幼馴染クラッシャー
「みんな!今日は私の誕生日を祝ってくれてありがとう!!」
「「おめでとう!」」
「楽しもうな!」
今日は留美の誕生日。
俺達六人は留美の誕生日をカラオケで祝っている。
祝っているのは俺、半田樹、俺の幼馴染の三郎、義明、英人、貴美子、咲。
全員同い年の二十歳。俺だけ大学生で、他の皆は社会人だ。
俺達は幼稚園から中学校まで一緒で、高校時代は多少疎遠にもなったが、高校を卒業してから再び集まるようになり、スノボやキャンプなどいつもこのメンツで行っていた。
留美は三郎の彼女。
三郎が行きつけの小さなスナックで働いていた留美を口説いて付き合う事になった。
三郎は商社の営業。結構な激務だと聞いている。社会人は大変だね。
俺達幼馴染の中に留美が入ってきたのは1カ月前。
今日は皆で祝ってあげようと三郎が言って、集まった。
「こんな私に本当に良くしてくれて、皆大好き!一生の友達に出会えて私本当に幸せだよ!」
大袈裟だなぁと思いつつ、みんなに合わせて拍手を送る。
「ホントに嬉しい!皆に祝ってもらえて今日は生まれてから一番幸せな日だよ!」
ホントかぁ?なんて思う俺はきっとひねくれている。
「いいって!ダチの彼女の誕生日を祝うのは当たり前だろ?」
義明が誇らしげに留美に返事をする。
義明は十九歳で出来婚。奥さんは俺達とあまり合わないので、一緒に遊ぶことは無い。
高卒でデカい工場に就職した。給料はかなり良い。
「そうだぜ?当たり前、当たり前!!」
合わせて肯定するのは、英人。
トラックのドライバーをしており、なかなか給料がいい。
そこそこモテる奴で、今は幼馴染の貴美子と付き合っている。
「そうだよ!もう留美ちゃんは私たちの仲間なんだから!」
英人に合わせるのは貴美子。英人と付き合って一年半くらい経つのかな。
「ね!遠慮なんかいらないからね?」
続いて咲。幼稚園の保育士をしている。
この間彼氏と別れて今はシングルだ。
「そ、そうそう、仲間、仲間。」
取って付けたように合わせたのは俺。
こういう『俺達仲間だよな!』みたいなノリは結構苦手です、はい。
俺は一応同じ大学に付き合ってる彼女がいる。
彼女のアパートが大学の近くで、俺の地元とは結構距離があるため、俺の幼馴染には紹介してない。
まあ、なんとなく彼女を幼馴染の輪に入れるのって俺が嫌だからってのもあるが。
なんか分けたいんだよね。何でって言われると説明が難しいんだけど。
「ホントにみんなありがとうな!俺まで感動しちまったよ!」
三郎が留美の肩を抱きながらみんなに礼の言葉をかける。
お前、そんな奴だったか?気心の知れた仲間の前で感動って…。
やはりこんな感想を抱く俺はひねくれている。
「はー、楽しかった!!みんな今日は本当にありがとう!!一生の思い出になったよ!」
留美がそう言って解散になった。もういい時間だしな。
それから毎週土曜の夜になるとこのメンバーで集まって遊んでいた。
俺の彼女?大丈夫、大丈夫。
平日にお互いバイトの休みを合わせて俺が彼女の家に泊まったりデートしてたから。
そんな風にこのメンバーで遊ぶようになって三ヶ月が経った頃、留美から電話がかかってきた。
ちょうど彼女の家に来ているときだった。
一応彼女には俺がいつも地元で遊んでいるメンバーの事は話している。
メンバーの中に女がいるから一応ね。
「誰から?」
別に悪いことはしていないのに、なんか居心地が悪い。
「いや、いつも遊んでる幼馴染の彼女からなんだけど。」
「え?幼馴染からじゃなくて?」
「うん。三郎になんかあったんかな?」
「出てみなよ。なんかあったら大変だよ?」
三郎に何かあったのか?電話に出てみる。
「もしもし、樹君?」
「ああ、そうだけど、なんかあった?」
「ううん、何かあったとかじゃないんだけど、ちょっと相談したい事があって。」
「相談?何?」
「電話じゃちょっと…。」
電話じゃ言えない事か?
「三郎の事?」
「そうと言えばそうかもしれないし、違うと言えば違うかも。」
なんだかサッパリなんですけど。
「聞くのはいいけど、他に誰か声かけてる?」
「ううん、出来れば樹君だけに聞いてほしいの。」
んーーーー?なんで?
「あー、俺彼女いるからさー、女の子と二人で会うのって勘弁なんだけど。」
「うん、それはわかってるんだけど、どうしても聞いてほしいの。」
「ん-、まあ、彼女に聞いてみるよ。また後で掛け直すよ。」
「うん。お願いね?」
その後、彼女に話してみた。
「それってさー、何か怪しくない?」
「そーだよなー、俺である必要ないからな。」
「樹指定もそうだけど、一人で来いってのがねー。」
「まーな。どーすっかなー。」
「樹の事疑いたくないから、私がこっそり二人を見てようか?」
「ああ、別に構わないけど、電車で一時間半かかるぞ?」
「いいよ、終電無くなったら二人でホテルに泊まろうよ。」
「まあ、それでいいなら俺はいいけど。じゃあ、電話するぞ?」
そう言って、留美に電話を掛ける。
「ありがとう!頼れるのは樹君だけだよ!」
…やっぱり胡散臭いな。
そして、留美との約束の時間、地元のファミレスで待ち合わせをした。
俺の彼女は離れた席に座っている。
「お待たせ!樹君!」
「ああ、まあ、座ってよ。」
「ありがとうね、今日は来てくれて!」
「うん、それはいいんだけど、相談ってなに?」
「あー、うーんとね?三郎の事なの。」
「うん、そうだろうね。」
「ちょっとね?最近三郎が冷たいの。もしかしたら浮気してるかも。」
三郎が浮気?ないない、アイツにそんな甲斐性ないって。
「気のせいだと思うよ?三郎は浮気なんかしないと思う。」
「でも、私との時間を作ってくれないし、エッチも最近してくれないし。」
いやいや、そんな事俺に言うなよ、ってか三郎の下事情を彼女から聞きたくねーんだけど。
「仕事が忙しいんじゃないの?気のせいだと思うけど。」
「でも、私寂しくって…………。」
「三郎に俺から話してみようか?」
「やめて!私が樹君にこんな事相談してるなんて知られたら嫌われちゃう!」
えー、どうしろっていうの?
「けど、俺に出来る事はそれしかないと思うよ?」
「あるよ。樹君に出来る事。」
「何?」
「私が寂しい時一緒に居て欲しいの。ね?だめ?」
…………おいおい、典型的な相談女じゃねぇか。
「ダメに決まってるっしょ。俺彼女いるし。」
「彼女住んでるトコ遠いんでしょ?大丈夫だよ。」
「いや、俺が大丈夫じゃないから。彼女裏切れないし。」
「本気じゃなくていいの。彼女にしてって言ってるわけじゃないよ?」
「何?二人で飯でも食うの?」
「それでもいいし、樹君がしたいならエッチしてもいいよ。」
セフレじゃねーか。
「いや、普通に無理。三郎も彼女も裏切れないよ。当たり前でしょ?」
「三郎の事は気にしなくていいでしょ?だって私に冷たいんだもん。」
「いや、事情はしらんけど、ちゃんと三郎と話し合いなって。」
「どうしてもダメなの?」
「ダメだね。」
「ひどいよ、友達でしょ?」
「友達だから、でしょ?」
「…………そう。このことは誰にも言わないよね?」
「は?」
「だって、こんな事言ったら、三郎と仲が悪くなっちゃうよ?」
「なんだよ、それ。」
「そうでしょ?ね?皆には黙っててね?」
「…………あー、了解。じゃ、今日は何も聞かなかったってことで。」
「うん。じゃあね。」
留美は帰っていった。
彼女が俺の向かいに座る。
「なんだって?」
「俺にセフレにならないかって。」
「やーっぱりな!なんかそんな感じしたよねー。」
「典型的な相談女だわ。」
「うわー、ホントにいるんだね、びっくり。」
「な。さて、どうすっかなー。」
「そだね。全部言っちゃう?」
「いや、ちょっと確認しないと。」
「なにを?」
「俺だけに相談したんかなって。」
「あっ。」
「俺の仲間引っかかってねーだろーなって。」
「あー、確認する?」
「ああ。一人ずつ聞いてみるわ。」
一人ずつ電話を掛けて確認してみた。
アウトでした。
義明も英人もヤっちゃってました。
バカがよー、何考えてんだよ。
しかも、英人は複数回で彼女の貴美子にバレて、絶賛修羅場中。
義明に関しては、バレてない。
もしバレたら離婚になる可能性もあるので、言わないことにした。
一回だけだと言ってたし。ホントかどうかわからんけど。
奥さん、ごめん。俺と三郎と咲で義明のことは〆とくから。
一週間後、俺と咲と三郎、留美で話し合った。
「なあ、留美お前どういうつもりなんだよ?」
「だって三郎、忙しい忙しいばっかりで全然私に構ってくれないから……。」
「それはしょうがないだろ?仕事なんだから。」
「付き合うときに寂しい思いはしたくないって私言ったよね?」
「それにしたって俺のダチに手ぇ出すことねえだろ?」
「だってみんな優しかったから……。」
「ねぇ、留美ちゃん、三郎や貴美子に悪いと思わなかったの?」
「バレなければ大丈夫だって思ったの。」
「続けてたらいつかはバレるでしょ?」
「だって寂しかったから……。」
「もういい。留美とは別れる。二度と顔見せんなよ。」
「……。わかったよ、じゃあね、三郎。」
「ワリい、ちょっといいか?」
席を立とうとする留美に声を掛ける。
「なに?樹君はあんまり関係ないでしょ?」
「留美の一生って三ヶ月なん?」
「は?何言ってんの?」
「俺たちの事を一生の友達って言ったよな?三ヶ月でぶっ壊れてんだけど?」
「…知らないよ。そんなの。」
「あーそう、三ヶ月経ったんだから〇ねよ、腐れ女。」
「……うるさい!そっちこそ〇ね!」
留美は帰っていった。
俺は『俺たちは仲間だ』みたいな事を口に出して言う事は無いけど、俺なりに大事に思ってたんだ。
今まで励まし合ったり、困ったことがあったら助け合ったりしていた。
義明や英人だってそうだった。俺の大事な仲間だと思っていた。
だからこそ三郎を裏切ったのは許せなかった。
仲間だ仲間だ言うんだったら裏切ってんじゃねえよ!
留美も義明と英人も許せなかった。
「三郎、俺達もう集まるのやめるか?」
「………そうだな。少なくとも俺は集まるの無理かも。」
「いつもお前が声かけて集まってたんだから、お前が来なきゃもう集まんないだろ。」
「そうだよね、私ももう集まりたいとは思わないかも。」
咲も三郎に同意する。
「あー、十年以上の付き合いでもぶっ壊れんのは一瞬なんだな。」
「なんか、悲しいけどね。」
「なあ、樹、たまには連絡してもいいか?」
「別に全然いいよ。俺は義明と英人とはもう連絡取らんけど。」
「そうだね、私も友達の彼女に手を出す人は無理。」
「そうな。俺も樹と咲と貴美子とは付き合いを続けられるかな。」
「俺もそうするよ。」
「だな。悪かったな、俺がアイツをみんなに紹介したせいで。」
「まあ、紹介すんのは別に悪い事じゃないからいいよ。」
「そうだよ。別に三郎は悪くないよ。」
そう言って俺たちは別れた。
彼女のアパートで事の顛末を話した。
「大変だったねー、やっぱ寂しい?」
「ああ。そりゃな?付き合い長かったからなー。」
「私にはそんな付き合いの長い友達いないからわかんないや。」
「そっか。けど、一つ言っていい?」
「なあに?」
「あの女、声かけたの俺が最後じゃねーか!!!!」
「あはははははははははははははははははh」
そんな笑うことないじゃん…………。
最後までお読み頂きありがとうございます。