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現役竜王、人間界に堕ちちゃったw  作者: ワスレナグサ
2/3

2 市井の人々

ロシュフェルト男爵家はレオンハート王国の東端に位置するライデン地方を治める領主である。

領都であるライデン町をはじめ8つの村を統治している。

レオンハート王国の東隣は魔物の住む森、通称「魔の森」が広がり、その更に奥には竜が住んでいるという伝説のあるストラティア山脈が続いている。

たまに村を襲うモンスターを退治する他は大きな争いもなく平穏な土地であった。


「父上、家はなんで竜王さまを信仰しているの?」


食事が終わる頃を見はかり我は父に問うた。


「うむ、シリウスも昨日5才になったから今日からベアトリスに勉強を習ってみるか。」


詳しいことはベアトリスに聞けということか。

ベアトリス・ファウストは祖父の代からロシュフェルト家の家令を務めているドワーフ族の女性で兄と姉の家庭教師もしていた。


「ありがとうございます父上」


食事を終え自室に入り暫くするとドアをノックする音がした。


「入れ」


「失礼しますシリウスさま」


そう言って入ってきたのはベアトリスだった。


身長160センチ、現役の戦士と見紛う筋肉に全身を包まれた『THE・ドワーフ』がそこにいた。

父から家庭教師をするように言われてきたのだろう。


「本日よりシリウスさまの家庭教師を承りました。よろしくお願いします」


慇懃に頭を下げる。


「こちらこそよろしく」


「早速ですが今日はこのロシュフェルト家の歴史を勉強していただきます」


我の座っていた席の向かいに座ると、ベアトリスは講義を始めた。


ロシュフェルト男爵家は祖父が興した家で、当時王国内で起こっていた王位継承を争う内乱にヴァルフレード公爵家の一般兵として参加し、敵の総大将デレク・レオンハートの首級を挙げる武功を立てた。

その後に即位したカール・レオンハート王から男爵に叙爵され現在に至る。

ちなみにベアトリスはこの内乱の時に祖父と共に戦った戦友で、叙爵された時にウチに仕えたそうだ。


竜王ヨルムンガンドをあがめているのは、主筋であるヴァルフレード公爵家に倣ったもので、ロシュフェルト家自体が竜王と何か縁があるわけではないんだそうだ。

それはそうだ。我人間と関わった記憶がない。ロシュフェルトどころかヴァルフレードすら聞いたことのない名だ。竜王ともなれば名が独り歩きするもの。偉大だからな。


「シリウスさま。今日はここまでにしておきましょう」


ベアトリスに言われ時計を見ると11時を指していた。

9時から始めたから3時間勉強していたことになる。


「ベアトリス、質問があるんだがいいか?」


「何でございましょう」


「男爵家の三男は将来何をすればよいか?」


「男爵家の家督は嫡男のリゲルさまが継がれることになります。次男のバランさま、三男のシリウスさまは勲功を立てて分家または独立するか、騎士団に入るか軍人になるか。冒険者になることも選択肢としてはありましょう」


「宮廷魔導師という選択肢はないのか?」


「畏れながら当家で魔術の適性があった方はどなたもいらっしゃいませんでした」


「魔術適性はどうやって測るのだ?」


「簡単な測定でしたら当家にもある『魔水晶』で測ることができます。魔水晶に触り光れば適性があることが分かります」


「そうか、やってみたい」


「それでは準備してまいります。しばしお待ちください」


「アイシャいるかー?」


「お呼びでしょうか?」

食い気味にアイシャが現れた。


「お前は魔力適性があるのか?」


「調べたことがないから分かりません」


「そうか。ではここで控えていろ」


「かしこまりました」


アイシャはキョトン顔をしている。

我は竜王故に途轍もない魔力を秘めているのが道理だ。だが我だけでは測定器の不具合で片付けられかねん。そこで当て馬、アイシャの出番という訳だ。

初めにアイシャが測定する。腐ってもエルフ。幾許かの光を放つだろう。そして!真打ち我登場!測定するや否や部屋全体が光に包まれ水晶が爆発四散することだろう。


「ーーーーーま?」


「シリウスさま?」


「なんだ?」


「ニヤニヤされている間にベアトリスさまの準備ができました。」


「う、うむ。では始まるか。アイシャ、やれ!」


「私ですか?」


「そうだ。いいからやれ!」


おずおずと水晶に手をかざす。すると水晶がかなりの光を放ち出した。


「おやおや、アイシャは魔力適性があるようだね。この光具合だとBかCといったところか」


「シリウスさま!アイシャやりました!!」


ぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。


「魔力適性と胸の大きさに因果関係がないのか。はっ?若しくは小さいほど魔力適性があるのでは?」


「シリウスさま?」


ビキビキした顔で睨んでくる。

「怖い顔しても元が愛らしいから怖くないな」


「え?何を突然………」

今度は真っ赤になって身を捩っている。忙しい女だ。


「さて、次は我がやるか。」


そう言って水晶に手をかざすとーーー水晶が赤黒く変色している。


「なあこれーー」言いかけるや否やベアトリスが水晶を掴み窓の外へと放り投げた。


水晶は屋敷から150メートルまで飛んだところで大爆発を起こした。


「ドッカーーーーーンンッ!!」


爆風で窓が揺れる。


「あたしゃー旦那様に事情を説明してくるー」


脱兎の如くベアトリスが走り去った。


「アイシャさっきの何?」


「爆発しましたね?エクスプロージョンていう魔法??」


「あぁ、現代魔法か」


そとを見ているとウチの護衛騎士アキームとアルフォンスが兵士を連れて爆発現場へ向かっていった。

それをボーっと眺めているとドアが勢いよく開いた。


「シリウスーーッ!!」父のカストルだ。


「どうしました父上?」


「さっきの爆発はどうやった?あれは火属性第6階梯魔法のエクスプロージョンだぞ?数十人の魔道士が魔法陣を描いて長時間詠唱しなければ発動しないんだぞ!」


「え?魔水晶に手をかざしただけなんですが」


「そ、それだけで……」


カストルは泡を吹いて倒れた。


-----------------------------------------------


領都ライデン

城壁に囲まれた町、中央の高台に領主ロシュフェルト家の屋敷がある。町には教会や冒険者ギルド支部、宿屋に鍛冶屋、道具屋など一通りのものが揃ってはいるが、辺境の地下なのでそれほど人口は多くない。


「たまには町へ繰り出してみるか」


サクッと平民が着てそうな服に着替え外出の準備をする。


「シリウスさま」


アイシャがジト目でオレを見る。


「どちらへ行くつもりで?」


「どこへも行かないが?」


「ですよね!先日の爆発騒動で謹慎中ですものね?」


「うむ、今日も謹慎してるよ」


「ならよろしいです」


そう言うと部屋から出ていった。


馬鹿め我が易々と外出を諦めるとでも?そもそも竜王に謹慎せよとか不遜だからね?


窓から飛び降りて屋敷を出た。


「さて最初はあそこへ行くか」


そう我は冒険者ギルドに興味があった。ゆくゆくは我も冒険者になるかもしれないからな。今から知っておくのも悪くない。


冒険者ギルドは屋敷から東に行った城門付近にある。

魔の森へのアクセスが良いからそこに作ったのだろう。


ギルドに着いた。

屋敷に比べると貧相な建物だ。築30年と言ったところか。

二階建てになっていて外壁は土壁、屋根は木材で赤色に塗装されている。


中に入る。ーー臭い。汗と血とすえた匂いだ。これは長時間いられそうもないな。

入口から辺りを見回す。筋骨隆々ないかにも戦士といった男どもが眼光鋭く我を睨め付けてくる。我も舐められたものだ。

ちょっと脅かしてやろう。

我は『威圧』スキルを使用した。一瞬で全員がその場で倒れた。

受付に移動すると受付嬢も泡を吹いて倒れている。

一階は全滅か。

我は二階へ移動する。

二階はみたところギルド職員以外はいなそうだ。ここも全員が失神していたので確かめられないが


「やれやれ、何しに来たかわからんな」


ぶらぶらと内部を見学してギルドを後にした。


「ねえ、冒険者ギルドで何してたの?」


ギルドを出た途端に人間族の子供から声をかけられる。


「見学してただけだよ」


「どうだった?」


「キミたちも見てみるといい。中の大人は皆んな寝ているから」


「見たい見たい!あっ、あたしはメイ、こっちは弟のメロ。よろしくね」


「ボクはシリウス。じゃあ行こう」


「ねえ、このおじさん寝ながらオシッコしちゃってるよー?」


「大人もオネショするんだな」


我は魔法のペンで失神している冒険者の顔に落書きをしながら答えた。


「何してるのー?」


「このおじさんカッコ悪いから綺麗にしてやってる」


「あたしもやるーーー!メロもやろ!!」


3人で一階にいた冒険者全員に落書きをしてやった。


「よーし!良いことしたらお腹すいた。ご飯食べに行こ?」


「メイ?どこへ行くんだ?」


「あたしんちーー」


取り敢えずついて行くことにした。


丘の上にある寂れた建物に着いた。

建物のてっぺんには十字に丸い輪がかかったものが刺さっている。何かの目印だろうか。木造建築の建物は屋根が青く塗られ壁は漆喰で固めたのか白くなっている。何年ものであるかはわからんが至る所に素人が補修した痕跡が認められる。


「ここがあたしたちのウチーー!教会だよ!」

メイが声高らかに宣言する。


そうか、これが教会というものか。教会なるものは孤児を保護して育てる施設もあると習ったがメイとメロはもしかしたら孤児なのかーー


「し、シリウスくん早くおいでよ」

声のする方を見るとメロがおずおずと小さな声で我を呼んでいる。自然と柔らかな笑みが浮かんでくる。


「あぁ、いま行くぞ」

教会の中へと入って行った。


教会に入ると黒で統一された服を着た女が立っていた。


「シルビア教会へようこそ。私は修道女シスターのベルファイン、皆んなからはベルって呼ばれているわ。よろしくねシリウス」

ベルファインと名乗った女はスカートの端を少し持ち上げ貴族風の挨拶をした。


「もう名を知っているようだが我はシリウス・ロシュフェルト。ライデン領主の三男だ」


メイとメロが驚きの声を上げた。


「ロシュフェルトだって?シリウスってば貴族さまだったの!?」

「シリウスさま無礼をお許しください」


姉弟での反応の違いに可笑しくなり思わず笑ってしまった。


「あら?笑うと年相応な顔ができるのね」

ベルがニンマリとする。


ベルは細身の背の高い色白な女で漆黒のような黒い髪を肩まで伸ばしている。一見するとエルフにも見える美貌だが耳が尖っておらず何よりオッパイが大きい。

このことから客観的に判断するとベルはエルフではないことがわかる。アイシャのペタンコおっぱいを見慣れている我の目に狂いはない。


「あら?どこを見てるのかしら?もしかしてそっちはもう男の子なのかな?」


女は身体に刺さる男の視線が分かるという。我が本当にヒューマンの子どもならばここで顔でも赤らめるのだろうが


「デカいおっぱいをみるのは久々なのでな。ついつい見惚れてしまったわ」


「お褒めに預かりありがたき幸せにございます」

ベルは優雅に会釈をしてみせる。


「さて、冗談はさておきここには何人くらい子どもがいるんだ?」


「メイとメロを含めて18人おります」


「何か不足なものがあれば屋敷から遣わすが?」


「若様がたまに遊びにきていただければそれで結構でございます」


領主の息子とはいえ初対面だからな。ある程度警戒されるのも無理はないか。


「ところで昼飯をご馳走になりに来たのだが」


「これは失礼しました。すぐに準備してまいります」


「「「いっただっきまーっす!!!」」」

子どもたちの唱和が炸裂した。

テーブルの上には見るからに硬そうな黒い塊と濁った水?が皿に入って鎮座している。

えっこれ食べ物か??


「ほら、シリウスくんも遠慮なくどうぞ」

シスター・ベルに促されて恐る恐る黒い塊を口にする。


「むむっ!?これはパンか??パンの割には随分と防御力が高いではないか」

我はこのような硬いパンは初めて食した。


「あれれーおかしいな?シリウス君は庶民の味方『黒パン』は初めてかい?」

シスター・ベルがどこかの少年探偵団のような口調で揶揄ってくる。

「うむ、我はこれより貧弱な防御力のパンしか食べたことがない。裕福な家ではないのでな」

貴族だとバレないように嘘を吐くのも王者の嗜みだ。


「ふ~~ん」

メイとメロは黒パンをスープに浸して食しながら相槌を打つ。

「そんな柔いパンはお貴族さまくらいしか食べられないんだけどねえ?」

シスター・ベルはニヤニヤしている。

我は竜牙ドラゴン・トゥースで黒パンをバリバリと嚙み砕き食べた。

「うむ、良い味をしているな。」

「あ、あんた?一体何者だい?」

目をまん丸くしたシスター・ベルが尋ねた。

何か不審なところがあったか?


ドカーーーーーーーーーーーーーーッン!!

入り口の扉が吹き飛んだ。

「「「キャ――――――っ!!」」

女の子たちが堪らず悲鳴を上げる。


「お食事中すいませんねえ?」

下卑た声とともに男たちが現れた。

人数は……14人か。

リーダー格と思しき男は浅黒い肌をしており身長が2m近くある。筋骨隆々としていて、背には大剣グレートソード、腰には小剣ショートソードを差している。


「シスター、また来ちゃった♡」

「リチャード!何度来ても金なんかないよ?」

シスター・ベルは集団のリーダー格、リチャードに吐き捨てるように言った。


「メロ、あいつは何者だ?」

「は?俺様のことを知らないガキがいるのか??」

割と大きな声で尋ねてしまったので本人が反応してしまった。

「いいぜ~教えてやろう!俺こそは元カショク聖王国七将軍の1人、スタイン・スチュワートが次弟リチャード・スチュワートなるぞ!!!!」

リチャードの大喝で子どもたちはギャン泣きし始めてしまった。

「ギャー――――はっはっはっはっは」

泣き叫ぶ子どもたちを見てリチャードは大笑いしている。


「シスター、金よりも良い方法を思いついたんだ」

「なにっ」

「シスターのその男好きのする身体は金になりそうだよなー?」

「アニキ―!売る前に味見しましょう!!」

リチャードの手下が下劣な野次を飛ばす。

「そうよなー?じゃあ俺が一番先に……っん?なんだテメェ??」

「茶番はもういいか?さすがに見飽きたわ」

我、そういい放つや否やリチャードの額にかる~くデコピンを当てる。

リチャードがすっ飛ぶ、眼で追えたのは我だけであろう。

巨体が手下にぶち当たりながら入り口から外へ向けて飛んで行った。

「ゲスが。二度と来るなよ?」

残った手下どもににらみを利かせるとリチャード一党は一目散に逃げて行った。


「ねえねえ、今のなんてスキルなのー?」

メイとメロが目をキラキラさせて我を見ている。

スキル?スキルか。この世界のヒューマン族は神から天啓を受けて『スキル」を授かるんだったな。

我まだスキル貰ってないんだが…どうしよ?


「あれはな我が家に伝わる秘拳の1つ『竜王指弾撃デコピン』という技だ」

「すっごーーーい!!シリウスってちょー強いんだね!!」

メイが興奮している。

「シリウスくん、ボクを家来にしてください。」

メロはとち狂っている。


その後、やんややんやと子どもたちから質問攻めに遭い、すっかり日が暮れてしまった。

「シリウスさま、今日はもう遅くなってしまいましたので是非教会にお泊りください」

シスター・ベルは恭しく我に申し出た。

我の正体を察したか?

「うむ、そうするとしよう」

我ももう眠くなっていた。


夜明けとともに我はメロに起こされた。

「シリウスさまー大変です起きてください!」

「…なにごとだ?」

眠い目を擦りながらメロに訊いた。

「敵襲です!」

我は素早く身支度をし教会の入り口をでた。


そこには武装した兵300が教会の敷地を取り囲んでいた。

「少年!お前がシリウスかっ!?」

隊長と思しき人物が我に話しかける。

その人物は騎乗しているため正確な背丈は分らないが2mくらいか。

プレートアーマーを身に纏い奇妙な槍を手にしている。

その槍は刃の部分がナタのようになっていてかなりの重量がありそうだ。


フェイスガードが開かれて素顔が見えた。

「我こそはスタイン・スチュワート!!昨日は弟が世話になったな」

その顔色は赤黒く、眼光は鋭く人を射抜くようだ。

「なにをしに来た?」

我はスタインというヒューマン族に問うた。

「知れたこと。武門の穢れを祓いにきたのよ」

「部門の穢れ?」

「我が一族は『武』に誇りを持っている。その武の1人であるリチャードが君に負けた。借りは返さねばならない」

「ようは我を倒しに来たのか」

「もはや問答無用!弓隊かかれ!!」


300の兵から一斉に矢が放たれた。

クロスボウではなくより殺傷力のあるロングボウだ。

並みのモンスターならば一たまりもあるまい。

我は矢があたるに任せてスタインに向かって歩を進めた。

矢は我に当たると爆ぜて地に落ちた。


「化け物か!?騎馬隊突撃!!」

弓を捨て騎馬兵をなった300が我に襲い掛かってくる。

そういえばロングボウを騎乗したまま打っていたな。珍しい兵科だ。

感心していると間近に騎馬兵が迫ってきている。


「殺すのは簡単だが…な」

我は軽く『威圧』をした。

バタバタと人馬が地面に崩れ落ちた。


「なんと!我が兵がこうも容易く全滅するとは!」

スタインはそういいながら下馬し槍を構えた。

がすぐに槍を放り出した。

「私の負けだ。煮るなり殺すなり貴殿の好きにせよ」

「ほう…感心なことだ」

我の目が鋭く光る。

「ただ1つ頼みがある。」

「なんだ?」

殺す動作を制止された我は不機嫌に訊く。

「我が兵の命は助けてくれ」

・・・・・

「ならば誓え。この教会に二度と手を出さないと」

「武人の誇りにかけ誓おう」

「約定は交わした。迅く去れ」

もはやスタインを殺す必要もあるまい。

「嫌でございます」

「なに!!?」

さすがに我もイラっとした。

「ここで全員死にたいと申すか」

「ここで全員貴殿にお仕えしたいと申し上げます」

「おぬしカショク聖王国に仕える将軍ではなかったか?」

「『元』将軍であります。いまは天下を流浪の身、貴殿のようなお方を探しておりました」

「戦闘中に頭でも打ったのかこやつ?我はまだ10才の少年ぞ?」

「人の器に年齢の大小など関係ありませぬ」

「しつこいやつだな。好きにせい」

「有り難き幸せ」


シリウス・ロシュフェルト、齢5にして私兵300の長となる。

副官スタイン、その弟リチャードも配下となった。


「そういえばお前たちの素性を詳しく聞いてなかったな?」

「私はスタイン・スチュワート、スチュワート子爵家の長男でカショク聖王国では将軍として騎馬兵8千を率いてました。」

赤黒い肌の偉丈夫、スタインは兜を脱ぎ黒く艶やかな長髪を風に靡かせながら答えた。

貴公子風の見ごたえのあるイケメンだ。

「俺はリチャード・スチュワート、スチュワート子爵家の次男だ。操兵では負けるが一騎打ちでは兄貴より強いぞ」

浅黒い肌の偉丈夫、リチャードは黒い短髪にギョロっとした目を大きく見開き大笑いしながら答えた。

盗賊の大親分といった風貌のリチャードは得意そうだ。

「まて、リチャード。私がいつお前に負けた?」

「兄貴は俺に勝ったことがない。つまり俺の方が強いって寸法さっ!!」

「それを言うならお前も私に勝ったことがないではないか!?」

「じゃあここでケリをつけてみるか??」

「私の武を主にお見せするいい機会だ。受けてたとう!!」

兄弟ケンカが始まろうとしている間、我はシスター・ベル、メイ、メロたちに囲まれていた。


「シリウスさま!あなたは一体何者なのですか?」

シスター・ベルが恐る恐る尋ねる。

「我か?我はライデン領主カストル・ロシュフェルト男爵の三男、シリウス・ロシュフェルトである」

「領主さまの御令息!?お貴族さまじゃないか!!」

「しかし我が領で孤児とは言えこのような生活を送っている者たちがいるとは…。父上の庇護下に入れるように取り計らおう」

「嫌でございます」

シスター・ベルが予想外の答えを口にした。

「我が裁定が不服であるか?」

「私たちはシリウスさまの庇護下に入りとうございます。

「「「入りとうございます」」」

子どもたちも唱和した。意味わかってるのかな?

「しかし我は三男でなんの権力もないぞ?」

「それでもシリウスさまが良いのでございます。何卒…」

・・・・

「仕方ない。たった今からお前たちは我が名をもって庇護することとする!」

「「「「やったーーーーー!!!」」」」

シスター、子どもたちが一斉に歓声を上げる。

さてさて、これからどうしたものかのう…

遠くで繰り広げられる兄弟ケンカを見ながら我は思案に暮れた。



シスターたちを教会に残し2日ぶりに屋敷へ帰る。

我が家の兵たちが陣形を作って出迎えている。

「??? 戦支度などして何事か起きたか?」

よく考えたら300の兵で事前連絡なく帰宅しようとすればこうもなるわいな…

「ここはひとつ斥候をだして様子を窺いましょう」

スタインが冷静に進言してくるので採用した。

「じゃあここは俺がいくぜ?」

「バカな!?お前が行っては戦になるわ!!」

我が陣から2騎が同時に飛び出していった。


暫くして……

アイシャが般若のような顔で単騎、突進してきた。

「坊ちゃまーーーーーー!!!!お覚悟ッッ!!!!」

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