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多分世界に追われる日々  作者: 高橋 よう
第一幕 多分世界に追われ始める日々
14/15

第8逃 転換

少女は燃え盛る炎の中心にいた。

その様子に焦りなど無く、むしろ見惚れているかのように見えた。

あるいは希望に満ちているかのように。

少女の胸のうちには、たったの四文字の言葉がいつでも駆け巡っている。

『キラキラ』

その固執は凄まじいものだった。

幼少期、あるいは前世か。

燃え盛る炎炎に魅せられた彼女が願ったものはやはり

『キラキラ』

強欲なほどに願ったそれを、神は祝福した。

否、祝福せざるを得なかった。


「これから、ステア=エジェリーのギフト授与を行う」

教会内部、ステアの前に神父が立ち、ステアの隣にシスターが立っている。天井にはでかい鏡のようなものが嵌められている。さながら裁判所のような部屋でギフトの授与が行われていた。

時は教会の爆発の数分前。

「ステア=エジェリー。あなたは神より人として生を受けてから八年が経過しました。よってステアエジェリー。あなたにギフトを進呈します」

「ではステア様、あなたが求めるギフトを想像してください」

そう、シスターが言い、続ける。

「あなたが好きなもの。なりたいもの。情景や憧れ、根幹にあるものを公開のないように吐き出してください」

そんな事を言われれば、ステアの答えなど決まっている。

「じゃあ、ステアは『キラキラ』が欲しい」

そう言って、祈りながら目を瞑る。

「............了解しました」

無機質な声が聞こえ、ステアがハッと目を開けるが、そこには神父とシスター以外誰も居ない。

「...神からのお告げが聞こえましたか」

神父が冷静に言う。

「それでは、ステア様、ステータスをオープンしてください」

「?う、うんステータスオープン!」

ステアのステータス表が出てくる。

瞬間だった。ステアの周囲を起点とし、大爆発が起こったのは。


アレスがステアを見つけた時、ステアはぐったりと倒れて眠っていた。

教会は立派な建物が見る影もないくらい粉々になっていたため火や瓦礫、ガラスの破片などに気を付けさえすれば捜索はどうってことなかった。

鎮火もすぐに終わった。

幸い怪我人はいたものの死者はおらず、その怪我人も派遣された救助隊の治癒魔法によって完治した。

これで一件落着...とはいかないのが世の中だ。

ただでさえ既に貴族を剥奪されたことで、悪名が立っていたのに、今回の件でさらに悪名を重ねることになった。


『エジェリー家は人類の敵だ』


この瞬間からそれが世論となってしまった。



「それで、結論は着いたか?」

「あぁ、勿論だ」

夢とは何か。

今まで蓄積されてきた記憶を脳が処理をする時間だとかに日中の予行練習だとか、予知夢なんて能力を持っている生物もいる。

だが、そのメカニズムは現段階ではよく分かっていない。

では、夢とはー

「よう、約束どおり話に来たぞ。...肉体(シエロ)

「待ってたよ。(イシス)

平行線の魂と肉体が両方存在することが出来る唯一の空間でもある。


「それで?決まったってとっていいのかな?」

シエロに格好がそっくりな男の子が少し大人びた口調で言う。

「勿論だ。そのために来たんだ」

今度はイシスにそっくりな男性が少し若々しい落ち着きのない口調で言う。

真っ暗で閉鎖的な空間。そこには本当に二人だけしかいない、いらない。

「それじゃ、聞かせてもらおうか?(イシス)?ま、君の事だし主導権は君が握るのかな?」

「いや。主導権は肉体(おまえ)でいい」

「へぇ〜本当にぃ?」

シエロの目に好奇の光が灯る。

「最初っからこれで良かったんだ。肉体が主導権を握ることで(おれ)という存在を限りなく減らす。そうする事で気づかれる心配を無くす...」

「いいんだな?それは単に自由を無くすとかそう言う次元じゃないんだぞ。能力がなくなるし、人格もお前がお前じゃ無くなるんだぞ」

シエロが諭すように言う。

「それは肉体(おまえ)だって同じだ。後は神様の言う通り、だ」

「......」

「だが...そうだな...」

イシスが上を見上げながら続ける。

「一度だけ...一度だけ時間をくれないか?(おれ)(おれ)でいられる時間を」

「それは、ただの悪あがきか?それとも...」

「ただの悪あがきだ」

シエロの話を遮ってイシスが言う。

「ふーん。ま、いいよ。後は肉体(おれ)次第か」

「...時間だな」

イシスの体が下から透け始める

「あぁ。そろそろ目覚める。(おまえ)の覚悟を問おうと思ってたのに俺の方が覚悟を決めるみたいになってんじゃねぇか...」

「ありがとうな」

半分透けた腕でイシスが握手を求める。

「じゃあ...」

シエロがそれに応じる。

「数年後、それと数十年後の未来でまた会おう」

「...神眼かよ......!...?」


シエロが目を覚ました場所は孤児院の自室のベットだった。

窓を見ると相変わらず園長とジャックスが修行している。

だが、二人の様子は普段とは少し異なり、ジャックスは切羽詰まったような顔で、アレスは心底絶望したような顔をしている。

掌をギョッと握ってみる。

「ちゃんと...終わったな」

ここでそう思っているのは(イシス)ではなく、肉体(シエロ)である。

「何年後...か」

そう言って、あるかもしれない彼方に眼を向ける。

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