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召喚されて

 ドーム型の石造りの空間。


 黒い大理石の床、そこに白い線で描かれた魔法陣。


 周りを取り囲むように、白い法衣のようなものを着た人、人、人。


 そのうちから、綺麗な顔立ちをした女の子が進み出て、俺達に一礼する。



「ようこそ、勇者様。お待ちしておりました」



 ……こうして、俺達は勇者召喚を体験してしまった。








 一通りのテンプレを済ませ、何故そうなるのかさっぱり分からんが、頷いちまった秀吾のせいで、俺まで魔王討伐に参加する羽目になった。


「馬鹿秀吾! 馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、そこまでのーみそがめでたいとは思わなかったぞ!」

「うるさい! 良いじゃないか、誘拐された上に勇者やらなきゃ帰さない、従わないなら無理矢理でもなんて言われたんだぞ! ここまで来たらとことん王道走ってやる!」


 おお、こいつにも多少の自覚はあったらしい。それに、一応考えて受けたならまあ良い。



 ……いや、待て。



「……おいまさか、俺を巻き込んだのって」

「ここまで来たら、王道をとことんつっ走ろうじゃないか! なあ、朔夜!」

「ふざっけるなあああ!」


 どうやら俺は、こいつのどこかねじをすっ飛ばした理論によって、テンプレな巻き込まれを体験してしまったらしい。いい加減にしろと。



 ……まあ、これで見捨てられるなら俺はこいつの幼なじみをやってない。こいつのような、典型的な「たくさんのまりょくとまほうのさいのう」とはいかないが、ちょっと変わった能力も手に入れた。というわけで、仕方なく俺は——



 ——テンプレに従って秀吾を1人城に残し、さくっと逃亡したのだった。



 勿論備えはばっちりだ。最初は秀吾と協力して戦う振りをして、武器、防具、それらの扱い方の伝授までしっかり「王道」を突き進む一方で、城中の噂や情報をかき集めて、王族の金庫に侵入、旅の諸費を頂戴した。1度秀吾と共に城下に降りた時、超美貌な勇者様に人が群がっている隙にこっそりギルドに登録、無事身元証明書をゲット。保存食も手に入れて、夜中にこっそり逃げさせて頂いた。



 俺だって、嫌なものは嫌なのだ。何が悲しゅうて、あいつと一緒に命がけの戦いを最前線でさせられなきゃならん。あいつと違って、俺は主人公補正なんてかからねーんだから、絶対死ねる。


 秀吾には「やっぱ俺には魔王退治とか無理だし、帰り方探しながらテキトーにやっとくわ。周りには上手く言っといて」と置き手紙も残したし——無論日本語だ——、何の問題も無い。



 これまたテンプレに、言語に不自由はなかった——書くのだけは覚えたが——ので、城中の魔術に関する本も読み漁って、知識も十分。


 ……その時に、召喚魔法陣は一方通行で、帰還魔法陣は無いと判明したのが、逃げた1番の理由だ。あの王様、やっぱ俺らをそのまま利用する気満々だった。



 城を出て、国外に出る運搬任務を受けて堂々と国境を越えた俺は、適当に依頼を受けて生活費を稼ぎつつ、ギルドで情報集め、図書館で帰り方の調べ物をする日々を送った。


 調べ物は、今のところ見事に空振り。いくつか国を回ったものの、勇者召喚なんてものは古代の魔術で、そこまで詳しい文献は残っていないらしい。あいつ等、良く分からんもんで他人様を誘拐したのかよ。


 それに対して、ギルドの情報は儲けものだった。城より詳しいってどういう事だ。



 で、そのギルドから得た情報に、「スーリィア国が各国の勇者を集め、彼等の戦いを総合闘技大会の見世物の1つにするらしい」というのがあった。


 他の国に勇者がいるってのも驚いたが——あれって複数いるもんなんか——、それ以上に、この緊急事態に各国の戦力を割かせるこの国が、何とも臭う。

 秀吾絡みの事件とここしばらくの冒険者経験で培った勘が、こいつは黒だと伝えてくる。つーかどう考えてもおかしいだろ。


 ……どうせ秀吾は出るのだろう。王様か騎士団長辺りに、「こういうのに参加して、民を勇気付けるのも勇者の仕事だ」とか乗せられて。あいつもどっか、お祭り騒ぎなノリになってたしな。


 ともなると、俺は見捨てられない。秀吾なら大抵何とかするだろうが、搦め手や隠された悪意には弱い。こういう、評判の良い強国を警戒するような機能は搭載されていないのだ、あいつは。



 だから俺は、スーリィア国に行って、秀吾に見つからんよう、こそこそと動く事に決めた。



 ま、あの国は魔術も発展しているようだし、運が良ければ帰る方法も見つかるかもしれん。闘技大会はお祭り騒ぎだって言うし、観光がてら行ってみますかね。


これにて間章終わりです。


次からは椎奈達に戻ります。

粉々にしたシリアス空気は戻りますので、ご安心下さい(笑)

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