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スタンピードの後  作者: 花屋敷


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第25話

 翌日、5人は再び街道に沿って山を目指して進んでいく。比較的安全だった小屋でしっかりと休めたこともあり、5人の足取りは軽い。山に続いている道は比較的緩やかな登り道が続いていた。天気も良く、足取りも軽い彼らだが、歩いていると道の左右からは魔獣や魔人が襲ってくる。小屋から離れて山に向かうと魔獣や獣人は単体ではなく常に2体、3体と複数体で現れ出した。


「まだ問題ないぞ」

 

 たった今ジャンプをして背後から3体目の魔獣の首を刎ねて着地したラッセル。


「俺もだ。この程度で手こずっていたら先に進めない」


「スミスの言う通りだ。この調子で行こう」


 さらに進んでいくと午後になって街道の先に廃墟が見えてきた。登ってきた道は廃墟の門まで続いている。そしてその中で動いている魔獣の姿が目に入った。5人は一旦街道から離れて木の陰に移動した。


「日が暮れるまでに倒そう」


「正面突破するか」


 ラッセルとカイルが話をしている。カイルが正面突破と言った言葉に全員が頷いていた。


「スミスとラッセルが先に、レミーナは後ろから矢でフォローを。俺は魔法だ。ローズは回復魔法。いつもの手順でやろう」


 作戦と呼べるほどでもない作戦が決まると全員がローズの強化魔法を受けてから再び街道に出て廃墟を目指して歩き出した。廃墟まで20メートル程の距離に近づいたところで彼らに気がついた魔獣達が崩れた門から外に出てきた。5体いる。


 スミスとラッセルが走り出した。スミスがヘイトを稼いだ魔獣に向かってレミーナの矢が飛び、魔法が命中する。すぐに次の魔獣をターゲットにするスミス。その間ラッセルは一人で高い身体能力を駆使して1体を倒し、そのまま次の魔獣に剣を振る。何も言わなくても各自が自分の仕事をしていた。


 戦闘をしているとさらに3体が廃墟から出てきたが、その時にはすでに最初の5体の中で残っているのは1体だけだった。新手の3体に気がついたラッセルがそちらに飛びかかった。すぐにレミーナの矢が飛んでいく。カイルはスミスが相手をしていた1体を魔法で倒すとターゲットを変更する。その時には1体は倒れていて残り2体になっていた。剣、矢、魔法で2体を倒すことができた。


 5人は魔獣の気配がなくなった廃墟の中に入った。以前は村だった様でそれほど大きくない。魔獣が残っていないか全員で村の中を歩いて調べていく。途中大きな倉庫の跡があったので外から見ると、原木が積まれていた。山で切った木を一時的に保管している倉庫だった様だ。その横を通り抜けると村の中心部になり、教会がある。外壁は大きく削られているが教会の中にある女神像は無傷だった。廃墟の中の安全を確認した彼らは全員がその前に跪いて祈りを捧げた。


『黒い光は2つの山を登ります』


 祈りを終えたメンバーが立ち上がると全員で顔を見合わせた。


「2つ山の向こうだ。でもどの山の向こうだ?」


「下から続いていた道以外の三方向全てに山があるぞ」


 ラッセルとスミスが言った。


「俺はその解釈じゃない」


 カイルの声に全員が彼を見る。


「黒い光は2つの山を登ります。そうだったよな?」


 カイルが神の啓示を声に出して言うと、全員が黙って頷く。


「ラッセルとスミスは2つ山の向こうだと解釈した。でもそれだとスミスが言った様にどの山なのかが分からない。2つの山を登りますというのは2つの山の間にある大きな谷じゃないかな。そしてその場所なら俺はさっき見た」


 カイルがそう言うと彼に続いて全員が教会から出た。カイルが教会の前の広場に立つとある方向を向いた。彼が顔を向けた方向に全員が顔を向けるとその表情が納得したそれになった。


「確かにあそこだけ山と山との間が深くなっている」


 レミーナが声を出した。日は大きく傾いている。夕暮れ時だが山の稜線ははっきりと見えている。山と山との間が大きく抉れているのが見えた。


 5人はぐるっと周囲を見てみたが、他は全て山が高いところで連なっているが、あの場所だけ大きく割れている。海を背にして左前方、方角でいうと北東になる。


「あの2つの山の間を目指せば良いということか」

 

 北東に顔を向けたままラッセルが言った。


「俺はそう思う」


 目の前の先にある風景を見ている5人。カイルが言った通りあの方角に黒い光、黒幕がいるのは間違いないだろう。


「カイル先生が正解の様だ。俺も乗った」


「俺も」「私も」

 

 全員がカイルの予想を支持した。行くべき方角が見えてきた。


「明日からあそこを目指そう。おそらく村や街はもうない。野営前提になる。万が一進んだ方向に何もなければまたここに戻ればいい」


「そうだな。そして奥に進めば進むほど強い魔獣との戦闘になる。気を引き締めようぜ」

 

 スミスのあとでカイルが言うと、全員が頷いた。


「ここが最後の安息地って訳だ」


 ここから先は人が住んでいなかったエリアになる。当然街や村もない。宿泊は野営だ。いや、ひょっとしたらまともに睡眠が取れないかもしれない。スミスが言った最後の安息地、まさにその通りだ。


「今日は贅沢にいきましょう」


「おお、いいね」


 ローズが言うと全員が賛成した。


 教会の前の広場にテーブルを置くと、ローズがその上にアイテムボックスから食事を取り出しては並べていく。たちまち豪勢な食事がテーブルの上に並んだ。


「こりゃ豪勢だ」


「やっぱり美味しいよね」


 テーブルの上の料理を取りながら食べている5人の表情は明るい。カイルもラッセルも美味いと言いながら料理に手を伸ばしている。


「あの場所まで何日かかるの?」


 レミーナがカイルに顔を向けて聞いてきた。周囲は暗くなっておりさっきまで見えていた山々も今は暗闇の中だ。


「どうだろう。3日から4日、下手したら5日はかかるかもしれない。道無き道を進んで行く。当然魔獣も襲ってくるだろうしな」


「行ってみるともっと奥に谷が続いているかもしれない。そうするとさらに時間がかかる」


「そう言うことだな」


 ラッセルの言葉に答えたカイルはテーブルにある暖かい料理を手に取る。


「ここまで来たら、なるようにしかならない。何日かかっても俺は問題ないな」


「落ち着いているのね」


 ローズが言った。その視線はカイルを見ている。


「落ち着いている。そうかも知れない。不安はないな」


「どうして?」


「やるべき事をやってきたという自負があるからさ」


 カイルは皆を見た。


「俺は後ろから昨日、今日と戦闘をしながら自分の力を分析していた。同時に皆の力も見ていた。皆が思っている以上に俺たちは相当強くなっている。魔法一つにしても自分でも驚くほど強力な魔法が撃てているんだ。最初は敵がそれほど強くなっていないのかなと思っていたんだけど、それは思い違いだった。廃墟で敵を見た時、あの時から敵が今までとは数段上になっていたんだよ。ただそれ以上に俺たちが強くなっていた。だから敵が強くないと思ってしまったんだ。冷静になって自分の魔法を見てみて確信したよ。それから皆の魔法や攻撃を見た。俺と同じで格段に強くなっている。これならいける」


「龍の心臓を食べたから?」


「それもある。でもそれだけじゃない。気持ちも強くなっている」


 今や皆食事の手を止めてカイルとローズとのやりとりを聞いている。ラッセルも頷きながら聞いていたが口を開いた。


「黒幕を倒した後の世界を見る。カイルが言ったこの言葉。これが一番気持ちが入る言葉だよ」


 ラッセルが言うと皆がその通りだと言う。


「黒幕を倒すのが俺たちのゴールじゃない、黒幕に会うために魔獣を倒すんじゃない。黒幕だってただの魔獣なんだよ」


 カイルが言うと皆が大きく頷いた。そう、自分たちの旅の途中に黒幕がいるだけだ。ローズがアイテムボックスから追加の食事を取り出した。久しぶりに美味しい食事を楽しんだ5人。


 夜の見張りはくじ引きの結果カイルとラッセルになった。2人で教会の前の階段に座って周囲を警戒している。


「こうして2人で教会の前の階段に座っているとお前と初めて会った時のことを思い出したよ」


「俺もだよ。廃墟に入ってまさか人がいるとは思っていなかった」


 そう言うと2人は黙ったまま前の広場を見る。


「何の因果か女神様が俺たちに能力を与えてくださった。そして啓示に導かれるままに仲間を増やしてここまできた。よく考えたら良いメンバーが揃ったよな」


「全くだ。スミス、レミーナ、ローズ、そしてラッセル。最高の仲間たちだよ」


 カイルがそう言って拳を突き出した。その拳にラッセルが拳をぶつけてきた。


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