの種だ。


それでも言葉も文字も解るというのはありがたい。


戦乱の中で血なまぐさい事に手を染めたり、言葉も解らず奴隷のように日々を過ごすという事が無かっただけでも格別の幸運と言えるのかもしれない。


自分の身を自分で自由にできるというのは幸運以外の何者でもないのだなと日本も貴重さを思う。


その身の幸運はやはりその場から離れないと実感できないし有り難くも思わないものだったのだな。


それでも自分は幸せだったのだろうか。


よく言われる物質文明の中で物に囲まれて不自由という不自由も無かったのだが、


まあ答えの出ない問題だからいつのまにか寝ていたのだが。

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