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ラウンド2・後半:決断の時~リーダーは何を背負うのか~

(前半の重厚な議論の余韻が残る中、あすかが静かに語り始める。)


あすか:「『歴史バトルロワイヤル』、ラウンド2『決断の時~リーダーは何を背負うのか~』後半戦をお送りします。」


あすか:「前半は、ナポレオン皇帝陛下のロシア遠征という壮大なる野心とその代償、そしてチャーチル首相のダンケルク撤退という国家存亡を賭けた苦渋の選択について伺いました。お二方とも、その決断の瞬間の重圧がひしひしと伝わってきました。」


あすか:「さて、後半は、古代世界の英雄、アレクサンドロス大王にお伺いします。大王の輝かしい征服行の中でも、特に困難だった『決断』とは、どのようなものだったのでしょうか?」


アレクサンドロス:「(腕を組み、少し遠い目をして)フン…私の前には、常に未知なる世界が広がっていた。進むことこそが私の宿命であり、喜びでもあった。だが…」

(表情がわずかに曇る)

「…一度だけ、この私が、前進を諦めざるを得なかった時がある。それは、インドのヒュパシス河の畔でのことだ。」


あすか:「ヒュパシス河…紀元前326年、大王の東方遠征が、ついにその歩みを止めた場所ですね。」

(クロノスにインドの地図と、遠征軍の進路、ヒュパシス河の位置を表示)


ナポレオン:「(興味深そうに)インドか。貴公の軍は、マケドニアから遥か東、世界の果てまで到達しようとしていた。何が貴公を止めたのだ?強大な敵か?それとも…」


アレクサンドロス:「敵ならば、私は決して退かなかっただろう!ポロス王との戦いでは、恐るべき戦象にも打ち勝ったのだからな。」

(誇らしげに)「だが…私を止めたのは、我が兵士たち自身だったのだ。」


チャーチル:「兵士たちが…?反乱でも起こしたのですかな?」


アレクサンドロス:「反乱というほどではない。だが、彼らはもう限界だったのだ。」

(苦々しげに)「10年にも及ぶ遠征、絶え間ない戦い、そして未知の土地への不安…。熱病や風土病にも苦しめられた。彼らは故郷を思い、これ以上の進軍を拒んだのだ。口々に『王よ、我々を故郷へ帰してください!』と…。」


あすか:「長年の戦友たちの、悲痛な叫びだったのですね…。」


アレクサンドロス:「私は激怒した!世界の果てをこの目で見ることなく、引き返すなどという屈辱!私は兵士たちを叱咤し、説得しようとした。数日間、幕舎に閉じこもり、彼らが考えを変えるのを待った。だが…彼らの決意は固かった。」

(悔しそうに唇を噛む)

「あの時ほど、己の無力さを感じたことはない。私は神の子アレクサンドロスだぞ!なのになぜ、我が兵たちは私に従わぬのだ、と…。」


チンギス・カン:「(静かに頷き)…兵の心が離れれば、いかなる英雄も孤立する。無理強いは、さらなる亀裂を生むだけだ。」


アレクサンドロス:「…そうだ。結局、私は彼らの願いを聞き入れ、軍を反転させることを決断した。世界の果てを見るという私の夢は、そこで潰えたのだ。」

(声を落とし、悔しさを滲ませる)

「あれは、私の誇りを深く傷つける決断だった。だが…同時に、王として、彼らの限界を認め、その命を守るという責任を果たした瞬間でもあったのかもしれん。」


ナポレオン:「ふむ…部下の限界を認め、自らの野望を抑えるか。それは、私にはなかなか真似できぬ決断かもしれんな。」

(ロシア遠征の失敗を思い起こさせる皮肉な響き)


チャーチル:「しかし大王、その決断があったからこそ、多くの兵士がギリシャへ帰還できた。リーダーとは、時に夢を諦める勇気も必要なのでしょうな。」


あすか:「アレクサンドロス大王、ありがとうございました。英雄としての野心と、兵士たちへの責任との間で揺れ動いた、苦しい胸の内をお察しいたします。」

(アレクサンドロスに深く一礼し、次にチンギス・カンへ向き直る)


あすか:「では、最後に、モンゴル帝国を築き上げられたチンギス・カン陛下にお伺いします。陛下が下された数々のご決断の中で、最も心を砕かれ、そして帝国の将来を左右したと思われる『決断』とは、何だったのでしょうか?」


チンギス・カン:「(しばし沈黙し、重々しく口を開く)…我が人生は、戦いと決断の連続であった。敵対部族を打ち破る時も、新たなヤッサを定める時も、常に非情な決断を迫られた。」

(目を細め、過去を振り返るように)「だが…最も我が心を悩ませ、そして今もなお、その結果が気にかかる決断と言えば…それは、我が後継者を誰にするか、ということだ。」


あすか:「後継者指名…!広大なモンゴル帝国の未来を託す、極めて重要なご決断ですね。」

(クロノスにチンギス・カンの息子たちの肖像画(想像図)や、当時のモンゴル帝国の版図を表示)


ナポレオン:「(興味深そうに)帝国を築いた者が、その継続をどう考えるか…それは普遍的な課題だな。貴公には多くの有能な息子たちがいたと聞く。誰を選ぶかで、帝国の運命は大きく変わるだろう。」


チンギス・カン:「そうだ。我が息子たちは、それぞれに勇猛であり、才能もあった。長男ジョチ、次男チャガタイ、三男オゴデイ、末子トルイ…。」

(一人一人の名を噛みしめるように)「だが、彼らの間には、時に反目もあった。特に、ジョチの出自については、チャガタイが公然と疑義を唱えることもあったのだ。」(苦い表情を見せる)


アレクサンドロス:「兄弟間の対立か…それは、いかなる王家にもつきまとう悩みの種だな。」


チンギス・カン:「私は、クリルタイ(部族会議)を開き、息子たちや重臣たちの意見を聞いた。そして…最終的に、三男のオゴデイを我が後継者として指名したのだ。」

(静かに、しかし確固たる口調で)「オゴデイは、兄たちほど武勇に優れていたわけではない。だが、彼は温厚で情け深く、他者の意見に耳を傾ける度量があった。何よりも、彼ならば兄弟間の争いを抑え、帝国を一つにまとめてくれると考えたのだ。」


チャーチル:「武勇よりも、協調性や人徳を選ばれたと…それは、ある意味で賢明なご判断だったのかもしれませんな。巨大な帝国を維持するには、力だけでなく、調和も必要でしょうから。」


チンギス・カン:「そう願った。だが…(ため息をつく)私が死んだ後、やはり息子たちの間や、その子孫たちの間で、帝国の覇権を巡る争いが絶えなかったと聞く。オゴデイの後、帝国は分裂の道を辿ったとも…。」

(悔恨の念を滲ませる)

「私の決断は、果たして正しかったのか…それとも、もっと良い道があったのか…それは、今の私にも分からぬ。」


あすか:「帝国の将来を想い、最善と考えたご決断…。しかし、その結果までは、偉大なるチンギス・カン陛下とて、完全には制御できなかったのですね…。」


ナポレオン:「(静かに頷き)後継者問題は、常に帝国の安定を揺るがす。私もまた、息子の将来を案じたものだ…。」


チンギス・カン:「リーダーの決断とは、その時点での最善を尽くすことしかできぬ。その結果がどうなるかは、天のみぞ知る、ということかもしれんな。」


あすか:「チンギス・カン陛下、ありがとうございました。帝国の未来を一身に背負い、悩み抜かれた末のご決断…その重みが、痛いほど伝わってまいりました。」


あすか:「さて、皆様、ラウンド2『決断の時~リーダーは何を背負うのか~』、いかがでしたでしょうか?」


(クロノスに各対談者が語った「決断」のキーワードを表示:ナポレオンの「ロシア遠征」、チャーチルの「ダンケルク撤退」、アレクサンドロスの「インド進軍中止」、チンギス・カンの「後継者指名」)


あすか:「皇帝陛下の野心と挫折、首相の国家存亡を賭けた苦悩、大王の夢と現実の狭間での葛藤、そしてチンギス・カン陛下の帝国の未来を憂う思い…。皆様の『決断』は、それぞれに異なった状況、異なった価値観に基づいていましたが、共通していたのは、その肩に計り知れないほどの責任と重圧を背負っておられた、ということではないでしょうか。」


あすか:「リーダーとは、時に孤独であり、時に非情な選択を迫られ、そしてその結果の全てを引き受ける存在…。その厳しさを、改めて感じさせられました。」


あすか:「白熱した議論、誠にありがとうございました。それでは、次のラウンドでは、皆様がどのようにして強大な軍隊を作り上げ、兵士たちを導いたのか、その秘訣に迫ってみたいと思います。」

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