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もうひとつのプロローグ

ここから2話、2章へのちょっとした前振りとなります。


がらっと雰囲気が変わります。

読まなくても話は分かるようにしますので、軽めのノリとテンプレが苦手な方は飛ばして下さい。



……いえ、テンプレが苦手だったら、拙作を読む事はないと思いますが(笑)

 男が女にモテる要素、というのは何だろうか。



 単純なところでは、まあ顔とかスペック。顔が良くて、運動が出来て、勉強が出来る奴なんてのは、まあモテるだろう。


 文武両道でなくとも、性格の良さとか、優しさとか、そういうのもモテる要素か。


 その他諸々、女子に聞けばいくらでも出てくるのだろうが、女子の考える「イイオトコノコ」ポイントというのは、男には決して理解出来ないものだ。



 だがしかし。



 そういう要素を全て兼ねそろえた男っていうのは、実際にモテたとしても嬉しいかどうかは微妙じゃねーかという事を、現在茂みの奥の細道で息を潜めている俺は知っている。



「瀬野先輩、好きです! 付き合って下さい!」


 俺の視線の先には、人気のない木々の中、緊張した顔でそう言って、頭を下げる少女。顔立ちの整った、なかなかに可愛い少女だ。きっと今まで、告るまでもなく告られる側だっただろう。


 一方、これで高校入学後告白される回数がめでたく20人に上る野郎、瀬野秀吾は、眉を下げた。


「……ごめんね。俺は今、そういう気になれないんだ」


 そこらのモデルも裸足で逃げ出す美貌の持ち主であるところの秀吾は、声まで良い。何時か知り合いの女子(既に枯れている)が、「耳元で囁かれたら腰砕けになりそー! とかクラスの子が言ってた。生まれながらにそれって、大変だよね」などと評していた。色々言いたいが、最後の言葉には大いに同感だ。


「そ、そんな……誰か、好きな人が居るんですか?」

 ほら、顔を朱くして食い下がってる。気の毒に、脈ありに聞こえるんだろうな。


「いや、そういうわけじゃないけど、今は興味が持てないんだ。ごめんな?」


 困った顔で秀吾はそう言うも、相手に引き下がる様子は見えない。流石に経験豊かなだけあって、その空気を察した奴は、ありえねえ事に隠れている俺の方を向いた。



 誤解されそうだが、盗み聞きする趣味はない。たまたま彼女が選んだ場所が、俺達拳術部御用達の帰り専用近道が直ぐ側かつ死角になる場所だっただけで。これ以上進むと彼女から見えるから進めないし、かといって戻るには後ろに野次馬が多すぎるだけで。面白そうだとか、これで20人か凄えなとか、モテメン爆発しろとかそういう念を送っていたわけではない。ないったらない。



 けれど、好きな人の意識が逸れたら、そちらに意識が向くのは道理というもの。ぱっと顔を上げたお相手は、ばっちり俺と目が合った。


「あ……!」

 先程とは違う意味で顔を赤くした少女は、俺を最低! といわんばかりの目で睨み付け、走り去っていった。……完全なとばっちりだ。



 彼女が十分距離を置いて直ぐ、俺達一同はぞろぞろと姿を現した。


「はい、20人達成おめでとー」

「流石イケメン」

「いやいや、イケメンなだけじゃないさ。顔良し成績良し性格良し、全てのスポーツをばっちりこなす御曹司。弱きを助け悪を挫く主人公キャラを地で行けば、誰だって惚れるわな」

「爆発しろー」


 好き勝手言う拳術部一同に、秀吾はがっくりと肩を落とす。


「あのなあ……他人事だからって、楽しまないでくれよ」

「当たり前だろ、他人事だ!」

「他人の不幸は蜜の味!」

「つーか、モテといて文句言うんじゃねえ!」


 はいはい、と苦笑いする秀吾に、気を害している様子はない。うむ、やはりよく出来た人格者だ。モテるだけの事はある。



 改めて奴の顔を眺める。こいつは典型的な「王子」の顔だ。綺麗に整った顔、色素の薄い髪や瞳。おまけにクォーターらしい。どんだけだ。



「うし、今日は良いもん見られたし、帰るか」

「じゃーな瀬野、また楽しみにしているぞ」

「楽しみってなんだよ……」


 呆れ顔の秀吾と残った俺は、拳術部の同期達を何とも無しに見送った。……それにしても、フられる場面を面白がって見るっていうのは良くあるが、フる場面を面白がるとは、なかなかに愉快な連中だとつくづく思う。



「ったく、あいつら……」


 ぶつぶつと呟く秀吾を、俺はとりあえず張り倒す。


「だっ!」

「偶然見ていた俺を巻き込むなっつーの。お前が毎度毎度俺の方を振り返るせいで、俺は親友の告白場面を常に盗み見るキモい奴ってー評判が立ってんだぞ」

「っそうは言うけどなあ、朔夜! お前らだって毎度毎度ガン見してるじゃないか! 気配で何となく分かるし、気になって気になってしょうがないんだぞ!」

「知るか。文句なら、俺達愛用の近道の直ぐ側を告白場所に選びたがる彼女達に言うが良い。俺達は悪くない」

「悪いよ!? やばいと思ったら静かに密かに後戻りしてくれれば良いじゃないか!」


 ぎゃあと騒ぐ秀吾だが、これはこれで拳術部には良い印象を持っている。



 ……世の中には、眩しすぎるこいつを妬み、嫉み、引き摺り落とそうとする奴らがいる。そんな人間のどろどろした部分を、こいつは本能で感じるらしく、無意識に距離を置き気味なんだよな。


 その点、真っ直ぐというか単純馬鹿というかいわゆる脳みそ筋肉な奴らを相手にするのは、気が楽なんだろう。いや、俺は違うんだけど。



「……ええと、お疲れ様です、瀬野先輩」

「お前だけだよ、同情してくれるのは……」

「いえ、先輩方にも悪意は無いと思いますよ?」


 そんなフォローは、苦笑もどこか上品な拳術部後輩だ。こいつはくそ真面目というか堅物というか、毎度毎度告白されタイムが終わるまで待ってから帰るのだ。野次馬なんて事はしないらしい。お坊ちゃんか。


 後ろには、複数人の後輩達。こいつの影響か、後輩達は秀吾のきらきらしい場面を見る事は無い。なんて勿体ない奴らだろう。


 つか、こいつもイケメンだ。くりっとした目にふっくらした頬という、可愛い系の少年。秀吾とはまた違う需要が、先輩のオネーサマ達にある。


「そりゃー、こいつもモテるからだろ。同類相哀れむというやつだ」

「そういうわけではないのですけれど……。それでは、僕はこれで帰ります。小野先輩、お疲れ様でした」

「おう、お疲れ」


 俺の返事に、綺麗な一礼をして歩み去る後輩。いちいち立ち振る舞いが優雅なのがちっとむかつく。


「良い後輩を持ったなー、朔夜」

「……まーな」

 少しばかり、引っかかる奴でもあるが。


 内心で言葉を完結させつつ肩をすくめ、秀吾と共に帰宅の途につく。



 秀吾と俺は腐れ縁というか呪いの縁というか、家が隣の幼なじみ。おかげでずっとつるんでる。つまり、こいつのとばっちりを食う率が1番高い。


 秀吾を妬む奴らは、けれど女子には嫌われたくないから、平凡顔かつ無愛想で、女子には決してモテない俺をターゲットにしたがる。呼び出し闇討ちは日常茶飯事だ。だから拳術をずっと続けている。正当防衛、実に素晴らしい言葉だ。


 更に、この人の綺麗なところを信じたがる、人助けの好きな秀吾の為に、裏でこっそり動く事数知れず。おかげで俺は、人というものにちっと夢を失ったが、それはまあ別に気にしてない。



 他愛のない、数時間後には綺麗さっぱり忘れてしまうような会話をだべり、日常を謳歌出来たのは、けれど下校路の僅か半分を消費したところまでだった。



「でさ——ってうわ、何だこれ!?」



 秀吾が悲鳴を上げるのも道理。いきなり目の前の風景がひび割れ、そこから光が溢れているとなれば、それ以外のリアクションは普通あり得ない。


 んで、普通じゃねえ俺はというと。



「戦略的撤退!」

「なんっ……!」

 迷わず秀吾を突き飛ばして、回れ右して駆けだした。



 いや、何時かあるんじゃねーかとは思っていたんだ。イケメンでハイスペック、モテる、おまけに正義感もあるとなれば、ラノベの数冊も読んでる奴なら、1度は想像するシチュエーション。これすなわち、勇者召喚。


 闇討ちを闇討ちし返すような悪役の似合う俺にはきっぱり縁のない代物だが、秀吾のような奴の幼なじみが巻き込まれるのも、これまたテンプレ。よって俺は、こういう場面に遭遇したら、迷わず生け贄を差し出して逃げ出そうと、冗談交じり、けれどマジで心に決めていた。


 ……まさか実際に実行する機会に恵まれるとは、流石に思っちゃいなかったが。



 が、敵も然る者、俺の計画は途中で無へ帰った。



 がっしと、無駄に強い握力が俺の腕を掴む。直ぐにはふりほどけそうにない。


「させるか!」

「な、馬鹿、離——」


 手遅れだった。光は秀吾を俺ごと引きずり込み、俺の視界は真っ白に塗りつぶされた。


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