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スタンピードの後  作者: 花屋敷


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第11話


 それから1週間、毎日の様に森に出ては魔獣を倒していた5人は敵対心の管理については感覚で分かる様になった。


「短時間倒そうとするとどうしても攻撃が連続するな。時間はかかっても良いということを基本にしたらいいぞ」


 ラッセルが言う。


「敵対心の管理って難しいわね」


「撃ちたいのを我慢するっていうのが結構辛いわ」


 ローズとレミーナがそう言っているが、彼女達もあまり連続して魔法や矢をうつと自分にターゲットが移動するということを身をもって体験したこともあり、最初の頃よりはずっと良くなっていた。


「ただこれから先、もっと強い魔獣が現れた時にちゃんとできるかどうかだよな」


「その通り、ただそれはここでは出来ない。強い敵のいる場所に行かないと」


「カイルが言っていたチームとしてまとまれば強くなるというのはこう言うことなんだな」


「100%そうだと言い切る自信はないけど、以前よりはずっと安定してきたと思うんだ。つまり強くなっていると言うことにならないかい?」


「確かに」


 今までの街に比べると随分と長い間滞在していたが、いよいよこの島の街、アルバートンを出る時が来た。


 今できることをやったメンバーは島に戻った。いよいよ明日ローズを加えた5名でこの島を出てさらに連携を高めつつ、黒幕を探す旅に出ることになった。このアルバートンの街に来て3ヶ月が過ぎていた。


 旅立ちの前の日、島民あげて送別会をしてくれた。教会の講堂や庭に住民が持ちよった様々な料理が並んだ。領主のローズが旅立つことは島民全てが知っており、その後任に彼女の妹であるマーサが任命されたことも周知されていた。


 島民は次々とローズに挨拶をしていく。それに丁寧に答えるローズ。メンバーも島民達と一緒になって送別会を楽しんだ。送別会が終わると皆でテーブルの上に積まれている新鮮な果物や食料、水を魔法袋に収納していく。島民から寄付されたものだ。


「これはありがたいな」


「ローズの人徳だよ」


 腐りにくい食品を魔法袋に入れたことでしばらくは魔獣の肉を食べなくても過ごせそうだ。


 全ての用意が整ったのはすっかり夜が更けた頃だった。



  翌日、多くの市民の見送りを受けて城門から砂の道に出た5人とマーサ。彼らの背後には騎士達が続いている。5人はこれから西に向かって歩いていき、騎士達は新しい陸地側の敷地の見張り台に立って警備を続ける。


 陸地側に着くと5人と他の人たちが向かい合った。


「それでは、マーサ、ベンジャミン、あとはお願いしますね」


「はい。お姉さんも、皆様もお気をつけて」


「畏まりました。道中お気をつけて。ご武運をお祈りしております」


 最後にもう一度お礼を言って5人は新しくできた土の壁にある頑丈な扉から外に出ると、そのまま林の中に伸びている街道を西に向かって歩き始める。


 ローズの鑑定スキルのおかげで全員が装備を更新しており、以前よりも強くなっている上に時間をかけて連携を高める訓練をしたこともあり、街を出てすぐの魔獣は問題なく倒せる様になっていた。タゲもナイトのスミスから動かない。スミスのヘイト管理も上手くなっている。


 魔獣を倒しながら街道を西に進んで行く。途中で廃村を見つけるとそこにある教会に顔を出して全員でお祈りを捧げるが女神の啓示は聞こえてこない。


「女神像に祈りを捧げても、女神様の啓示が無いと言うのを初めて経験したけど、何も無いと不安になるわね」

 

 廃墟になっている村の教会の前で休んでいる時にローズが言った。


「最初は俺もそうだった。カイルもそうだろう。啓示は1度しか言ってくれない。数日経つと、あの啓示は本当だったのか?俺の空耳じゃないか、なんて思ったよ。でも信じて待っていたらカイルがやってきた」


 ラッセルはそう言ってカイルに顔を向ける。他の3人も同じ様に彼に顔を向けた。


「何の取り柄、能力もなかった孤児の自分が啓示を聞いてから攻撃魔法が使える様になった。俺はその魔法の能力と女神の啓示を信じてその通りに動いてきたよ」


「私とスミスは2人だったから啓示を信じて待つことができた。カイルとラッセルは本当にすごいと思うわ。いくら能力を授かったといっても揺るぎない信念があるから街から街へと移動できたのね」


 レミーナの言葉にその通りよねとローズ。


「とにかく女神の啓示に従っていたら5人揃った。啓示を見てもこれ以上のメンバーはいないだろう。どこに黒幕がいるのか分からないが、俺たちはそれを見つけて倒す使命がある」


 啓示を受けているこの5人は今カイルが言った様に自分達が授かった特殊な能力は黒幕を倒すためのものであることを理解している。

 

 スタンピードで大陸のほとんどの人間が死んでしまった。生き残ったのはほんのわずかな人たちだ。ただそのわずかな人たちはこれから人間の社会を復興するという大きな仕事がある。そのための憂いを取り除くことが、自分たちのやるべきことだ。


 廃墟の村で野営をした5人は翌朝から再び海岸線に沿って街道を西に進んでいく。相変わらず魔獣との遭遇は1日に数度しかない。まるでスタンピードなんて無かった様な穏やかな日々だ。


「魔獣と遭遇しないのはいいんだが、逆に遭遇しなさ過ぎて5人のチームワークを高める訓練をする機会がないな」


 先頭を歩いているラッセルが言った。話しながらも左右、特に森がある右側に注意を払っている。


「そのうちに向こうから休む間もなく襲ってくるかもしれないぞ」


 背後を歩いているカイルが言った。


「それはそれで嬉しくない展開だよな」


 5人は先頭がラッセル、そのすぐ後ろにナイトのスミス、そしてその後ろが狩人のレミーナ、カイルとローズは2人並んで3人の後ろを歩いていた。


 ローズの住んでいた島、アルバートンの街を出てから10日が過ぎた昼過ぎ、5人は街道沿いにある廃墟になった街に入った。村や街に入るとまず教会に出向き、そこで祈りをささげ、何も無いとなってから何か道中で使えるものがないかを探すのがルーティーンになっている。


 この街も教会の建物は周囲の建物に比べて被害が軽く、中にある女神像は無傷で立っていた。


『大きな炎も元は小さな炎です』


 祈りを捧げると脳内に女神の啓示が入ってきた。


「どう言うことだ?」


 5人全員が同じ啓示を聞いた。顔を上げるとお互いの顔を見合わせる。


「今までとは違う啓示だ」


 スミスが言ったがそれは皆が感じている。5人は女神像の前で腰を下ろした。


「大きな炎も元は小さな炎です。か」


 ラッセルが今の啓示を呟いた。


「言ってることは分かるけど、何を意味しているのかが分からないわ。カイルは分かる?」


 ローズがそう言うと全員がカイルに顔を向けた。


「ちょっと確認したいことがあるんだ。先にそれをしていいかな?」


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