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多分世界に追われる日々  作者: 高橋 よう
第一幕 多分世界に追われ始める日々
11/15

第五逃 緊張と緩和

勘違いしてほしくないのはシエロ=イシスが苦手なのは泣いてる子供じゃなくて臨機応変な対応が求められる場面ってことです

「ステア誕生日おめでとう!」

「ありがとーー!」

ステアが満面の笑みでにっこりする


今日はステアの誕生日である。

この世界には誕生日にプレゼントを渡すような文化はないが祝う文化はある。

「これで遂にステアも8歳だな」

「8歳といえば教会だな」

「教会?」

ケイルの文化を知っている者達で話が弾む中ケイルのことを知らないシエロが疑問をかける。

ちなみに『1歳だから喋らない』は普通に喋りまくったらゴリ押しでいけた。

「8歳になったらギフトを神様から賜るんだ。だから教会に行くんだ」

と、ジャックスが優しく説明する

 ...やっぱ兄貴は頼りになるな。

なんてシエロが思っていると

「そんなに興味があるんだったらこれからステアとジャックスとシエロで教会に行ったらどうだ?」

アレスが爆弾発言を落とす

教会というのは神との繋がりが深いので元神のシエロもといイシス今最も行きたくない場所である。

つまり、

「いや、大丈夫。社交辞令とかじゃなく本当に」

こんな感じに速攻で拒否するのは当然である。


「そう不貞腐れるなよ」

「そうだよ。はい、キラキラ見て元気出して」

ステアはそう言って首から下げている砂の入った瓶を服から取り出し、シエロに見せる。

「こんなので元気が出たら苦労しねーよ」

「なんだと!」

「まぁまぁ」

ケンカが始まりそうになった二人をジャックスがすかさず牽制する。

結局教会に行くことになったシエロは思いっきり不貞腐れていた。

 まぁ、他の神と会うことさえなければいいか

なんて諦めているとシエロの頭にふと一つの疑問が浮かぶ。

「なぁ兄貴、ギフトって何なんだ?」

「あれ?説明してなかったっけ?」

「実際ステアもよく理解してないんだよねー」

「えっとギフトっていうのはね。神様が我々人間にくださるありがたいもので、それが何だろうと仕事に就くことにとっても役立つんだ」

「「?」」

まだよくわかっていない様子の二人にジャックスが補足の説明を入れる。

「ギフトはその人にとって唯一無二のものなんだ。でも、その人のステータスの中の何に干渉するのかはわからないんだ。スキルとして追加されるのか、称号としてなのか、それとも加護なのか、何なら職業に直接くるのか。ま、それは誰にも分かんないんだけどねっ」

ははっと笑う。

「おっ、そんなこと話してるうちに着いたよ。二人とも」


教会の入り口付近でシエロが最後の抵抗を始める。

「なぁ、兄貴、本当に俺も教会に行かなきゃダメなの?」

「園長先生がステアを連れて教会に行ってくれるんだったらいいんだけど用事があるって言ってどっか行っちゃったし...いくらシエロがしっかりしてるからといっても俺が見てないと。心配だし」

「.........いや。今更か」

「?」

「ねぇー早くぅー」

ステアが二人を急かす

「ほら、ステアが待ちかねてるから、行くよ」

「じゃ、じゃあ俺、そこで待ってるから」

教会の隅っこを指差す。

「んー本当にそこにいてね。なるべく早く戻るようにはするけど」

「うっすー」


「よーし、とりあえず一人にはなれたな」

教会の隅っこにあぐらをかいて座る。 

 まぁ、どこに神がいるかわからない以上、あまり下手に動くのは得策ではないな。

 年齢らしく、虫探しでもするかな

すぐ側の茂みで虫を探し始める。 

 こっち(ケイル)に来てから一年...か。

 『魂と肉体の結合』が激しすぎて自分の元の人格を覚えてるか心配になってきたな。

 ま、記憶がないのは別に今に始まったことじゃないか。

そう思い、笑う。

 しっかし、全然居ないな

まだ虫を探してから10分程度しか立っていないがもう飽き始めている。

シエロは知らないが、教会の周辺にはちょっとした結界が張られていて、苦手な人に配慮して虫は入ってこない仕組みになっている。

つまり、虫なんて見つかるはずがなく、もし見つかったら大問題である。


シエロが一人になってから約20分。

とうに虫探しは辞めていて、ただぼーっとしている。

と、その時、茂みからガサガサと音が聞こえてくる。

 大型の虫か?

なんてシエロが思っていると、

「ふぐぅぐふぅ」

と少女が泣きながら茂みから出てきた

「ひっ」

と、情けない悲鳴がポロッとシエロの口からこぼれ出る。

 んななんなななななんななななんななななななななななんで人間が茂みから!?

 てってていうかなんで泣いてんのだよ!

「ああああああああああああっとととっととととと君!名前は!?」

テンパリすぎてゴミみたいな切り返しをしたシエロに対し、少女が驚きつつ、泣きながら答える。



〜王城〜

高い天井と長い廊下、壁にはいかにも高そうな美術品が並んでいる。

そこにつかつかとアレスが歩き入る。

「あれが噂の...」

「あぁ、『英雄になれなかった男』だ。確か今は流刑で森の奥の方で暮らしているのではなかったか?」

「なぜ今更王城に?」

「謎ですな」

着飾った貴族に陰口を叩かれるがアレスは眉をひそめるだけで気に留めない。

格好もいつもと違い、表情には緊張と少しばかりの怨念が混ざっている。

やがて扉の前につき一呼吸挟んだ後扉を開ける。

ギィィィと古い音が響きわり扉が開く。

数歩進み、述べる。

「我、アレス=()()()()。我が王の御前に」

「うむ。登城御苦労であった」

園長もといアレスもといアレス=プライムが跪く。

対する男は厳格を体現したような顔の王様。程よく筋肉の付いた体に厳しい目つき、来るものを寄せ付けないオーラを纏っている。

「恐れながら我が君。シャルル=エッシャント様。久々である此度の登城の理由をお教えいただいてもよろしいでしょうか?」

「そうか。気になるか」

「恐れながら」

「我が愛娘が最近聖女修行に励んでおってな。必要があればそちらに預けている我が愚娘を呼び戻し、世話をさせようかと思ってな。今日はその連絡...と」

男もといシャルルが立ち上がり、アレスに近づいて続ける。

「先日勝手に新たな孤児を迎え入れた愚者に処罰を与えねばと思い呼んだまでよ」

「左様でございますか」

シャルルが王の圧をかけるが、アレスは微塵も動じない。

 動じないのはいつも通りか。

とシャルルが思う。

「...王女様でございますか。確か名はー」

 

「ふぐっソラ=ひぐぅエッシャントぉぉぉぉぉ」


その名を言った後、

「うむ。相違ないな」

王城では引き続き緊張が、

「あ、あああああ、ああぁぁぁあぁ!そうか!いい名前だな!」

教会ではまだまだテンパっているシエロが威勢の良い相槌を打った。

チュートリアル

『魂と肉体の結合』

今まで魂に蓄積されてきた記憶をリセットして肉体に馴染ませるものの事

本来前世の人格は輪廻の輪に乗る際に無くなる(記憶は無くならない)のだが転生は人格が残ってしまい、肉体の人格とケンカが起こってしまい、人格が不安定になるので、シエロ=イシスは少し年相応になっている



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