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本物の戦い

よう、やく……!

 昼食後、私達は特別闘技場に戻った。

 昼食を運ぶまでずっとこの場にいたサーシャさんが、予選の印象を簡潔に説明してくれる。


「今回の予選は、やはり皆力が入っていますね。いつも以上に乱戦でした。少し冷静さを欠く部分もありましたが、心技共に充実していましたよ」

「予選通過者は、事前評価通りか?」


 椎奈が尋ねると、サーシャさんは首肯した。


「通過するかしないかの瀬戸際にいる者の間で多少の順位変動はあったようですが、確実と言われていた人は皆通過しています」

「……そうか」

 何故か椎奈が、不満げな表情を見せた。特に変な事は言ってないと思うけど……


「ねえ、サーシャさんも参加したんでしょ?」

 ふと気になって、身を乗り出して尋ねた。サーシャさんが頷くのを見て、質問を重ねる。

「どうだったの?」

 サーシャさんが曖昧な笑みを見せた。


「予選は通過いたしました」

「へー、凄いね。でも、ここにいて大丈夫?」

 感心しながらも心配になって聞いてみると、サーシャさんはにっこりと頷いた。

「今はまだ大丈夫です。2試合前に会場に降りていれば良いので」


 新しく知った事にへー、と頷いた時、旭先輩が椎奈に声をかけるのが聞こえた。

「椎奈」


 振り返った椎奈に、静かな問いかけが投げ掛けられる。


「何人連れて行く?」

「最終的には見て判断するが、2,3人もいれば十分だろう」

 それを聞いて、サーシャさんが戸惑いの色を見せた。おそるおそる、椎奈に提言する。


「せめてその倍以上は必要かと……」

「人が多ければ、その分守るものも大規模になる。普段からチームを組み慣れているならばともかく、現況では却って足を引っ張りかねない」


 その返答に、旭先輩は微かに眉を顰め、サーシャさんははっと息を呑んだ。


「シイナ様、まさか——」


 サーシャさんが何事か口にしかけた時、会場のざわめきが歓声に変わった。サーシャさんが、仕方なさそうに口を閉じる。

 会場で、決勝トーナメント第1試合が始まった。




 試合の様子は、部活の大会とは全然違った。あの時もすっごく緊張したし、空気がぴりぴりしていたけれど、比べものにならない。


 剣を打ち合った時の金属音が、魔術による爆発音が、これがただの競技じゃないと教えてくる。


 ちらっと横を見ると、詩緒里と目が合った。その目に映る緊張の色を見れば、詩緒里も同じなのだと分かる。



 ——初めて、これが命をかけた戦いなんだって、自覚した。


 今までの訓練は、何だかんだ言っても木刀による打ち合いや、椎奈や旭先輩が見守っている中での魔術戦。それも詩緒里相手だから、怪我もさせないようなものばかりだった。

 勿論、椎奈と旭先輩の魔術戦が、人によっては即死しかねないものだと分かっていたけれど、2人とも簡単に防ぐから、今ひとつ実感がなかった。


 けど、これは違う。一瞬でも気を抜けば、大怪我をする戦い。現代の日本人が、忘れてしまったものだ。



 そっと、椎奈達を伺う。椎奈も旭先輩も、その戦いをただ観察していた。時折表情は動くけれど、それはあくまで、戦う人たちの技術を評価しているだけ。思わず、笑いそうになった。



 ——覚悟が出来ている、なんて。

 ——所詮、何も分かっていなかっただけなんだ。



「右方、サーシャ=レイア=グスノフ。左方、セヴェリオ=ピルロ。両者、前へ」



 不意にサーシャさんの声が聞こえて、私は俯きかけていた顔を上げた。


 いつの間にか青い魔術師の服——旭先輩の服より動きやすそう——に着替えたサーシャさんが、背筋を真っ直ぐ伸ばして立っていた。腰には太めのベルトを巻いている。ベルトには、オレンジ色の石が埋め込まれた短剣と——


「え……銃?」

 やっぱりオレンジ色の石を埋め込んだ、真っ黒な銃が差し込まれていた。


「ああ、武器選びの時には無かったな。この国にも、ああいう道具はあるらしい」


 私の呟きを聞きつけた椎奈がそういうのを聞いて、素直に驚いた。この世界、中世っぽいから、ああいうのって無いものとばかり思ってた。

 面白いなあと眺めていると、椎奈に問いかけが投げ掛けられる。


「椎奈、あれの威力や性能はどうなっている?」


 旭先輩の声は、一瞬椎奈の返答が遅れるくらい真剣だった。


「……単に魔力を弾として発射するだけだ。速度は、こちらにある拳銃と同程度だろうな。威力や距離は込める魔力で調節できるし、連射も出来る。柔軟性では、こちらの方が上だろうな。ただ、直線的な攻撃だし、普通の結界で防げるから、要所での牽制にしか使えない。サーシャが短剣を持ち、私達が武器を選んだ時には無かったのも、その為だろう」


 椎奈の説明が終わったと同時に、サーシャさんの試合が始まった。

「——始め!」




 サーシャさんが優秀な魔術師だっていうのは、今までに聞いていた話で分かっていたけれど、こんなに強いとは思わなかった。


『炎よ!』

 詠唱破棄された呪文と共に、強力な炎が檻を作る。


「くっ」

 セヴェリオさんが手に持つ大きな剣を思いっきり振り下ろした。突風と共に、炎が消える。そのままサーシャさんの懐に飛び込もうとしたけれど、サーシャさんの撃つ魔力の弾がそれを妨害する。


『紫電!』

 濃紫色の雷がセヴェリオさんの腕を襲った。痺れによって、セヴェリオさんが剣を取り落とす。


 ほぼ同時にサーシャさんが銃で雷を込めた魔力の弾でセヴェリオさんを気絶させ、試合は終わった。



「……剣は使わなかったな。あくまで魔術師、という事か」

 椎奈の冷静な声がサーシャさんを評する。旭先輩の声がそれに答えた。


「魔術の構築時間を、銃で補っていた。短剣は完全に間合いを詰められた時のためだけに持っているようだ」

「ああ。普段は、近距離を兵士に任せているのだろう。……そう考えると、私達の監視に彼女は不向きだが」


 驚いた事に、椎奈の疑問には詩緒里が答えた。

「サーシャさん、尋問とか隠密とか、そういう魔術得意みたいだよ。あくまで、監視の為って事かな」

「え? 詩緒里、どうしてそれを?」


 面食らって訊くと、詩緒里はちょっとばつの悪そうな顔で答えた。

「えーっと……1ヶ月前くらいに、その、風を読む練習をしてて……」


 それを訊いた椎奈が、固い声を出した。

「訓練の時以外にやるなと言っただろう」

「ご、ごめん。何か掴めそうだったから、つい……」


 椎奈は溜息をついて、それ以上は責めなかった。


「それで、サーシャが報告しているところでも聴いたのか」

「うん」

「へえ……」


 椎奈は怒るけど、私は密かに感心した。詩緒里は、1ヶ月前に遠くの声が聞こえるようになっていたんだ。

 負けられない、と意気込みながら、続く試合に目を向けた。


多分次で、闘技大会終われる……かな?


で、後数話で椎奈が旅立ちます。

ちゃんと旭との2人っきりのシーンも入れますよ。

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