第三十一話 ニワトリさんと夏の料理
とある田舎にある森山 小春の小さな店。今日の来客はニワトリで、二つ目の試練の日がやってきた。
「コケッコー。小春さん、こんにちは。タヌキくんから聞いているかと思いますが、今日は二つ目の試練の日ですな」
「こんにちは、ニワトリさん。今日はよろしくお願いします!」
「はい、こちらこそお願いしますぞ」
ニワトリがカウンター席へと座る。そして改めて試練について口を開いた。
「二つ目の試練のお題は、『夏の料理』ですな。小春さんには我が主、太陽の神様に捧げる料理を作ってもらいたいんですな」
「はい! 承りました!」
カウンター越しに、神界で採れた食材を受け取る。小春はその中身を確認すると、早速調理に取り掛かった。
使う食材は、トマト、ナス、ズッキーニ、パプリカ、タマネギの五種類。全て、同じような大きさになるよう角切りや乱切りをしていく。
「まずはオリーブオイルでにんにくの香りが出るまで加熱します」
にんにくの香りが台所に陽だまりを広げたように漂い、多めのオリーブオイルにその香りが移ったところでタマネギを加えて軽く火を通す。
次にナス、ズッキーニ、パプリカ、トマトの順で炒めたらフタをして、強弱火で蒸らす。
「ここで野菜からしっかりと水分を引き出すのが、おいしさのポイントです」
ときどきフタを開けながら全体を混ぜて、蒸らし終わったら塩を入れる。少し汁気を飛ばして、とろみがついてきたら、ここで一度味見をする。
「最後に塩で味を調えたら、夏野菜のラタトゥイユの完成です!」
「コケッコー! 待ってましたぞ!」
ラタトゥイユを器に入れて、ラップをかける。それをニワトリが大事そうに風呂敷で包み、すぐに神界へと持ち帰った。
「この待ち時間が一番落ち着かないんだよなぁ。ここが神様の台所だっていうなら、ここに神様が来て食べてくれてもいいのに」
おじいちゃんだったら、どんな夏の料理を作っただろう?
そんなことを考えながら、カウンター席に座ったり立ったりと、じっとしていられないこと数十分。勢いよく店の扉が開いて、ニワトリが飛び込んできた。
「コケッ、コケッ、コケコッコー!」
「ど、どうしたんですか、ニワトリさん!?」
「おめでとうございます、小春さん! 無事合格ですぞ!」
小春の合格にニワトリも嬉しさが爆発したらしい。いつもの紳士然とした態度はどこかへ行き、喜びに何度も鳴いていた。
「そうだ、小春さん! こちら、我が主からの手紙ですぞ」
「ええ!? 太陽の神様からもお手紙が!?」
緊張で小さく震える手で手紙を受け取る。便箋を開くと、おひさまの匂いがした。
――『太陽の旨味を凝縮したような味であった』。
小春が料理に込めた思いは、神様に届いたのだろう。その一言は、『おいしい』と言われるよりもずっと心が温かくなる言葉だ。
小春の胸が、太陽のように熱くなる。神様の言葉が、心の奥まで光を灯してくれるようだった。
「これで二つ目の試練も合格ですな、小春さん」
「はい! 次は秋の料理ですね!」
「ええ、ええ。お次はヘビくんが来る予定ですな。必要な食材があれば、また知らせてほしいんですな」
ヘビが仕える神様を思い出しながら、小春は次の試練の料理を思案する。
『神様ごはん相談所』。果たして小春は、これから待ち受ける三つ目の試練をどう乗り越えるのか。




