結界完了
よろしくお願いします。
「…もう俺のところは十分なエネルギーが入った。後はお前達の持分だけだ。
自分の持分が終わったなら俺はさっさと東の塔に戻る」
オェングスは協調性がなく、いつも自分のすべきことが終わるとさっさと帰ってしまう。いつものことであるが、今日は5年に1度の大切な式典でもあり最後には国民に対して塔の存在をアピールするためのパフォーマンスもあった。
「オェングス、普段なら了承できるけど、今日くらいはちょっと我慢して居ようよ」
リアは持ち場を離れようとするオェングスを止めた。
「そうだよ。今日ぐらいは最後まで一緒に頑張ろう」
「オェングスみたいにモテない俺だってオェングスを見てキャーキャー言ってる女性達が癪に障るけど我慢してやっているんだから、オェングスもちょっとくらい我慢しろよ」
残りのオグマと共にケルムもオェングスを止めていた。
オェングスは仕方なく、結界を張り続けるフリをして持ち場にとどまることにした。そして残りの3人の魔術の様子を見ていた。
(リアは相変わらず努力の塊のようなエネルギーを放っているな…時間がかかるわけだ。オグマは力技でどうにかしようとしているし、ケルムに至ってはハリボテにしか見えん。こんな奴らが俺と一緒の地位の大魔術師なんてほんと世も末だな…)
オェングスは他の3人の魔術の様子を批評していたが、西の塔のオグマは優等生タイプであり、普段から4人のまとめ役をしていた。北の塔のリアは明るい性格の努力家で、南の塔のケルムも軽薄そうな見た目の割には真面目で物事をはっきりという性格であった。
そんな3人はしっかりとそれぞれの塔をまとめることができていた。しかし、東の塔のオェングスだけは協調性がなく、淡々とした性格や容姿も相まってか神格化され、なぜか東の塔の魔術師達から崇められていた。崇められているためか普段のオェングスの仕事を誰も知らず、オェングスが普段何をしているのかもわかっていなかった。
また、魔術の天才であるオェングスは他の魔術師と違って魔術をイメージだけで発動することができた。イメージで発動できるため、他の魔術師の魔術をイメージで感じることができた。しかし、他の3人はオェングスと違って天才ではなく秀才であったため、しっかりとした魔術の体系を組んで魔術を発動させており時間がかかっていた。
(そろそろ完了だな。長かったな)
オェングスが結界を張り続けるフリをしながら他の3人の魔術の様子を見ていると四色の光が交わり結界が出来上がった。
出来上がると同時にオグマが声を上げた。
「今回も無事に結界の張り直しが終了いたしました」
「ご苦労であった。東西南北の塔の大魔術師達よ」
オグマの結界張り直し完了の声を受けて国王陛下が労いの言葉をかけた。
オグマ達4人は国王陛下に向かって礼をして東西南北のそれぞれの塔に戻っていく。
その時にちょっとしたパフォーマンスを見せるのが恒例となっていたため、
リアはフラワーシャワーを出して塔に戻ったり、オグマは虹を作って塔に戻ったり、ケルムはフェニックスを出現させそれに乗って塔に戻るパフォーマンスを見せたのだった。しかし、オェングスだけは何もパフォーマンスを見せずそのまま塔に戻って行った。
そんなオェングスであっても張り直しの見学にきていた女性達には戻る際に黄色い声援を浴びるのだった。
ロエサもオェングスに黄色い声援を送る1人であった。
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