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ラウンド5・前半:「戦争の遺産~後世へのメッセージ~

(これまでのラウンドで白熱した議論を交わしてきた対談者たち。スタジオには、互いへの敬意と、これから語られるであろう言葉への期待感が静かに満ちている。あすかが、少し感慨深げな表情で、最終ラウンドの開始を告げる。)


あすか:「『歴史バトルロワイヤル』、いよいよこれが最後のラウンドとなります。」

(クロノスに最終ラウンドの議題『戦争の遺産~後世へのメッセージ~』を表示。背景には、地球や、様々な時代の人々の姿が映し出される)


あすか:「これまで、皆様の輝かしい勝利、苦渋のご決断、周到なる戦略と準備、そして手ごわい敵から得た学びについて、深く語り合っていただきました。その一つ一つが、歴史の大きな転換点であり、私たちの現代にも繋がりを持つ貴重なお話でした。」


あすか:「この最終ラウンドでは、皆様が指揮された戦い、そして皆様の存在そのものが、歴史にどのような『遺産』を残したとお考えになるか。そして、時を超えて、今を生きる私たち、さらには未来の人々へ伝えたい『教訓』あるいは『メッセージ』がございましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。」


あすか:「…では、この最後の問いかけ、まずは現代に最も近い時代に、国家の存亡を賭けて戦われた、ウィンストン・チャーチル首相からお願いできますでしょうか?」


チャーチル:「(ゆっくりと頷き、いつものように葉巻を整えながら)…最後のラウンド、ですかな。感慨深いものですな。」

(周囲を見渡し、やや声を改める)「私が指導した第二次世界大戦…あれは、人類の歴史における一大分岐点であったと信じております。そして、我々が残した最大の『遺産』とは、ファシズムという邪悪な全体主義の脅威から、自由と民主主義の世界を守り抜いたということ、これに尽きると考えております。」


ナポレオン:「(静かに聞き入り)自由と民主主義…貴国の掲げる大義であったな。確かに、あのナチスの狂気が世界を覆い尽くしていれば、その後の歴史は全く異なるものになっていただろう。」


チャーチル:「その通りです、皇帝陛下。あの戦いは、単なる領土や資源を巡る争いではなかった。人間の尊厳、個人の自由、法の支配といった、我々が長年かけて築き上げてきた文明の価値そのものが問われた戦いでした。」

(クロノスに、戦時下のロンドン市民の姿や、連合国の指導者たちが並ぶ映像が表示される)

「そして、その戦いにおいて、国民と指導者が心を一つにし、いかなる困難にも屈せず立ち向かえば、絶望的な状況からでも勝利を掴み取れるということを、我々は身をもって示したのです。」


アレクサンドロス:「民の心が一つになることの力か…それは、いつの時代も変わらぬ真理かもしれんな。」


チャーチル:「後世へ伝えたい『教訓』としましては…まず、『決して屈しない精神(Never give in)』。いかなる脅威が現れようとも、正しいと信じるもののために戦い続ける勇気を持つこと。次に、『対話の重要性と、同時に対話だけでは解決できない悪も存在するということへの警戒』。平和を愛するがゆえに、時に我々は悪の兆候を見過ごしがちです。そして最後に、『大国には、その力に応じた国際社会への責任がある』ということ。自国の利益のみを追求するのではなく、世界の平和と安定に貢献する努力を惜しんではならない。…もっとも、これは言うは易く行うは難し、ですがな。」(少し自嘲気味に微笑む)


あすか:「チャーチル首相、ありがとうございました。自由と民主主義の防衛という偉大な遺産、そして未来への力強いメッセージ、深く胸に響きました。」

(チャーチルに一礼し、次にナポレオンへ向き直る)


あすか:「では、続きまして、ナポレオン皇帝陛下にお伺いします。皇帝陛下の出現と、その戦いは、ヨーロッパ社会に巨大な変革をもたらしました。ご自身では、歴史にどのような『遺産』を残されたとお考えでしょうか?」


ナポレオン:「(腕を組み、誇らしげに、しかしどこか影のある表情で)フン、私の名は良くも悪くも歴史に刻まれているだろうな。私が残した『遺産』…それは、フランス革命の理念をヨーロッパ全土に広め、古い封建的な秩序を破壊し、近代的な国家システムの礎を築いたことだ。」


チャーチル:「(頷き)確かに、皇帝陛下の出現は、ヨーロッパの王政に大きな衝撃を与え、ナショナリズムを高揚させましたな。その影響は、良くも悪くも計り知れない。」


ナポレオン:「そうだ。我がナポレオン法典は、法の下の平等、経済活動の自由、信仰の自由といった革命の成果を明文化し、フランスのみならず、私が影響を及ぼした多くの国々で、近代法の基礎となった。」

(クロノスに、ナポレオン法典の写本や、当時のヨーロッパの地図が変化していく様子が表示される)

「身分制度に縛られていた人々を解放し、才能ある者が実力で地位を掴める社会への道を開いたのだ。私自身が、その最大の証明であろう?」


チンギス・カン:「(静かに)…法による統治か。それは、いかなる国家においても重要な土台だ。ヤッサ(モンゴルの法典)もまた、我が民を一つにするためのものであった。」


ナポレオン:「だが…(声を落とし)私の戦いは、同時に大きな混乱と、数えきれないほどの犠牲者も生んだ。ナショナリズムの高揚は、その後のヨーロッパに新たな火種ももたらした。私の野心が、ヨーロッパを戦火で覆い尽くしたという批判も甘んじて受けねばなるまい。」

(苦い表情を見せる)「栄光の裏には、常に影がつきまとうものだ。」


あすか:「では、皇帝陛下が後世に伝えたい『教訓』とは、どのようなものでしょうか?」


ナポレオン:「(しばし考え込み)…まず、『野心を持つことは重要だが、その野心は理性によって制御されねばならない』ということ。無限の野心は、必ず破滅を招く。次に、『法の支配こそが、国家を安定させ、民に繁栄をもたらす』ということ。いかなる権力者も、法の下にあるべきだ。そして最後に…『栄光とは、いかに輝かしくとも、所詮は儚いものだ』ということだ。」

(遠い目をして)「歴史の法廷において、真に評価されるのは、一時の勝利ではなく、後世に残した普遍的な価値なのだと、今なら理解できる。」


アレクサンドロス:「(頷き)栄光の儚さか…それは、我ら覇者たちが、常に心に留め置かねばならぬ言葉かもしれんな。」


あすか:「ナポレオン皇帝陛下、ありがとうございました。革命の理念の普及と近代国家の礎という輝かしい遺産、そして野心と栄光の儚さという深い教訓…。皇帝陛下の光と影、その両面を垣間見た気がいたします。」


あすか:「自由と民主主義の守護者としてのメッセージ、そして革命の理念を広めた皇帝の自己省察…。お二方のお話は、現代に生きる私たちにとっても、非常に重く、そして示唆に富むものでした。」

あすか:「さて、次はアレクサンドロス大王、そしてチンギス・カン陛下にも、その『遺産』と『メッセージ』について伺ってまいりたいと思います。ラウンド5後半も、どうぞご期待くだい!」

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