序章です
一人で隠しきれないのが好きです!二人を好きになったら隠しておけばいいんです。3人を好きになったらどうすればいいですか?ラブコメの幕開けです!ですか?掟破りの学園物語、開幕です!
客観的に見れば、どんなにがんばっても乗り越えられないところがあります。
簡単に言えば「才能」です。才能が上限を決め、努力が下限を決めるということです。普通の人が一生たどり着けないようなゴールは、天才たちにとってはスタート地点かもしれません。
私のような普通の人間にとっては、自分には絶対に「できない」ことを自覚することが大切です。「できること」に集中して、効率よく時間を使うのが賢明です。
人生は短く、時間も限られています。時間の浪費は生命の浪費と同じです。
だから、「できない」ことに時間を使いたくありません。
人をうらやむよりも、自分を高めていくほうがいいかもしれません。もちろん、そのようなことはありますが、ちょっとしたチャンスが必要です。
そして僕は、健全な現役高校生です。今の考えはただ一つ、それは——彼女ができたいです!
高校が始まるまで、まだ一週間近くあります。
池袋の商店街をぶらぶらしていると、カップルが次々と通りすぎていって、羨ましい話には飽きてしまいました。
学生時代のカップルで、半年以上付き合っている人はほとんどいません。卒業後、99%が別れます。
それでも、彼女が欲しかったんです。一生に一度しかない青春を、このように毎日毎日過ごすのは、あまりにも退屈です。
外見は普通ですが、性格は内向的で社交的ではなく、ほとんど外出しません。このような前提では、相手を語ることなど夢のまた夢です。
もっと早くやめておくべきだったのかもしれませんが、自分の胸に手を当ててみると、やはり彼女に飢えていました。
いくら何でも、多少の要求はあります。
性格もいいし、顔もかわいいし、大人しいタイプがいいですね。共通の話題があれば一番いいですし、なければ彼女の好きなことを知ろうとします。
さすがに歩くのに疲れて、道端のベンチにへたりこんでいました。スマートフォンを取り出し、カーナビのアプリを見てため息をつきました。
「すぐ近くなのに、どうして見つからないんですか?限定版があと三セット残っていますから、間に合いますように」
「何を探しているんですか?よく知っているんですが、お手伝いしましょうか?」
綺麗な声が後ろから聞こえてきて、私は首を傾げた瞬間、彼女に完全に吸い寄せられました。横顔は息をのむほど美しく、身体のラインは、創造主の作といっても過言ではありません。
金色の長い髪は自然に肩にこぼれ、ストラップの長いスカートと白い靴の組み合わせは、しばらくすると私の右手に座り、青い瞳に私の姿が映っていました。
私はスマートフォンを彼女の前に差し出し、地図アプリで住所を拡大しました。
「アニメイトですか?半月ほど前に反対側に引っ越してしまって、まだ住所が更新されていません。案内しましょうか」
「そうなんですか。迷惑じゃないですか。佐藤凛です。名前で呼んでください。まだ呼び方がわからないんです」
女の子は少し迷っていましたが、もう一度私を見て言いました。
「佐藤さん、じろじろ見ないでください。失礼ですよ。橘由依です。早く行きましょう。これから雨が降りますから」
「橘さん、お願いします。歩きながら話しましょう。ここに来るのは初めてなんですけど、限定セットが指定店でしか販売されないので、本当に困っています」
私は名残惜しそうに目をそらし、イベントの企画者をからかいました。
「店舗に流れを引き込み、差別化を図るためのビジネスだと思います。あまり気にしないでください」
「1日に100個しか売れていないのでは、奪うに足りません。店舗のツイートは3個しかないので、後ろの人は無駄足を踏んでしまいます」
「まだ少し距離がありますから、歩いても間に合いません。走って行きます」
橘さんはそう言って走り出しましたが、僕は彼女のあとを半メートルほどの間隔を空けてついていきました。
5分後、息を切らしながらアニメイトの入り口に到着しました。
「えっと……あの、『物語シリーズ』の限定セット、まだありますか?」
「よく来ていただきましたね。ちょうど最後のセットが残っていました。詰めておきましょうか。値段は三万円です」
わたしは一万円札を三枚出して、店員に渡しました。
「お願いします。二つに分けて入れてください。取りやすいですから」
店員さんはてきぱきして、すぐに包装してくれました。
ずっしりと重い本を提げて、休憩中の橘さんの前に行き、笑顔で誘います。
「橘さん、助かります。何か飲みに行きませんか?」
「そんな気を遣わなくてもいいですよ。私もそろそろ遊びました。これから帰るところです」
「橘さん、Lineで友達になってもいいですか?今度来たら、面白いお店を紹介してもらおうと思って。もちろん、無駄にお時間は取らせません。報酬はあります」
橘さんは立ち止まり、不審そうに眉をひそめました。
「面白い店?どこが面白いんですか?まさか、そういうところを探しているんじゃないでしょうね」
この女の子は本当にきれいでかわいいのですが、どうしてそんなことを考えるのでしょう。原因はたぶん僕にあると思うんですが、あまり時間が経っていません。
「まさか。ああいう中古屋には、絶版品がたくさんあるんです。ネットにないものは、オフラインで運をつけてみると、手に入るかもしれません」
「そうですか。すみません、誤解してしまいました。確かに連絡先があったほうがいいと思いますので、追加します。また時間ができたら、また話します」
橘さんは恥ずかしそうにうつむき、横目でちらりと顔を赤くして、ぼくに友達申請をしてくれました。
「これはお礼です。何もしないと、ちょっと申し訳ありません」
袋の中から忍のグッズを引っ張り出し、プレゼントすることにしました。思わず横を見ると、橘と目が合いました。
彼女の顔はますます赤くなり、気のせいか、わたしたちの距離がいくぶん近くなったように感じられた。
それだけで、もう言葉が出てきません。
どれだけおしゃべりが苦手なんでしょうか……
自分がダメなのはわかっていましたが、それは私のせいではありません。魅力の置きどころがなく、照れているところも可愛くて、天使そのものです。
彼女と目を合わせて話をするのは、私のような性格にはハードルが高すぎました。
初心者村を出たばかりの冒険者が、最終ボスを倒すようなものです。橘さんは気にする様子もなく、ぼくの手からグッズを手に取ると、うれしそうに口元をほころばせました。
「ええと……最初はアセロラだったんですが、吸血鬼になってからはキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと名前を変えていて、今は忍野忍といっています。『物語』の中心的なキャラクターで、普通は『忍』と呼んでいます」
「『シリーズ』はクラスの人たちから話を聞いたことがあって、なかなか見る機会がありませんでした。見る順番が複雑なようですが、おすすめの順番はありますか?」
今は僕のホームに来ているので、自分の知っている分野には絶対の自信があります。
「見る順番には出版順と、時系列順の2種類があります。初心者の方は、原作を補うには出版順がおすすめです。アニメは意図的に時系列を乱すことで伏線を作っているので、時間順で見なくても驚きが少ないです」
「そうですか。そうですか。今日は楽しかったですね。また約束しましょう。門限が迫っているので、家族から帰るようにと連絡がありました」
「橘さん、一緒に写真を撮りませんか?記念に?迷惑ならいいけど……」
私の声はますます小さくなっていったが、彼女はすぐそばにいて、絶対に聞こえていた。「え! ? snsに投稿しなければいいんですよ~佐藤さん、近づいて、撮ります!」
こうして私たちはくっついて、まるでカップルのような仲の良い写真を撮りました。
橘さんは立ち上がり、ぼくに向かって手を振り、遠ざかっていく彼女の背中を見ながら、大声で叫びました。
「バイバイ、またね、気をつけて!会いたいです!」
どうして最後の言葉を言ったのか、自分でもよくわかりません。ただ、こんなに嬉しかったことはないと思って、口をついて出てしまいました。嫌われるでしょうね、これはもう……
橘さんは一瞬立ち止まり、ぼくを振り返りました。まるで時間が止まったかのように、互いの心臓の音だけが交差していました。この時の彼女の笑顔は、一生忘れられません。
こうして物語は始まります。
