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ラウンド1・後半:我が戦いの最高傑作~勝利の方程式~

(前半の議論を受け、スタジオには知的な興奮が漂っている。あすかが微笑みながら、中央で再び口を開く。)


あすか:「『歴史バトルロワイヤル』、ラウンド1『我が戦いの最高傑作~勝利の方程式~』後半戦、スタートです!」


あすか:「前半は、アレクサンドロス大王のガウガメラにおける電撃的な決戦、そしてチンギス・カン陛下のホラズムを打ち破った壮大な戦略について伺いました。いやはや、お二方とも、そのスケールと発想にただただ圧倒されるばかりです。」

(感嘆の息をつく)


あすか:「さて、後半は、近代ヨーロッパにその名を轟かせた、ナポレオン皇帝陛下にお話を伺いましょう。陛下、数々の輝かしい勝利を収められていますが、ご自身が考える『最高傑作』とは、どの戦いになりますでしょうか?」


ナポレオン:「(待ってましたとばかりに、自信に満ちた表情で)フン、私の戦歴は勝利で彩られているからな、一つを選ぶのは難しいが…敢えて挙げるならば、やはりアウステルリッツだろう。」


あすか:「アウステルリッツの戦い!1805年、フランス皇帝ナポレオン率いる大陸軍グランダルメが、オーストリア・ロシア連合軍を破った、世に名高い『三帝会戦』ですね!」

(クロノスにアウステルリッツ周辺の地形図と両軍の配置イメージを表示)


ナポレオン:「そうだ。あの時、我がフランス軍は数で劣り、しかも敵はオーストリア皇帝とロシア皇帝が自ら率いる精鋭部隊だった。」

(地図を鋭い目で見ながら)「だが、私には勝利への道筋がはっきりと見えていた。」


アレクサンドロス:「ほう、劣勢を覆しての勝利か。それは興味深い。どのような策を用いたのだ?」


ナポレオン:「まず、『欺瞞』だ。」

(指で地図上の自軍右翼を指す)

「私は意図的に我が右翼を弱体に見せかけ、敵に『ここを突けば勝てる』と思わせた。そして、決戦の地となるプラツェン高地…ここは戦場の鍵となる重要な地点だが、これを敢えて敵に明け渡したのだ。」


チャーチル:「(眉を上げて)重要な高地を、わざと敵に?それは大胆な…いや、危険極まりない賭けですな。」


ナポレオン:「危険?いや、計算だよ、チャーチル卿。」

(自信ありげに)「敵将たちは、私がプラツェン高地を放棄したのを見て、我が軍が弱体化し、退却を考えていると誤認した。そして、連合軍主力を我が右翼へ向かわせ、包囲殲滅しようと動き出したのだ…まんまと、私の描いた筋書き通りにな!」


チンギス・カン:「…敵を、自らの望む戦場へ誘い込むか。悪くない。」

(静かに頷く)


ナポレオン:「敵主力が我が右翼に殺到し、その結果、敵の中央…プラツェン高地が手薄になる。その瞬間を、私は待っていた!」

(声に熱がこもる)「夜明けの霧が晴れると同時に、私は隠していた主力部隊を高地へと突撃させた!不意を突かれた敵中央は大混乱に陥り、分断された!」


あすか:「霧の中から現れたフランス軍…!劇的な展開ですね!」

(クロノスにその瞬間のイメージCGを表示)


ナポレオン:「さらに、我が砲兵隊の集中運用だ!」

(拳を握る)「高地を制圧した後、眼下の湖に追い詰められた敵軍に対し、容赦ない砲撃を浴びせた。凍った湖に砲弾が炸裂し、敵兵は次々と氷の下へ…阿鼻叫喚の地獄絵図だったろうな。」

(冷徹な目で)「結果は、我がフランス軍の完璧な勝利。第三次対仏大同盟は、この一戦で崩壊した。戦術的勝利と戦略的勝利を同時に達成した、まさに芸術的な戦いだったと自負しているよ。」


アレクサンドロス:「敵を欺き、計算し尽くされたタイミングで主力を投入し、決定的な打撃を与える…見事だ、ナポレオン。戦いは力だけではない、知略もまた重要ということか。」


ナポレオン:「(満足げに頷き)ご理解いただけたかな、大王。もっとも、貴公のガウガメラでの突撃も見事だったがな。」


チャーチル:「敵の油断を誘い、弱点を突き、予備兵力を効果的に投入する…まさにクラウゼヴィッツが言うところの『重心』を正確に見抜いた戦いですな。その後の政治的影響も絶大だった。…しかし、皇帝陛下。その完璧な勝利も、後のワーテルローでの敗北を帳消しにはできませんでしたな…?」(少し皮肉っぽく)


ナポレオン:「(ムッとした表情を見せるが、すぐに冷静さを取り戻し)フン…人生とは、勝利もあれば敗北もあるものだ、チャーチル卿。だが、アウステルリッツの輝きが色褪せることはない。」


あすか:「ナポレオン皇帝陛下、ありがとうございました。緻密な計算と大胆な実行力が見事に融合した、まさに『皇帝の戦い』でした。…さて、それでは最後に、この方にお話を伺いましょう。第二次世界大戦という未曽有の国難を指導された、ウィンストン・チャーチル首相。首相にとっての『最高傑作』とは何でしょうか?」


チャーチル:「ふむ…(葉巻をくゆらせる仕草をしながら、ゆっくりと)まず申し上げておきたいのは、私はアレクサンドロス大王や皇帝陛下のような、直接戦場で軍を指揮する軍人ではない、ということですな。私は政治家であり、戦時下のリーダーとして国家を導いたに過ぎません。」


ナポレオン:「政治家、か。戦を知らぬ者が戦争を語るのか?」


チャーチル:「お言葉ですが、皇帝陛下。近代の戦争は、もはや将軍個人の才覚だけで勝てるものではありません。国家の総力を挙げた『総力戦』なのです。その観点から言わせていただければ…」


あすか:「と、仰いますと?」


チャーチル:「あえて挙げるならば、『バトル・オブ・ブリテン』の勝利…いや、むしろ、あの時期の英国民全体の不屈の精神こそが、私の誇りであり、ある種の『傑作』だったのかもしれませんな。」


あすか:「バトル・オブ・ブリテン…!1940年、ナチス・ドイツによるイギリス本土上陸作戦の前哨戦として繰り広げられた、人類史上最大の航空戦ですね。」

(クロノスにスピットファイアとドイツ空軍機の空中戦の映像や、爆撃されるロンドンの映像を表示)


チャーチル:「そうです。当時、フランスは降伏し、我が国はヨーロッパで孤立無援。ドイツ空軍ルフトヴァッフェは数でも経験でも我が空軍(RAF)を上回り、誰もが英国の敗北を予想したでしょう。」

(当時の厳しい状況を思い返すように)「しかし、我々は屈しなかった!」


アレクサンドロス:「不利な状況で、どうやって持ちこたえたのだ?」


チャーチル:「まず、我が空軍の若者たちの勇気と技量!『これほど多くの人々が、これほど少数の人々によって救われたことはない』…彼ら戦闘機パイロットこそ、真の英雄です。」

(力強く)「そして、レーダーという新技術。敵の来襲を早期に察知し、効果的に迎撃することを可能にしました。」


チンギス・カン:「…技術か。新しい道具は、時に戦いの様相を一変させる。」


チャーチル:「さらに、情報戦。エニグマ暗号の解読は、敵の意図を知る上で計り知れない価値がありました。そして何より…爆撃に怯まず、工場で働き、兵士を支え、互いに助け合った、英国民一人ひとりの粘り強さ!私はラジオを通じて、ただ彼らの勇気を言葉にしただけです。『我々は決して降伏しない!』とね。」(拳を握りしめる)


ナポレオン:「ふむ…国民の士気を維持し、国家全体で戦う…総力戦指導者の手腕というわけか。軍事的には、ドイツ側の戦略ミスもあっただろうがな。」


チャーチル:「もちろん、敵のミスにも助けられました。しかし、あの絶望的な状況下で、国家としての意志を保ち、最終的な勝利への望みを繋いだこと…それが、私の、いや、我々英国民の『勝利の方程式』だったのかもしれませんな。それは、華々しい戦術的勝利とは違うかもしれませんが、自由を守り抜いたという点で、何物にも代えがたい価値があると信じております。」


アレクサンドロス:「国家を守る…それもまた、王の重要な務めではあるな。」


チンギス・カン:「民が心を一つにせねば、国は保てぬ…か。」


あすか:「チャーチル首相、ありがとうございました。個人の武勇や戦術だけでなく、技術、情報、そして国民全体の精神力…近代総力戦における『勝利』の複雑な様相を示唆するお話でした。」


あすか:「さて、皆様、第一ラウンド『我が戦いの最高傑作』、いかがでしたでしょうか?」

(クロノスに4人の語った戦い(ガウガメラ、ホラズム征服、アウステルリッツ、バトル・オブ・ブリテン)のキーワードを表示)


あすか:「アレクサンドロス大王の勇気とカリスマが生んだ決戦での勝利。チンギス・カン陛下の情報と組織力による巨大戦略。ナポレオン皇帝陛下の計算され尽くした戦術的芸術。そしてチャーチル首相が語った国家総力戦と不屈の精神…。時代も状況も異なりますが、それぞれが信じる『勝利の方程式』を貫き、歴史を動かしてこられたことが、ひしひしと伝わってきました。」


あすか:「勝利の形は一つではない…しかし、そこにはリーダーの強い意志と決断が不可欠である、ということは共通しているのかもしれませんね。」


あすか:「非常に濃密な議論、ありがとうございました。それでは、次のラウンドへまいりましょう。次のテーマは、勝利の光があればこそ、その影もまた存在する…リーダーが背負うものについて、深く掘り下げていきたいと思います。」


(効果音:ラウンド終了のチャイム音と、次のラウンドへの期待感を煽る短いブリッジ音楽)

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