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スタンピードの後  作者: 花屋敷


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第10話

 翌日からローズは妹のマーサとの引き継ぎを開始した。その間4人にはやる事がない。なのでカイルを手伝って陸側に新しい領地、土地を作ることにする。これには4人の外にもこの島の街、アルバートンの騎士であるベンジャミンとその部下達も手伝うことになった。騎士はベンジャミンを含めて20名ほどいる。


 海面が下がった時に現れた砂の道を通って陸地側に渡ったメンバー。騎士達と一緒に周囲を警戒している中、カイルとベンジャミンはどこに土の壁をつくれば良いのか相談しながら森を歩いていた。


 ベンジャミンからは魔獣から守る壁を作り、等間隔で見張り台を作って欲しいと言っている。頑丈な壁を作るのであれば土と森の木を組み合わせた方が良いだろう。あとは海岸にある石を集めて壁に埋めて固めると良い。


 おおよその場所が決まるとカイルはまず土魔法で高さ50センチ、幅20センチ程の壁を作っていく。ちょうど砂の道から陸に上がった平原に奥に100メートル、幅も100メートルほどの壁を作った。砂浜はせいぜい10メートルほどで満潮時にはそこが海になる。そこは石を積んで壁を作ることにする。砂浜の先は草原、森になっているので草原部分では野菜が育てられるだろう。森の中では木を切り倒せば果樹園にもなるし、もちろん畑にもなる。


 仮で作った壁を今度は強化していく。土の壁を厚く、高くし、他のメンバーが持ってきた木や石をその壁の中に埋めて固めていく。


「見事なものだな」


「魔法があると便利だよ」


 騎士とカイル、ラッセルらが壁を作っている時、レミーナとスミスの姉弟は森の中で野生の鹿を2頭倒してきた。


「これは助かるな」


「お肉も食べないとね」


 5時間程作業をすると全員が島に戻った。しばらくすると海面が上昇して周囲全てが海になり、完全に島になった。


「この場所ならずっと安心して暮らせる」


 建物から外を見ているラッセルが言った。


 1週間もするとカイルが中心になって作っている陸地の塀というか壁が形になってきた。木と石で補強されている土壁は高さが2メートル程あり、その壁沿いに、壁よりもさらに2メートル程高く土と石とを積み上げて見張り台を作った。大人2人が余裕で監視できる広さがある。カイルの底なしの魔力量と技量がなければとてもじゃないが短期間でできなかっただろう。もちろんカイル以外にもラッセルやスミスがそのパワーで大木を切り倒したり、大きな石を運んで壁に埋め込んで強くしている。


 ローズとマーサの引き継ぎは終わっていたが、せっかくだからと最後まで新しい敷地の開拓をした結果、工事を初めてから2週間ちょっとが過ぎた頃、立派な敷地が陸側に完成した。ここを畑や果樹園にすれば食料事情はさらに安定するだろうし、ここから森の中に出向いて野生動物を倒して肉を得ることもできる。


「想像以上に見事な壁が完成した。礼を言う」


 出来上がった敷地の中でベンジャミンがカイル以下のメンバーに言った。


「これで安心だな」


「魔獣が来ても破られないだろう」


 騎士達は早速新しい壁にある見張り台に立って警備を開始した。同時に島民が島から陸地側にやってきて畑を耕し、そこに食料の種を植えたり、果実の木を植える。


 また騎士達は日に数度、数名単位で森の中に出向いては野生動物を倒してくる様になった。これで島民の食料事情が改善される。魚と野菜が中心だった食料に新たに肉が加わった。ラッセル達が付近にいる魔獣の数が大きく減っていると言っていたこともあり、騎士達も安心して森の中を移動することで鹿肉や猪肉を手に入れることができる様になった。


 一方、ローズから妹のマーサへの引き継ぎが終わると5人は新しい装備に慣れる事と、チームワークを高める目的で森の奥まで足を伸ばして魔獣を倒す訓練をする。西に向かう前に装備に慣れ、連携を高めようというカイルの提案だ。幸か不幸か新しい敷地の周辺には魔獣が生息していない。なので5人はそこから森の中を数時間歩き、徘徊しながら魔獣を見つけては訓練をする。


 全員がスタンピードまでは魔獣を倒したこともなければ武器や魔法を使ったこともない。この街に移動中も各自が自分の得意な武器や魔法で魔獣を倒しているだけだった。ローズにいたっては実践経験が全くない。パーティ、チームと言っているが誰もその理想的な形を知らない。彼らは試行錯誤し、パターンを変えながら魔獣を倒していた。


 カイルは背後から魔法を撃って倒しながらこの倒し方だとチームとしてまとまっていないと感じていた。なので、たった今魔獣を倒したあとでカイルが反省会を提案した。


「スミスがしっかりと魔獣の攻撃を受け止めてから皆で攻撃した方が良くないか?」


「どうしてだ?全員でやった方が早く倒せるだろう?」


 カイルの言葉にラッセルが反論してきた。


「こいつは弱い。弱い敵は誰が倒しても問題ないだろう。俺の魔法でも倒せると思うんだ。でも俺たちの相手はこんな弱い敵じゃない」


「それは分かるが、カイルは何を言いたいんだ?」


 カイルとラッセルのやりとりを聞いている他の3人。


「俺は背後から今の戦闘を見ていたが、ラッセルが剣を振ると魔獣がラッセルに向いただろう?」


「ああ、そうだったな」


「もし相手が強くてラッセルをターゲットにして連続で攻撃してきたら耐えられるか?」


 カイルがそう言うとラッセルがようやく納得した表情になった。


「なるほど。スミスは盾を持っている。つまり攻撃をがっちりと受け止めることができる。魔獣が常にスミスをターゲットにする様にして、俺たちは魔獣を横から攻撃するのがいいのか」


「そう言うことだ。戦闘が始まったらローズはスミスのフォローに専念したらどうだろう? 回復魔法を使う相手が1人の方がローズだってやりやすいと思うんだが、ローズ、どうかな?」


 そう言ってローズに顔を向けた。


「カイルの言う通りかも。今誰が一番ダメージを受けているのか、そのダメージが大きいのか小さいのかが分からないのよ。かと言って回復魔法を撃ち続けるとこっちの魔力が切れるわね」


「俺が魔獣のヘイトを稼げばいいんだな」


「そうなるな。攻撃よりも敵対心を高めてくれるかな」


 5人の打ち合わせの中でそれぞれのジョブの特性を報告しあっていて、スミスのナイトは盾を持っていることもありジョブ自体の敵対心が高くなっている。それに挑発というスキルがあり、これを使うとさらに敵対心がアップする。但し、この挑発のスキルは連続では使用できず、リキャストが1分だ。


「他の4人はあまり派手に攻撃を続けるとスミスの敵対心をうわまってしまうかもしれないので注意して」


「敵対心が上回るって、魔獣、敵が自分をターゲットに変更するということ?」


 レミーナが聞いてきたのでその通りだと答えるカイル。


「私も?」


 そう言ったのはローズだ。


「おそらく魔法というカテゴリーの中では回復魔法も攻撃魔法も同じだと思うんだ。もう少し検証は必要だけどね。なのでその辺りの感覚というか魔法の匙加減を覚える必要があると思う」


「カイルが言っているやり方をやってみれば分かるな」


 ラッセルが言って森にいる次の魔獣を探すことになった。



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