第四逃 明確な意識と職業病
シエロがこの世界に来てから二年後つまり2歳の時間軸です
「じゃあ改めて自己紹介していこっか⭐️ステアはステアだよっ7歳!」
...うん。知ってる。
「俺はジャックス。9歳だから来年には学園に行くけど、それまでシエロのことは僕が守るよ」
おお、泥舟に乗ったつもりでいるわ。
「...ネイア」
...え、終わり?名前だけ?もうちょっとなんかないの?
「つぎボクぅ?スカーレットだんよぉ」
バカだな。あぁボクっ子ってやつか。
「僕はアレスじゃ。この孤児院の園長をやっておる。」
よっしゃ。クソジジイの名前ゲットだぜ。
「あと一人セラってのがいるんだけど、引きこもりでなかなか部屋の外に出てこないんだよね...」
ほう引きこもりか。
「そいつは何処にいるの?」
「俺が案内しよう」
「この部屋だよ」
ジャックスに案内され、歩き始めてから数分でセラの部屋に着いた。
「セラ開けていいか?」
「...........」
返事はないが重々しい沈黙が入室の拒否を示している。が、神様にそんな人間の常識は通じない。
「んじゃ、入るよー」
「あ、ちょダメだよ」
ジャックスの牽制も虚しくシエロはズケズケと部屋に入る。
「もっと散らかってるかと思ったけど、意外ときれいなんだな」
整理整頓されている...というより手がつけられていない机とイスとベッドだけの空間。そのベッドの上にセラはいた。
「......何の用ですか?えーっと...」
「シエロだ」
「遊びに来たって感じじゃないですね。何の用です?」
「ちょっとした自己紹介をと思ってね」
「...言葉の端々に知性を感じます。貴方ただ者じゃないですね。気味が悪いです」
!これは驚いた。人間にここまで聡明なやつがいるとは思ってなかった。どう言い訳したものか。
「い、いやそんなそんな、ちょっと他よりも出来がいいってだけで「そもそも」
シエロの話が途中で遮られる。
「普通の子はそんなに難しい言葉知らないし、わざわざ歩かないですよ。何より、そんな流暢に喋れません」
ぐはぁ
「もうやめてやってくれ。すごいダメージを喰らっているじゃないか」
「ジャックス...今すぐどっか行って私はこのクソガキと話しているの」
「くっ...わかったよ。その代わりあまり殴らないでやってくれよ」
そのまま退散していく。
「全く。クソガキとは随分じゃないか」
「傷は癒えました?」
「あぁ。いきなりもろクリティカルを狙ってくるとはなぁ」
「目障りですね。その猟奇的な目。何、別に私は怒っているわけじゃないんですよ。ただ、あなたみたいな世間を知らないくせに綺麗事並べてくるやつが吐き気がするほど嫌いなだけです。」
「わがままだな。責任者に申し訳ないとは思わないのか?」
「...思いますよ。両親の都合で押し付けられた私を嫌な顔一つせず迎え入れてくれて、こんな状態でも叱らず傍観してくれる。一応これでも感謝はしてます」
「照れ屋め...!」
「あなたは知っていますか?いつでもかけられていた期待が一瞬にして崩れ落ちていく消失感。どれだけ足掻いても勝てない絶望感。世間からの目。容易く折られるプライド。かけられる優しさすらも、それすらもッッポーズなんじゃないかって思ってしまう自分の醜さッ」
「.......」
「もうほっといて下さい。思春期に正論は水と油です」
少女の訴えはもはや悲痛な叫びに思えてくる。
「...それでも、現実逃避はなんの問題解決にもならないし、こんな生活いつか終わるぞ」
それだけ言ってシエロは早々と立ち去る...前に
「...あ!言い忘れていたが俺の名前はシエロ=エジェリー。お前と同じ照れ屋で引っ込み思案な2歳だ。よろしくなぁ、セラ姉貴」
そう言って今度こそ立ち去る。
「いつか終わる?んなこと分かってんですよ。ばかやろぉ...」
さらっと説教する気が結構長引いちゃった