表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/12

ラウンド3・前半:勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求む~戦略と準備~

(ラウンド2の重厚な雰囲気がまだ残る中、あすかが少し明るい表情で、新たなテーマへと誘う。)


あすか:「『歴史バトルロワイヤル』、ラウンド3にようこそ!」(クロノスに新しい議題を表示。背景には孫子の『兵法』の一節が映し出される)

あすか:「古代中国の偉大な兵法家、孫子は『勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求む。敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む』。…つまり、勝利する軍隊は、戦う前にすでに勝利を確実なものにしているのであり、敗北する軍隊は、戦いを始めてから勝利を何とか得ようとする、と、前回に言っておられました。」


チャーチル:「前回に…?」


あすか:「(受け流すように)このラウンドのテーマは、まさにこの『先ず勝ちて』の部分、『戦略と準備』です。皆様は、戦いに臨むにあたり、何を最も重要な要素と考え、どのように準備を進められたのでしょうか?情報、兵站、兵士の士気、組織、それとも何か別のものか…。その勝利への周到なる布石について、お聞かせください。」


あすか:「…では、このテーマ、まずはモンゴル帝国を築き上げられた、チンギス・カン陛下にお伺いしたいと思います。陛下にとって、戦う前に勝利を確実にするために、最も重要な要素とは何でしたか?」


チンギス・カン:「(しばし目を閉じ、やがて静かに口を開く)…孫子の言葉、理に適っている。戦いは、博打ではない。始めるからには、勝たねばならぬ。そのためには…『情報』と『規律』。この二つが、我が戦いの根幹であった。」


ナポレオン:「(興味深そうに)情報と規律、か。確かに、どちらも戦いの基本ではあるな。具体的には、どのように?」


チンギス・カン:「まず『情報』。敵を知らずして、どうして勝てようか。」

(指を立てる)

「我らは、戦いを始める遥か前から、商人や旅人、あるいは降伏した者たちを使い、敵国の内情を探らせた。道のり、都市の守り、兵力、将軍の性格、民の暮らしぶり、そして…支配者同士の不和に至るまでな。」


チャーチル:「スパイ網、ということですか。それは現代でも最も重要な諜報活動ですな。」


チンギス・カン:「そうだ。集めた情報は、幾重にも確認し、真偽を見極める。時には、偽の情報を流し、敵を混乱させることもあった。敵が何を知り、何を考え、どう動くか…それを正確に把握してこそ、的確な策を講じることができる。」

(クロノスに、モンゴル帝国の広大な情報網をイメージさせる図が表示される)

「ホラズムとの戦いでも、彼らの内情を詳細に把握していたからこそ、あの広大な国を切り崩すことができたのだ。」


アレクサンドロス:「ふむ、敵を知ることは重要だ。だが、情報は時に古くなり、あるいは偽りであることもある。最終的には、戦場での直感と決断力が物を言うのではないか?」


チンギス・カン:「(アレクサンドロスを静かに見据え)直感も決断も、確かな情報という土台があってこそ生きる。そして、その情報を活かし、軍を意のままに動かすためには、鉄の『規律』が不可欠だ。」

(もう一本指を立てる)

「我がモンゴル軍は、十進法に基づいた千戸制ミンガン百戸制ジャウン十戸制アルバンで厳格に組織されていた。命令は、上から下へ、迅速かつ正確に伝達される。いかなる状況下でも、隊列を乱さず、命令通りに動く。それが、我らの強さの源泉よ。」


あすか:「千戸制…兵士だけでなく、その家族も含めた社会組織でもあったと聞きます。そして、それを支えたのが、モンゴルの法典『大ヤッサ(イフ・ジャサク)』ですね。」


チンギス・カン:「そうだ。ヤッサは、モンゴル人全てが従うべき掟。裏切りや逃亡、略奪の禁、上官への絶対服従…。これらを破る者には、厳罰が下される。規律なくして、強大な軍はあり得ぬ。規律なくして、広大な帝国を治めることもできぬ。」(断言する)

「情報で敵を上回り、規律で自軍を固める。これこそが、戦う前に勝利を近づける道だと、私は信じている。」


ナポレオン:「(頷き)厳格な規律と組織、そして情報網か…確かに、大軍を率いる上でそれは不可欠な要素だ。貴公のモンゴル騎兵が、あれほどの機動力と破壊力を発揮できたのも、その規律あってこそだろうな。」


チャーチル:「個人の勇猛さだけでなく、システムとしての強さ…それは、国家が戦争を遂行する上で、極めて近代的な視点とも言えますな。」


あすか:「チンギス・カン陛下、ありがとうございました。戦いの勝敗は、始まる前に既に大勢が決まっている…そのために、情報と規律を徹底されたのですね。その冷徹なまでの合理性に、帝国の強さの秘密を見た気がします。」

(チンギス・カンに一礼し、次にナポレオンへ向き直る)


あすか:「では、続きまして、ナポレオン皇帝陛下にお伺いします。陛下は、その卓越した軍事的天才で数々の勝利を収められましたが、勝利の準備段階において、何を最も重視されましたか?」


ナポレオン:「(自信に満ちた表情で)フン、チンギス公の言う情報と規律も重要だが、それだけでは勝てん。私の戦いは、もっと動的だ。」

(指でテーブルを叩く)

「私が最も重視したのは、『兵站』と『機動力』、そして兵士たちの『士気』だ!」


アレクサンドロス:「兵站と機動力、そして士気か。それは、私の戦い方とも通じるものがあるな!」


ナポレオン:「まず『兵站』。古来より言うだろう?『軍は胃袋で動く』と。」

(両手を広げる)

「いかに勇猛な兵士も、いかに優れた戦術も、食料と弾薬がなければ絵に描いた餅だ。私は、兵士たちが常に十分な補給を受けられるよう、兵站線の確保と整備に最大の注意を払った…もっとも、ロシアではそれが裏目に出たがな。」(自嘲気味に付け加える)


あすか:「大陸軍グランダルメの補給システムは、当時としては革新的だったと聞きます。」


ナポレオン:「そうだ。現地徴発だけに頼らず、事前に補給基地を設け、輸送部隊を組織した。それにより、我が軍は敵が予想もしない速度で進軍し、敵の意表を突くことができたのだ。これこそが『機動力』に繋がる。」

(クロノスに、大陸軍の行軍速度や兵站システムに関する資料が表示される)

「迅速な移動で敵を翻弄し、戦力を集中させ、敵の弱点を的確に突く。我が砲兵隊の集中運用や、騎兵による追撃も、この機動力あってこそ最大限の効果を発揮する。」


チャーチル:「(頷き)補給線ライン・オブ・コミュニケーションの確保は、軍事作戦の生命線ですな。それが伸びきれば、いかに強力な軍隊も脆弱になる。」


ナポレオン:「そして、何よりも重要なのが兵士たちの『士気』だ!」(声を強める)

「恐怖に打ち勝ち、死地に赴くのは兵士たち自身だ。彼らが『勝ちたい』『皇帝のために戦いたい』と思わなければ、いかなる戦略も画餅に帰す。」


あすか:「皇帝陛下は、兵士たちの士気を高めるために、どのような工夫をされたのですか?」


ナポレオン:「まず、『栄誉』だ。勇敢に戦った者には、勲章を与え、昇進させた。レジオンドヌール勲章は、そのために創設したようなものだ。」(胸を張る)

「次に、『報酬』。勝利によって得た富は、兵士たちにも分配した。そして何より…私自身が、常に彼らと共にあるということだ。」(拳を握る)

「戦場では兵士と同じものを食べ、雨風にさらされた。時には、自ら銃を取り、先頭に立つこともあった。皇帝が共に苦しみ、共に戦う姿を見せることで、兵士たちは私を信じ、命を賭けて戦ってくれたのだ!」


アレクサンドロス:「(満足そうに頷き)それだ、ナポレオン!それこそが、王と兵士を繋ぐ最も強い絆だ!私もまた、常に兵の先頭に立ち、彼らと苦楽を共にした!だからこそ、彼らは私を信じ、世界の果てまでついてきたのだ!」


チンギス・カン:「…確かに、指導者が自ら範を示すことは重要だ。だが、感情や勢いだけに頼る戦い方は、危うさも孕んでおる。」


ナポレオン:「フン、感情だけでも、計算だけでも勝てんということだ、チンギス公。その両輪があってこそ、初めて勝利の女神は微笑むのだ。」


あすか:「ナポレオン皇帝陛下、ありがとうございました。兵站と機動力という合理的な準備と、兵士の士気を高めるという人間的な要素…その両面を重視されたのですね。アレクサンドロス大王との共通点も見えてきたように思います。」


あすか:「さて、モンゴル帝国の情報と規律、そしてナポレオン軍の兵站・機動力と士気…。勝利を準備するための重要な要素が語られました。ラウンド3後半では、アレクサンドロス大王とチャーチル首相に、さらに深くこのテーマについてお伺いしたいと思います。」


あすか:「『歴史バトルロワイヤル』、ラウンド3『勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求む~戦略と準備~』、後半もご期待ください!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ