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多分世界に追われる日々  作者: 高橋 よう
第一幕 多分世界に追われ始める日々
13/23

7逃 英雄の背中

教会が爆ぜて燃え始めてから数分。

炎は依然燃え盛り、紅蓮の炎が教会全体を飲み込んでいく。

もう既に教会は半壊し、当時教会に居た人間の関係者の悲痛な叫びが広がる。

野次馬も随分と増えてきた。


「ジャックスはみんなを連れて避難してくれ」

そうアレスがジャックスの耳元で囁く。

「師匠は...?」

「もちろん、ステアを助けに行く」

「ッッッッ...」

 また...何も出来ない。

「ジャックス、大丈夫だ。その強い後悔が、いつかお前の力になる」

そう言ってジャックスを抱きしめる。

「どうでもいいけど、早くしたら?」

「...シエロ...?」

ジャックスが義弟の変わりように驚く。

 ...ッまた肉体に引っ張られてしまった...って今もか?

「そうだぜ?アレス。多分、あれはヤバい」


『ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン』


さっきよりも一際大きい爆発の怒号が鳴り響き、瓦礫が吹き飛ぶ。

「ルエ。最悪の事態を想定して、お前に避難誘導と人命救助を頼みたい。...それなら使う必要もないだろ?」」

「あぁ、悪い」

そういい、ルエが大きく笑う。

「では、頼んだぞ!」

刹那、全員の視界からアレスが消える。

「園長消えた!?」

シエロが驚く。

「足に思いっきり力を入れて地面を押すことで、爆発的な初速を生み出しているだけだよ」

いつもの調子を取り戻したジャックスがすかさず解説する。

「悪いが自己紹介は後で...よっと」

ルエがシエロを持ち上げ、担ぐ。

「おお軽い。悪いがちびっ子2は自力で走ってくれ」

「はい」

ルエが大きく息を吸い込み、叫ぶ。

「野次馬の人達ーー!ここは危険だ!逃げろー!」

だが、野次馬は退く姿勢を見せない。

 ...全くこれだから人間は

ルエに運ばれているシエロが口には出さずに思う。

 ・・・それはお前のか?

 ...は?

 ・・無駄だよこの兆候は見えてたでしょ

 一瞬だ。一瞬だけ、時間をくれ

 ・へー。ま、いいよ

「シエロ?」

さっきから一言も発さない義弟にジャックスが心配の一言を投げる。

「すまんな、ジャックス」

 もう駄目だ。

シエロがジャックスの方を向く。

その顔は何かを悟ったようで、何かに対して覚悟決めたような、ぎこちない笑顔だった。

「シ...エロ?」


『ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン』


教会が三度目の怒号をあげ、弾け飛ぶ。

その破片の一部。ほんの数センチにも満たないような小さな破片が、野次馬の一人の眼球を...貫通した。

瞬間、周辺の人々の悲鳴が響き渡る。

パニック状態に陥り、我先にと逃げ出す。

それまで止まっていた人間が急激に動き出すとどうなるか。

生存本能剥き出しで駆け出した人々は、人と人との些細なぶつかりで容易に転ぶ。

さながら渋谷のハロウィンのように。

転倒が転倒を呼び、その下敷きとなった人はもちろん圧迫死する。


「びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん」


泣き叫ぶ子供の声。

大人たちの逃げ、本能のままの必死の抵抗は子供の心からの叫びを無にする。

それでも子供にできる必死の抵抗。

その声をジャックス=エジェリーは聞き逃さない。

「ルエさん。申し訳ありません。シエロは少々疲れて眠ってしまったようです」

「おいおい。まさかとは思うが...」

「すみません。シエロを、後を、頼みます」

瞬間、ジャックスが消え、既に泣き叫ぶ子供を優しく抱き抱えていた。

 すいませんルエさん。すいません師匠。これが今の僕にできる精一杯です。ステアとシエロを頼みます。













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