第7話
翌日レミーナとスミスはまず自分たちの能力を披露する。レミーナは狩人だがその弓の威力と飛距離はカイルとラッセルの想像以上だった。10メートル以上離れている家の壁をぶち抜くほどの威力だ。矢は鏃が鉄製で重たく、バランスが難しいはずだがレミーナに言わせると重いとは感じない。今まで弓を射ったことはないがすっと構えて射ることができるのだという。
「こいつは想像以上だ。ここまで遠隔攻撃力が高いと討伐も楽だな」
「鉄の矢が重いと感じないのも能力なんだろうな」
ラッセルとカイルが言うとその通りだという。スミスは盾を持っているがその盾は啓示を受けた後自分の横に現れたそうだ。
「女神様から授かったこの盾。少々魔獣がぶつかってきてもびくともしないんだよ」
「遠隔攻撃と硬い盾、それならこの街の周辺の魔獣の討伐も難しくはないな」
「ただ多くリンクするとやばいので基本は1体で徘徊している魔獣を見つけて倒していた。2体までなら問題ないんだけどそれ以上になると厳しい」
話を聞いている限り無茶をしていない様だ。無茶をして生き残ることは難しいだろう。2人の披露が終わるとカイルとラッセルが会得した能力を披露した。
最初いきなりジャンプしたラッセルを見て驚き、次にその片手剣の切れ味、威力に再び驚く姉弟。その次にカイルが魔法を披露すると驚愕の表情になった。魔法自体を見るのが初めてで、しかもその射程距離と威力に驚いている。
「ラッセルの身体能力もすごいし、カイルの魔法もとんでもない威力ね」
感嘆した声を出しているレミーナ。隣のスミスも驚愕の表情だ。自分たちが得た能力から想像していた以上の能力の持ち主だ。
「そっちも大したものだよ、つまりだ、これくらいの威力がないとボスは倒せないってことだ」
ラッセルが言うと頷く姉弟。彼らもスタンピードを引き起こした黒幕、ボスがどこかにいると感じている。
能力を披露しあうと4人でロベルソンの街の中の武器や防具、アイテムショップを探しては使えそうなものを魔法袋に収納していく。それまではスミス一人では動かせなかった瓦礫もラッセルと二人で持ち上げてその下まで探していく。探しているとスミスが今使っている片手剣よりも良い片手剣を見つけたのでそちらを使うことにする。
「鑑定スキルがないので重複しているかもしれないけどとりあえず持っておこう」
「そうだな。海の近くで待っている最後の一人のジョブがわからないからな。持てるだけ持つのが良いだろう」
結局丸1日かけて市内のあちこちを回って新しいアイテムを手に入れた4人。食料はないが街の近くの山から湧き出ている水を水筒に入れてから魔法袋に収納した。水ならしばらくは持つ。移動している時に喉の渇きが潤せるだけでも心理的に楽になる。
レミーナとスミスによるとロベルソンの水は美味しい事で有名で、スタンピードの前はこの水を求めて多くの商人が街にやってきていたそうだ。
「確かにここの水は旨い」
「山の湧水だからだろうな。持てるだけ持っていこう」
この街で見つけた水筒に水を入れては魔法袋に収納する。
メンバーが2人増えて4人になった。女神の啓示によると後1人、5人のメンバーでやらせるつもりだ。自分たちは2年前のスタンピードを発生させた黒幕の退治だと考えているがそうでないかもしれない。
いずれにしても5人揃った時点でまた啓示があるだろう。
4人はロベルソンの街を出ると来た道を戻って南のグレイリングの街を目指して街道を降りていく。途中で出会う魔獣はカイルが魔法で倒していき、たまにレミーナが矢を射って倒す。
「矢は消耗品だ。魔法ならただみたいなものだからな」
「そうそう。これからレミーナに頑張ってもらう時がある。今はカイルに任せて楽をしとけばいいさ」
「お前さんもだろう?」
カイルが言うともちろんと笑って答えるラッセル。実際ラッセルやスミスはほとんど戦闘に参加していない。魔法で倒せるのならそれで倒すのが一番だ。
行きと同じ街道を戻っていった彼ら。5日目にグレイリングの街の城壁が見えてきた。街に入るとまずは教会に出向いて祈りを捧げる。
「ロベルソンで啓示を受けていたからか、何も入ってこないな」
「方針が決まっているからだろうな」
カイルとラッセルはこの街で店を探索していたのでこの街で1泊して西を目指すことにする。
教会の前の広場で焚き火をしながら倒した魔獣の肉を焼いて食べている4人。
「明日この街に矢があるかどうか探してみたいの」
「いいんじゃないか。矢はいくらあっても困らないしな」
レミーナの話にラッセルが即答した。カイルもそれでいいと言う。この街での武器屋の場所を覚えている2人。3軒あるから明日片っ端から見ていこうとなった。矢は消耗品だ。持てるだけ持った方が良い。
「それで、後1人はやっぱり僧侶、回復魔法が使える人かな」
焚き火に木片を投げ入れたカイルが言うと3人がそうじゃないかと言う。
「回復系の魔法の持ち主がいない。回復ができる人だとしたら5人でも格好がつくな」
盾役、狩人、剣の達人、魔法使い、そして回復ができる人。バランスの良いメンバーになりそうだ。ただ5人で黒幕を倒せるのか?以前カイルがラッセルと話をした様に単純に足し算をするのではなくそれにチームワークがプラスされないと厳しいんじゃないかと言う話をレミーナと弟のスミスにする。
「言っていることは分かる。それぞれがバラバラに動いちゃ駄目だって事だよな?」
「その通りだ。全員が共通の認識を持って戦闘をしないといけない。なので5人目が揃ったら大陸を歩きながらチームワークを高める様にしよう」
食事が終わると地面の土の上にラッセルが簡単な地図を描く。自分たちがいる大陸を4つに分けて説明を始めた。以前にカイルに説明した地図だ。
「カイルがここ、俺がこの街の出身だ。そしてカイルは南下してランカウイの街から西に歩いてこの街で俺たちが出会った。そこから2人でグレイリングと呼ばれている街に来た時に山に行けという啓示を受けたんだよ。これを見ても分かるが、大陸の南東部分の街は訪ねている。これから南西方面に進んで最後の1人と合流するとそのまま海岸線を北上して北西の地区を探す。そこで啓示がなければ最後にここ、大陸の北東に移動する」
これからの方針と進む方向を話するラッセル。聞いていたレミーナとスミスはそれで構わないと同意する。
「言っておくが俺は自分がリーダーだとは思っていない。基本は皆で相談して決めた方が良いと思っている。司会、進行役をしている程度に思っていてくれ」
「でもラッセルはリーダー気質があるわよ」
レミーナが言うとよしてくれと顔の前で手を左右に振るラッセル。
「基本は皆で相談して決めよう。言いたい事があれば遠慮なく言い合うのが大事だろ?チームワークも高まるし。遠慮は無しだよ」
カイルが言った。
グレイリングの街で夜を明かした4人は翌朝教会に祈りを捧げると市内にある3軒の武器やの跡を回る。幸いに使えそうな矢が相当あり、レミーナはそれらを自分の魔法袋に収納した。
昼前に街を出た4人は海岸線に伸びている街道を西に向かって歩きはじめた。
途中で魔獣に出会うと食料にならない魔獣はカイルの魔法で倒し、食料になる魔獣はレミーナの矢で倒してから全員で解体をする。レミーナも嫌な顔せずに魔獣の解体を手伝っていた。
「弟と2人の時から解体をやってたから平気よ。解体に時間をかけると他の魔獣が来るかもしれないでしょ?」
「その通りだ。素早くやるのが大事だよな」
街道を歩いていて、街道沿いの街や村が見えると中に入って教会があれば祈りを捧げてから街の中を物色する。今のところ女神は新しい啓示を言ってこないが4人はそれが普通だと気にはしていない。
村や街、時々草原で野営をしながら西に進んでいた4人。グレイリングの街を出てから2週間程が過ぎたころ、歩いている4人の前に海岸からそう遠くない場所にある島が目に入ってきた。




