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多分世界に追われる日々  作者: 高橋 よう
第一幕 多分世界に追われ始める日々
15/23

9逃 今はいいんだ。

「仕方がない事だ」

アレスが自室でそう呟く。

その顔には罪悪感が宿っている。


あの事件からおよそ一週間。

アレスは完全に貴族としての権利を剥奪され、社会の目はより一層厳しくなった。

ステアは以前にも増して幼さが際立つようになった。

断片的に知った他の義兄妹たちは口を閉ざした。

セラは本当に一歩も部屋から出てこなくなった。

ジャックスは死んだように剣を振るようになった。

シエロは完全に結合が終了し、あの様々なチート能力は無くなってしまった。

元の円満だった家族の様子はなくなり、皆の胸の中にあるのはまさしく絶望。あるいは失望。


コンコンコンとシエロの部屋を誰かがノックする。

「シエロ、ちょっといいか?」

声の主はジャックスだった。

「何?」

ドアを開けてぶっきらぼうにそう答える。

シエロが見上げると目にクマを作りながら明らかに無理して笑顔を作るジャックスがいた。

「ど、どうしたよ」

これまでのジャックスとのギャップにシエロが驚く。

「うん。やっと決心がついたんだ。行こうシエロ」

「どこに?」

「みんな集まってる、リビングにだ」


「やぁシエロ。これで全員集まったね」

そう言ってアレスが迎え入れる。

大家族用の大きなテーブルにエジェリーのみんなが座っている。

だが、その顔に笑顔は無い。

 セラもいるのか...

引きこもりが加速したセラも今だけはここに出席していた。

「みんな。集まってくれてありがとう。今回はみんなに話をしようと思って集めた。エジェリー家のこれからと...これまでについて」

ピクッとセラが反応する。

「これまでを説明するにはまず、この魔法を解かなければならない。みんなステータスを出して?」

一斉にステータスの表が現れる。

「...ギフト、解除」

みんなのステータスの名前の部分がバグが起きたかのように震え出す。否、正確にはーー

「みんなのステータスのバグを取り除いた」

そう、バグ(異常)ではなく、修正。


ジャックス=アカリ


ネイア=リコノーア


スカーレット=スラプラ


ステア=アコリアティクス


そして、セラ=エッシャント

「ここは貴族の掃き溜め、」

各々が自分のステータスを見て驚いている中、構わずアレスが続ける。

「王族であるセラの王家勘当を発端として建てられた孤児院なんだ」

 ... あぁ言ってしまった。この秘密は絶対に墓場まで持っていくって決めてたのに。

そう、申し訳ない気持ちでアレスが思う。

「...なんで言ったの?」

セラが泣きながら叫ぶように言う。

「セラ...ごめん...」

目の前の事実を目の当たりにして驚いて声も出ていない。

「...............」

まさに地獄の空気。誰も何も言えない。

「...これは保護者としての監督責任だから、責任は全部私にある。各々の受け入れ先も手配した。だから、エジェリー家はこれで......おしまい...」

今にも泣き出しそうな声色で震えながら言葉をゆっくり紡ぐ。

「...おしまい...なんだ」

「園長...」

「...俺は...俺は反対...です。そんな...あんなことがあったぐらいで家族がバラバラになってしまうなんて...そんなの俺は嫌です...!」

ジャックスが感情ぐちゃぐちゃで泣き叫びながら言う。

「今はいいんだ。でも、いつかここに居たという事実がみんなを蝕む日が来る。だから、だから頼むよ」

アレスの口元が微笑む。自他を安心させるように。

「でも、師匠は、今!泣いてるじゃないか!」

号泣。目元は涙でいっぱいになり、鼻水がダラダラになっている。

おそらくこの場にいる誰よりも泣き叫びたいのはアレスだろう。


「無駄だよ。兄貴」

この場で唯一泣いていない者、シエロが冷たく言う。

「この場に正しさなんてないし、この問いの解も無い」

シエロが席から立ち上がり、ゆっくりとアレスに近づく。

「それでも」

シエロがアレスの手を優しく握る。

「俺が、俺たちが隣にいる。それだけじゃ、泣き止む理由にはならないか?」

握り返されない手を少し強く握る。

「俺は人間が分からないから、これくらいしか方法を知らない。過去がどうであれ、あんたにはもう、手を握ってくれる仲間がいる。...真っ直ぐにあんたを見る家族がいるんだ」

「......」

アレスの涙の勢いが増す。

 ...(イシス)の力で見たこいつの過去、...そりゃ、人間を知れないのも当然だ。

 だから、

「周りが暗くなったら、俺たちがアレスを見てやる。真っ直ぐ、ありのままのアレス=...エジェリーを」

返事はすぐには来ない。

それでも、ゆっくりとアレスの口が開く。

「......私は...いや、俺は何を勘違いしていたんだろうな。こんなに尊い家族が目の前にいたのに手放してしまおうとしていたなんて...。...あれ?なんでだろこんなに嬉しいのに、目から涙が止まらない...」

アレスの目から、鼻から、祝福の涙が溢れ出す。顔全体は笑っているのに、不思議だ。

「...今は一生分目一杯泣けよ」


アレスの溢れ出した涙が床にこぼれる。それでもなお、その解放は止まらない。


気づけばアレスを全員が抱きしめていた。


「いつもありがと」

と、ネイアが

「お疲れ様」

と、スカーレットが

「いつも、いつまでも尊敬してます」

と、ジャックスが

「ステアのせいでごめん〜」

と、ステアが

「まぁ、なんだ。こんな私でも変わらず愛し続けてくれて...ありがと」

と、セラが

「よく頑張ったな」

と、()()()

「これからもよろしく」

とシエロが

それぞれの想いを述べる。

「「「「「大好き」」」」」


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