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第5話

 お互いが1年間の報告をしあっている間にすっかり夜が更けた。今日はこのまま休んで明日の朝女神像の前で祈りを捧げる事にする。


 教会の中で夜を過ごし、翌朝2人が女神像に祈りを捧げると久しぶりに啓示が聞こえてきた。


『高い場所にも光が差しています』


 2人とも同じ啓示を聞いた。


「高い場所?」


 祈りを終えたラッセルが言った。


「山の中にある街とかか?」


 カイルがそう言うとそれはあり得るぞというラッセル。教会から出た2人は前の広場に移動した。ラッセルが近くにあった木の切れ端の棒を手に持つと広場の土の地面に絵を描き始めた。それはこの大陸の形をしていた。


「これが俺達がいる大陸だ。正確には覚えていないがこんな形をしていたのを見た記憶がある」


 次に彼は地面に転がっている小石をいくつか掴むとそれを地図の上に置いていく。


「ここがカイルが言っていた南端の村だ。恐らくランカウイの港町はこの辺りだろう。そして俺の街、ログナンはこの辺り。それで今俺達がいるのが恐らくこの辺りだ。この街の名前はグランデというらしい」


 地面に書いた大陸の地図の上に次々と小石を置いていくラッセル。カイルは自分が生まれたアベイロの街はこの辺りだとランカウイの北の海岸線沿いの近くに小石を1つ置いた。


 大陸の地図の海岸線に沿って北東近くから南東の端を曲がって西に歩いてきたのがカイルのルート、そしてラッセルは大陸の南東部の山の中から山道を真っすぐ南下してきてこのグランデの街に降りてきた様だ。ここグランデの街は大陸の南の東西を結んだ東から4分の1か3分の1くらいの距離の場所だろうと言うラッセル。


 次にラッセルは大陸の地図に縦線と横線を入れて、大陸を北東、南東、北西、南西の4つの地区に分けた。


「こうして見ると大陸の南東方面の主要な街道は結果的に2人が歩いてきたことで一応探索が終わっていると言えるだろう。だからこれからはこのグランデから西に向かって歩きながら途中で北に伸びている街道があればそれを北上して街を探すのはどうだ?」


「南西地区を歩くってことだな」


「そう言うことになるな」


 それでいいんじゃないかと同意するカイル。今後の方針が決まった。高い場所を指す光という言葉が差すものは、山の中にある街だというのは正しい気がする。その場所が南東地区か南西地区かはまだわからないが、街道があれば北上すれば良いだろう。


「そこに行けば仲間がいるということだろうな」


「ああ、啓示の意味はそう言うことだろう。メンバーを集めてから突撃しろってことだな」


 ラッセルはそう言ってから、どこに突撃するかはまだ分からないんだけどなと付け加えた。おそらくその時点で女神の啓示があるのだろうと2人は思ってる


 これからは2人で歩き回ってメンバーを探しながらの旅になるという話をした後お互い神から授かった能力を披露しあうことにする。


「カイルが授かったという魔法を見せてくれるか?」


 方針が決まったところでラッセルが言った。カイルは立ち上がると崩れている廃屋に向かって杖を突き出した。火の玉が飛び出して家屋に命中すると大きな爆発音とともに家屋が粉々に砕け散った。


「想像以上の魔法の威力だな。じゃあ次は俺が披露するよ」


 言うなり5メートル以上ジャンプして家の屋根に飛び乗るラッセル。恐ろしい身体能力だ。その後片手剣を振れば家屋を支えていた柱が音も無く真っ二つになった。


「そっちも凄いな」


「体力、そして剣術が身についていた。カイルの魔法にしても俺のこの剣術や体力にしてもだ、それだけ親玉が強いということだろう。だからの能力だと思う」


 その言葉に頷くカイル。一筋縄ではいかない強敵なのだろう。

 次の目標が決まるとグランデで長居をする必要がない。ラッセルも途中の街で魔法袋を手に入れていたので食堂から使えそうな調味料を手に入れると、2人とも身軽な恰好で街を出ると街道を西に向かって歩き始めた。



「あと何人集まるんだろうな」


 広い街道を横に並んで歩いてる2人。隣を歩いているラッセルが言った。


「どうだろう。集まったからすぐに倒せるというのじゃない気もするんだよな」


 どういう事だと聞いて来るラッセルにカイルは自分が最近考えていることを言う。


「何というか個人の能力だけでは倒せなくて、チームワークというか例えば3人なら1+1+1=3ではなくてその答えが4とか5になって初めてまともな勝負になるんじゃないかなと。集まる事でプラスアルファが出ることってあるだろう?」


 うまく言えないなと言っているカイルだがラッセルは彼が言いたい事を理解する。


「メンバー同士の信頼関係が強くなるとパーティとしての力も上がるってことだな」


「そうそう。バラバラに動いていたらダメなんじゃないかな。チームになったら相乗効果で強くなってそれで初めて希望が見えてくるとか」


 カイルの言葉になるほどと言って納得した表情になるラッセル。


「メンバーが揃った時点で皆に話をして理解してもらおうぜ。少なくとも俺はカイルの意見に賛成だよ」


 街道を歩き、途中で村や街があればそこに入って教会で祈りを捧げる。啓示はないが2人は焦っていなかった。啓示は滅多にない事そして今の所自分達は間違っていないと知っていたからだ。


 スタンピードの前、この大陸に多くの人が住んでいる時には街道を商人や旅行者が馬車やあるいは徒歩で移動していた。多くの人が行き交うので街道沿いには宿屋を持っている村や小さな街がある。それらの街は大抵、朝街を出て夕刻に着く距離にあった。朝街を出発すると夕刻に次の街、村に着く。そこの宿に泊まって疲れを取ってまた翌日に移動するのが一般的だった。


 今は誰も歩いていない海岸沿いに伸びている街道を西に向かって歩いて20日後、大きな街が見えてきた。2人が出会ったグランデの街よりもずっと大きな街だ。倒れた看板等を見てこの街の名前がグレイリングという名前を知る2人。グレイリング洋服店やグレイリング劇場といった看板がそこらじゅうに残っていた。


 街に入った彼らは例によって教会に入ると女神像の前で祈りを捧げるが、2人とも啓示を得る事は出来なかった。


 とりあえず街の中をウロウロするかと手分けして市内を歩いているとラッセルの声が聞こえてきた。カイルが声がした方向に向かうとそこには崩れた門の跡ががあり、そこから広い街道が大陸の中央部、北に向かって伸びているのが見えた。


「決まりだな」


「ああ、明日からあの街道を山に向かって歩こう」


「誰かは知らないが1年間以上待ってるんだ。待ちくたびれているだろう」


「もしこの街道の先の街にいなくても北に上がる街道は他にもまだあるはずだ。どこかの街には必ず俺たちを待ってる仲間がいる」


「その通りだ」


 明日からと言ったがカイルがその前にこの街で物品を探さないかと言った。大きな街には武器屋や防具屋、アイテム屋などがあるひょっとしたら今後使えるアイテムが手に入るからも知れない。


 2人で市内を歩いて店屋っぽいのを見ると瓦礫を取り除いていく。ラッセルの身体能力の高さが役に立って重たかったりする残骸を次々とどけていった。


「これは戦闘用のアイテムじゃないな、これを見てみろ」


 瓦礫の下から指輪が入っていたショーケースを見つけて期待していたがカイルがショーケースのすぐ近くにあった店の看板を見つけた。宝飾店という看板だった。


「ここは女性用の腕輪や指輪を取り扱っているアクセサリーショップだ」


「なるほど宝飾店だったか」


 落ち込んだ声を出しているラッセル。


「気にすんなよ。ラッセルがいたから瓦礫の撤去が楽なんだ。俺1人じゃ無理だ。いずれにしても片っ端から探していこうぜ」


 再び店の陳列物を探し求めて街の中をウロウロする2人。しばらく探しているとカイルの声が聞こえてきた。


「これは当たりかも知れないぞ」


 その声を聞いて通りを隔てて反対側の店を見ていたラッセルがやってきた。


「ああ、当たりだろう。ちょっと待て、俺が瓦礫を取り除くよ。その後はとりあえずそれぽいアイテムは全部持っていこう」

 

 瓦礫をどけ、店にあった腕輪や指輪をそのまま魔法袋の中に収納していく。その後は防具店を見つけそこで後衛のローブや前衛の装備を手に入れ武器屋では片手剣に始まり短剣や弓、矢、杖と次々と収納していった。魔法使いが少ないせいかローブや杖の数は少ないがそこにあるのを全て袋に入れていくカイル。カイルが後衛用の装備、武器を、ラッセルが前衛用の装備、武器を次々と魔法袋に収納していった。


「ローブや杖なんて他の街じゃ滅多に見なかった」


 収納に収めながらカイルが言った。


「片っ端から持っていくぞ。選別はいつでもできるしな。同じ性能のがあっても構わないだろう。今は数を集めよう」


「後から増えるメンバーのジョブが分からない。ラッセルが言う通り持てるだけ持っていた方が良いだろう」


 ソロで動いている時はそこまで頭が周らなかったよと後悔する2人。その反動もあり自分達に関係があると思われる店を数軒見つけると相当な量の武器、防具、アイテムを収納した。魔法袋もあるだけ手に入れた。魔法袋はここで4つ手にいれることができた。自分たちの分を入れると6つになった。鑑定能力があれば良いのだが2人にはそれはない。なので片っ端から手に入れてることにする。



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