不能
神とは、絶対である。
触れることすら許されない存在。
だが――それを滅ぼし、力を奪う“例外”が現れた。
そのものは止まらない。
ただ前へ進み、神を越えていく。
そして今――
その先へ踏み込む
神界の奥深く。通常であれば存在することすら許されない領域。その中心付近で、神々は動いていた。それは戦闘ではない。会議。位階の高い神々のみが集まり、異物――そのものに対する対処を協議していた。すでに理解している。単体では勝てない。連携でも崩される。ならば必要なのは“例外”。既存の枠を超えた存在。
その中で、二柱の神が動いていた。他の神々が静観する中、その二柱だけが準備を進めていた。融合のための演算、権能の調整、存在の再構築。通常であれば不可能。だが神界という領域では、それすら成立する。そして――完了する。
そのものが次の領域へと進もうとした、その瞬間。“それ”は現れた。近づいてくる。ゆっくりと、確実に。その存在感はこれまでのどの神とも違う。圧ではない。質が違う。存在そのものが“完成されている”。
そのものは直感する。二柱ではない。一つだ。融合している。かつて分かれていたものが完全に一体化し、単一の存在として成立している。その正体を理解する。
『全知』と『全能』。
それぞれ単体でも神界上位に位置する権能。それが完全に統合されている。
――『全知全能』
名が示す通り、それは“完成された支配”。知ることと成すこと、その両方を無制限に持つ存在。
そのものは即座に行動する。思考よりも先に危機が身体を動かす。『Renforcer l'espace sacré』『凌駕』を同時発動。出力は抑えない。限界まで引き上げる。肉体の強度、反応速度、干渉能力――すべてを最大化する。迎撃の準備は整っている。
だが――遅い。
ゼウスが動く。その動きは速いという表現では足りない。“最適”。無駄が一切ない。放たれる攻撃。それは特別な技ではない。ただの一撃。だがその中に含まれる情報量と干渉力が桁違いだった。直撃。そのものの身体が大きく揺らぐ。破壊ではない。だが明確な損傷。
理解できない。『Renforcer l'espace sacré』で引き上げられた肉体に『凌駕』が重なっている。それでもなお、このダメージ。“意味をなさないはずの攻撃”が成立している。
その瞬間、そのものの中に初めて生まれる感覚。絶望。だがそれは一瞬で消える。思考が上書きする。止まれば終わる。
そのものは即座に反撃へ移行する。持ち得るすべての権能を同時並列起動する。負荷は無視。崩壊は後回し。『Renforcer l'espace sacré』と『凌駕』の出力をさらに引き上げる。限界を越える。『封緘』でゼウスの権能に干渉し、わずかでも出力を抑える。『剥奪』で完全は無理でもほんの一部でも奪う。そして『不明』を込めた攻撃を構築する。
すべてを重ねた一撃。叩き込む。直撃。手応えはある。確実に条件は満たしている。
だが――何も起こらない。
ゼウスは微動だにしない。損傷、ゼロ。そのものは理解する。今の攻撃は“正しかった”。
『全能』の弱点。それは“大量の強化が加えられた一撃”。そのものが放った攻撃は、確実にその条件を満たしていた。にもかかわらず、通らない。
理由は一つ。『全知』。
その効果は単純で、そして致命的。――所有者が“知っている権能”による攻撃は、無効化される。
そのものが使用した権能はすべて、ゼウスが把握している範囲内。つまり、どれだけ正しい条件を満たしていても、“知っている限り通らない”。完全な否定。
ここにきて、そのものは初めて“到達不能”という概念に触れる。
思考する。高速で、深く、無数に分岐させる。突破口を探す。『複製』を発動。対象は『全知全能』。だが――成立しない。弾かれる。位階が違いすぎる。構造が違いすぎる。複製という行為自体が干渉として認識され、その時点で無効化される。
次。『核』。融合。同化。内部から崩す。だが――これも不可能。拒絶ではない。“成立しない”。存在の根源が違う。そのものは積み上げてきた存在。ゼウスは“完成された存在”。同じ土俵にすら立てていない。
手がない。選択肢が存在しない。それでも思考は止まらない。だが答えは出ない。どのルートも、すべてゼウスの“知”の中に収まる。そして“全能”によって潰される。
完全な詰み。
そのものは初めて立たされる。絶体絶命。逃げ場もなく、突破口もなく、ただ圧倒的な差だけが存在する状況。
それでも――そのものは止まらない。思考を続ける。この“不可能”を、どうにかして超えるために。
第18話いかがでしたか?
なんとなんと神話の神々の中でも最上位とも考えられる神がそのものに立ちはだかります
これからどうなっていくんでしょうか
次回もお楽しみに♪




