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第2話


 〜1年後〜



 エドモントンは机の上に置かれている全ての書類にサインをすると執務机から離れて窓から外を見た。町は緩やかな山の斜面に沿って作られ、綺麗に区画整理された街並みが領主の館から港に向かって広がっており、その先には桟橋に何艘かの漁船が泊まっているのが見えていた。


 エドモントンがさらに視線を上げると海の先に自分達が以前住んでいた大陸が見えている。


「この島に逃げて来てから1年が過ぎた。今でもあの時の判断は正しかったと信じている。ただしもうあの大陸には戻れないだろう」


 窓から外を見ながら独り呟く。


 この島には以前から魔獣が存在していない。従って街の外れに城壁はなく、その代わりに畑や果樹園が広がっているのが領主の館からも見える。


 スタンピードの発生前から漁師達が時折避難の為にこの島を使っていると知っていた領主のエドモントンは、漁師達のために当時からこの島に港を作り、桟橋を作っていた。それが幸いして多くの住民をスムーズにこの島に上陸させることが出来た。住民が島に避難し、住んでいた街が完全に破壊されたと知ると、エドモントンの指示で住民と兵士ら逃げのびた全員で島の斜面に新しい街を作しはじめる。街が今の形に出来上がったのは数ヶ月前だった。


 この街に逃げてきた住民達は最初はまた直ぐに街に戻れると思っていたが、スタンピードで街が完全に破壊され、街から魔獣が消える気配が無いと聞かされると住民のほとんどが港町に戻るよりもここで生活をしていく事を選択する。エドモントンはランカウイの街の領主だったがこの島に避難してからも市民から請われて引き続き領主として街を治めていた。


 エドモントンが窓の外を見ながら当時のことを思い出していると執務室のドアをノックする音がし、その直後に扉が開いて1人の騎士が部屋に入ってきた。


「それでは行ってまいります」


「気を付けてな。無理はするでないぞ」


「わかりました」


 領主の言葉に敬礼をし、踵を返して部屋を出、領主の館から歩いて港に向かい、停泊している船に乗り込んでいったこの男はアドリン。エドモントンが港町ランカウイの領主であった頃から彼に仕えている40代の騎士だ。今はこの島の騎士団のトップとして街というか島の治安維持を担当している責任者でもある。彼は定期的に領主の命で兵士を連れて港町ランカウイの偵察を行っていた。


 島に避難してからしばらくの間は、月に1度船に乗って海からランカウイの街をチェックしてた彼ら。最初の頃は魔獣が徘徊しているのが目に入っていたが3ヶ月が経った頃からその魔獣の数が減り、半年後には船から魔獣の姿を見なくなった。その時点でエドモントンとアドリンは話合って一度上陸して街を見てみようと決断。船2隻に50名程の兵士を乗せて半年ぶりにランカウイに上陸する。


 半年振りに訪れたランカウイの街は殆ど原型をとどめていない程に破壊し尽くされていたが魔獣の姿は見られなかった。比較的状態の良い魔道具を船に積んでは島に持ち帰ってきたアドリン。彼は島に戻るとありのままを報告した。領主との話し合いでそれからも1か月に1度大陸に上陸しては市内の探索と魔道具や生活用品の回収を続けている。島に住んでいる住民達には今のランカウイの様子を話したが街が完全に破壊されていることや、魔獣がいつやってくるか分からないということ。それに対してこの島では魔獣は生息しておらず、幸いにも水があり野菜や果実も潤沢にあって生活に困らないということから大陸に戻ることを希望する者は出ていない。最初は不自由な生活だったが軍が街から魔道具等を持ち込んだ事で生活のレベルも少しずつ上がって来ている。


 ここ数回は視察に向かう船は1隻となり兵士の数も20名と小規模になってきていた。魔獣もいない無人の廃墟となった市内を数日掛けて探索しては島に戻ってくる事が続いている。


 20名の兵士を乗せた船が桟橋を離れて大陸を目指して進みだした。船の上から大陸に顔を向けているアドリン。今回も何もない市内を数日回って戻ることになりそうだと思っている。彼が乗っている船は穏やかな海を大陸を目指して進んでいった。


 

「桟橋付近に魔獣の姿は見えません」


 ランカウイの街に近づくと、船の見張り台にいる兵士が声を出した。


「ゆっくりと船を近づけろ。周囲の警戒を怠るなよ」


 20人、40の目が船の上から旧市内を見るが異変は感じられない。


「よし、桟橋に着岸しろ」


 船がゆっくりと桟橋に着岸すると1人の兵士が船から桟橋に降りてその強度をチェックする。


「問題ありません」


 それを聞いたアドリンは船に残っている兵士達に顔を向けた。


「よし、今から15名で上陸する。残りの者は俺達が降りたら桟橋から離れた場所で待機。何かあったら空に向かって燃える矢を射る。それを見たら俺達の事は気にせずに島に戻るんだ。何もなければ夕刻には戻る。俺達の姿を見たら船を桟橋に着けてくれ」


「分かりました」


 船に残る5名の中の責任者の声を聞くと、アドリンを先頭にして15名が島に上陸した。


 市内は前回来た時とほとんど変わっていなかった。破壊されつくした街には雑草が生え始めている。元々1万人の市民、それに加えて旅行者や商人達が住んでいた街だ。1日で全てをチェックできない。市を4つの地区に分けて1つの区を1日で見て回るローテーションが出来ている。


 初日、2日目と市内を回ったが何もなかった。魔獣の姿も無い。以前と同じだ。2日目には街の城壁跡も見たがそれらも破壊されたままの状態で残っている。ただ街は徐々に風化し始めていた。


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