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第6話


 街の中を探し回ってかなりの量の武器、防具を手に入れた。食べ物はないが水は多めに用意した2人は夜が明けて教会に祈りを捧げる。


 女神像は何も言わなかった。


 祈りが終わると行こうかと街から北に伸びている街道を並んで歩き出す。心地よい風が吹いているが2人は常に周囲を警戒しながら歩いていた。山の中に続いている街道ということは海岸線よりも強い魔獣が生息している可能性が高い。


 北に伸びている街道は最初は平坦だったが徐々に上りになって、山の間を登っていく様になり街道は山道になった。山道を歩いていると左右の森に魔獣の気配が漂ってきた。それも強い気配だ。カイルもラッセルもいつでも戦闘できる準備をしてゆっくりと山道を歩いている。


 2人が足を止めると少しの間を置いて森の左から2体の獣人が飛びだしてきた。どちらもオークだ。ただ魔獣が飛び出してきた時にすでにラッセルがそちらに駆け出していて現れたオークの首を一閃して跳ね飛ばした。その時にはカイルが魔法をもう1体のオークの顔にぶつけて爆発させた。


「海岸沿いのよりは強かったが俺たちの敵じゃなかったな」


 片手剣の刃を布切れで拭いているラッセルが言った。


「この程度の魔獣に手こずる様じゃ黒幕は倒せないだろう」


「その通りだな。先を進もう」


 2人は歩きながらお互いの今の戦闘を思い出していた。カイルはラッセルの身体能力の高さと剣の鋭さに驚き、ラッセルはカイルの強烈な魔法を見て驚いていた。そして2人は驚くと同時にこれくらいの能力がないと倒せない程に黒幕は強大なのだと再認識する。


 山道を北に進んでいく二人。夜は交代で見張りをしながら睡眠をとり、北に歩いていくと木々の間から道がかなり上の方にまで伸びているのが目に入ったきた。相変わらず日に4、5度魔獣と遭遇するが難なく倒しながら進んでいく。


 グレイリングの街を出て5日、道は時折蛇行しながら登っている。連なっている山の間を抜けるとそこからは今度は道が下になっていた。立ち止まった二人の眼下にそこに崩れた城壁の跡に囲まれている市街地が見えた。街の跡があるその一帯は盆地になっている。下り坂はその城壁まで続いていた。陽光は二人の真上から注いでおり足元には小さな影ができていた。


「あの街か」


「そうだろう。この道もあの街までしかない」


 二人はしばらく上から盆地の街を見ていた。ラッセルの行こうかという言葉で二人は山道を下りていく。下り坂を歩いている2人の目が鋭くなった。土の道の上に人が歩いた足跡が残っていた。


「この足跡は最近のものだな」


 道路に屈んで足跡を見ているカイルが言った。


「ああ。しかも1人じゃないぞ。足跡を見る限り2人いるな」


 そんな話をしながら坂を下ったカイルとラッセルは崩れた城壁から街の中に入った。この街にも教会があり、その建物は崩れていない。2人は教会を目指して廃墟の市内を歩き、教会に着くと中にある女神像に祈りを捧げた。


「啓示はなかったな」


「俺もだ。この街じゃないのか?」


 カイルが言うとラッセルがとりあえず2、3日は滞在してみるかと言って方針が決まった。


 その日の夜、教会の前の広場で焚き火をして倒した魔獣の肉を焼いて食べていた2人が同時に顔を上げた。


「ご対面だな」


「ああ。予想通り2人だ」


 ラッセルとカイルがそう話をして顔を上げて見ている方向の崩れた建物の影から1組の男女が姿を現した。男性は金髪、身長はラッセル位か、がっしりとした体躯で大きな盾と片手剣を持っている。ナイトだ。一方女性は狩人だ。こちらも金髪だが身長は自分たち2人よりも低そうだ。左手に弓を持ち、背中には矢筒を背負っていた。男性は皮でできた防具を身につけており、女性は軽装な防具を身につけている。


「盾ジョブのナイトと狩人か」


「女神も分かってるな」


 男女が近づいてくるとカイルとラッセルが焚き火の前で立ち上がった。近くで見ると男女の2人は顔つきが似ている。カイルは兄妹かもしれないと思いながら2人を見ていた。


「やぁ。やっと会えたな」


 ラッセルがそう言った。


「貴方達が女神様が言っていた仲間ね」


 2人組の内の狩人の女性が言った。


「女神は何と言ってたんだい?」


「南から私達を照らす光がやってくるでしょう」


「なるほど。おそらくそれが俺たちの事だろう。俺はラッセル、こっちはカイル。俺たちも女神の啓示に導かれているんだよ」


 ラッセルの言葉を聞いて2人から緊張が解けた。自己紹介をすると2人は兄弟で狩人の女性がレミーナ、1つ年下の弟がナイトのスミス。21歳と20歳だという。カイルの予想通り姉弟だった。2人はこの町、ロベルソン出身でこの街の貴族の子供達だそうだ。


「スタンピードが発生した時、両親は私たち兄弟を館の地下室に隠れさせたの。中には1週間分の食料があったわ。父親は無事になったら声をかける。もし声がかかって来なかったらこの部屋で食料がなくなるまで絶対に外に出るなと言ったの」


 そこから先は話さなくても予想がつく。2人は8日後に地下室から地上に出ると町は完全に破壊し尽くされていて、どこにも人影が見えなかった。


「最初はその光景が信じられなかった。姉貴と俺で街の中を歩き回ったが人っこ一人いない。その上建物のほとんどが破壊されていた。教会だけが無事だったんで二人で教会に言って祈りを捧げたらさっき姉貴が言った言葉、あんた達の言葉でいう啓示が聞こえたんだよ。その意味を考えてきっと仲間がここにやってくる。そう信じて今まで生きてきたんだ。俺たちの能力もその時に授かった」


 2人は本当に仲間が来るのか、このままずっと誰も来ないんじゃないか。そんなことを考えながら毎日街の外で魔獣を倒していたらしい。話し終えた2人は本当に来てくれたと涙を流している。


「俺たちも似た様な境遇だ。後で話をするとして、とりあえず4人揃ったんだ。教会で祈りを捧げないか?」


 カイルの言葉にそうしようと4人で教会に入ると女神像の前で跪いて祈りを捧げる。すると頭の中に言葉が流れこんできた。


『海の近くに最後の光が輝いています』


 祈りを終えると全員が顔を見合わせた。


「聞こえたか?」


 カイルが3人を見て言った。


「ああ、はっきりと聞こえた」


「俺も」「私も」


「次の目的地が決まったな。最後の一人は海の近くにいるぞ」


 ラッセルが言うと頷く3人。


「今日はもう遅い、明日お互いが得た能力の確認をしてからこの町で調達できそうな物を探そう。それから出発しようか」


 レミーナとスミスはこの町の比較的被害の軽かった家を住居にしている。彼らは一旦その仮の自宅に戻って旅立ちに必要なものを魔法袋に詰めてきた。魔法袋はこの街のアイテムショップで見つけたそうだ。


 教会の前の焚き火を囲みながらの夕食になった。レミーナとスミスも食料がなくなってからは魔獣の肉を焼いて食べていたので抵抗は無いと言う。


 カイルとラッセルがそれぞれスタンピードの時の話とそれから2人が出会って西に旅をしている途中の街の教会で山の上にも光が差しているという啓示を聞いてここにやってきたんだと言った。


「東から魔獣を倒しながらこの街まで歩いてきたのね」


 話を聞いたレミーナが言った。


「女神の啓示、それだけが頼りだったよ。もちろん、ほとんどの町の教会の女神像は祈りを捧げても何も話してくれない。でも俺もカイルも実際に能力を授かっている。能力がなけりゃ信じなかっただろうけど、俺たちは神が与えてくれた能力を使って黒幕を倒すんだという信念がある。移動していても辛いと思ったことはない」


「移動中、スタンピードらしき跡はあったのかい?」


 弟のスミスが聞いた。


「もちろんだ。訪れたすべての街、村がほぼ完全に破壊されている。ただどこの街でも教会と女神像は無事だったんだよ。教会の中には建物の壁やガラスが崩れているのもあった。ただそれでも女神像は一体たりとも倒れていないんだ」


 カイルが言った。その言葉の意味していることを理解するレミーナとスミス。


「女神様は私たちに期待されているのね」


 レミーナが言うとカイルとラッセルが頷いた。


「簡単な事じゃないだろうけどな」



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