物置小屋から始まるオイラの異世界冒険記!!
秋の桜子さん、タイトルバナーありがとうございます!!
アホリアSSさん!!
カタツムリモンスターの影絵ありがとうございます!!
ちはやれいめいさん、エリンのイラストありがとうございます!!
オイラの名前は春夏秋冬周一。
こう見えても、ペンネームとかじゃなく本名だ!
ちなみに親によると、春夏秋冬と書いてヒトトセって読ませるらしい。
それが一周……なかなかユニークな名字と名前の組み合わせだぜ……おかげで、学校では散々弄られたぜぇ。
そしてそんなオイラは現在……なんと異世界にいた!!
ワケが分からん説明だろうけど、とりあえず聞いてくれ!!
地元の大学に受かったのを機に一人暮らしをする事になったんだけど……なんとその時に、少し前に亡くなった、近所に住んでいたオイラのおばあちゃんが住んでいた家に……見た目はまだまだ人が住めるほど綺麗だけど、人が住まなくなると、老朽化とか早いから、その対策として住む事になったんだぜ!!
そしておばあちゃんの家への引っ越しを終えてしばらくした頃。
改めて、今までは余裕がなくてできなかった、家の外の庭園とかの整理をしようと外に出て、そこで見つけた物置小屋を調べていたら……なんとその中が、異世界に繋がっていた事が判明したんだぜ!!
正確に言えば、異世界の森の中だ!!
こっちの世界のと似ている植物もあったので、もしや裏山辺りと繋がってたのかと思ったりしたけど、こっちの世界は昼間だったのに向こうは夜だったし、しかも月が三つもあった!! 間違いなく異世界!!
どうやらオイラは、最近流行りのラノベ主人公になったみたいだぜ!!
ラノベは学生時代、友人に勧められて読んだ事があるので、その時から異世界系の主人公への憧れはあった。だから、この時のオイラは……テンションが上がりに上がったぜ!!
そして上がったテンションのままに、その森の探索を始めたその時!!
「ひ、ひぃ! た、たたたた助け……ッ」
「!?」
オイラは……なんかくぐもった女性の声を聞いた!!
も、もしやテンプレ通りにヒロインとのファーストコンタクトか!?
くぐもった声のワケは気になるけど、とにかくオイラは……テンプレ通りならば美少女であろうヒロインとお近付きになれる事を考えて、ウキウキ気分になりつつ声のした方へと走った!!
すると、森の中を突っ切るように作られた一本道を発見!! そして、その場所からそう遠くない場所に……昔、TVで紹介されていた養蜂家が、蜂を相手にする時に着ていた完全防備な防護服っぽい服を着てる人がいた!!
あれぇ!? こんなファーストコンタクトなパティーンは初めてだぜ!?
ちなみに、養蜂家が着る防護服みたいに、透明なフィルターが頭部に付いてたので、防護服を着ている人の顔は分かった……青い髪の、美少女だぜ!!
そしてそんな美少女が……なんと、カタツムリが巨大化したようなモンスター、それも五匹に囲まれていた!! な、なんで異世界にカタツムリが……ま、まさかあの物置小屋から入り込んだカタツムリがこっちに来て、変な進化を遂げたとか?
あ、あり得る。
というか森の植物がオイラのいた世界のそれらと似ているのも……こっちの世界に植物の種子が、物置小屋を通って来たせいかな!? だとしたら、この森のほとんどの生物相はオイラの世界由来の外来種!? なんか申し訳ないぜ!!
いや、それ以前に……ゴブリンとかの誰もが知っているモンスターが序盤で美少女を襲っているっていうのが、異世界モノのテンプレなんじゃないのかな!?
だが青髪の美少女がピンチなのには変わりない!!
オイラの異世界チーレムストーリーを紡ぐためにも……オイラは躊躇なく青髪の美少女を助けに行くぜ!!
「ステータス、起動!!」
オイラはすぐに、カタツムリモンスターの詳細を知るべく、それを可能にする能力を起動した!!
そして、網膜に映ったそれによると……どうやらカタツムリモンスターの粘液は強酸性らしい!! それも、剣とかを余裕で溶かしてしまうくらいヤベェ、強力なヤツだぜ!!
けど生憎、オイラは剣とかを持ってきていないので、どっちみち、剣は使えないぜぇ……それでも、この森にはそれなりに武器があるぜ!!
オイラは、近くに落ちていた石をたくさん拾う!!
そしてそれらを……まとめて全力でぶん投げる!!
すると次の瞬間……カタツムリモンスター共の体に複数の穴が空く!!
たとえ剣を溶かすほどの酸を纏っていようとも……溶け切る前に貫通するほどの速度で投げ付ければ問題ないぜ!!
そして、次の瞬間…………カタツムリの弱点が分からないから、とりあえず下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる理論に則り、複数の石を投げ付けて穴だらけになったカタツムリモンスター共は……少しよろめいた後、倒れた!!
異世界に来てからの初バトルは、オイラの勝利で決まったぜ!!
「大丈夫でしたか、お嬢さん?」
そしてすぐに、オイラは、そのカタツムリモンスターに襲われていた青髪美少女に手を差し伸べた。
「…………ぇ、あ、はいっ! だ、大、丈夫……です……」
すると青髪の美少女は、おずおずと、オイラの手を取った。
青髪の美少女の名前はエリンというらしいぜ。
そしてどうやら彼女は、異世界系で言うところの冒険者ギルドに似た組織に所属している冒険者らしい。そしてあの森にいたのは、あの森でしか採取できない特殊な植物の採取のためだとか。
で、その植物を無事採取した後にカタツムリモンスター……この世界ではジャンピロと呼ばれるモンスターに襲われたらしい。いやぁ、オイラが今日、偶然この世界に来てラッキーだったぜ!!
「わ、わざわざ……出口まで…………送ってくださり……あ、ありがとう……ございました……ッ」
そしてそのエリンを、オイラは無事森の出口まで送ってあげたんだけど……なぜか彼女は終始、オイラに対してオドオドしていたぜ。
ちょっとショックだけど……まぁヒーローっていうのは時に、敵以上に恐ろしい存在として一般人の目に映る事もあるから、仕方ないかもしれないな……うん。次こそは、誰にも怖がられないように、第一印象を大事にした上で戦ってみせるぜ!
「所長! 報告があります!」
エリンは己が所属する組織へと戻り、脱衣所で防護服を脱ぎ、組織の制服にすぐに着替えると、早足に上司である所長の執務室に向かい……そしてノックの後に、入室して早々、所長へとハキハキと報告した。
「先ほど調査に向かった【瘴気の森】の中にて、その森の中でも防護服なしで活動できた謎の人型の存在と遭遇しました!」
「なにぃ?」
所長はその報告に、眉間に皺を寄せつつ反応した。
「馬鹿な。あの森に、我々と同じような生物が存在しただと? 五十年くらい前にあの森がああなって以来、いろんな謎の巨大生物が現れたが……人型の生命体の発見の報告は今までなかったぞ?」
腕を組みながら、所長は考える。
「新種か? いやだが、巨大生物は発見当初から巨大だった。まるで、最近流行りの小説みたいに、どこかの世界……巨大な生物が存在する世界とあの森が繋がってしまったかのように。そしてこの世界の存在にしろ、異世界の存在にしろ、五十年程度で、人型の新種が生まれるハズは……ま、まさか、ついに……今度はその世界の知的生命体が――」
「いえ、所長……私は人型の存在と言いました。生物とは一言も言っていません」
しかしその思考は、エリンによる、凛とした声に遮られた。
彼女の謎な発言を聞くなり一瞬頭の中が真っ白になり、思わず所長は「へ?」と遅れて反応した。所長には、彼女の言っている事が理解できないようだった。
すると、そんな所長を見かねたエリンは、改めて、深呼吸をしてから説明を開始した。
「もう一度言いますので、よく聞いてください。私は、あの【瘴気の森】で――」
「あー、異世界歩き回っていたら、こっちじゃもう夕飯の時間だぜ」
異世界から帰還した後、オイラは腕に付いている時計を見て時間を確認した。
異世界にいる時は電波が通じなかったのか、電波時計であるオイラの時計は時間を表示しなかったぜ……今度は、アナログな時計をセットするべきだと反省反省。
いや、それはともかく。
よくよく確認するとオイラのエネルギー残量は三十パーセントを切っていた。
石を全力で投げたからなぁ。
エネルギーが一気に減るのも当然だぜ。
「次からは、もう少しエネルギー運用を気にかけなければいけないぜ」
そう言いながらオイラは、へその部分をまさぐり……そこをパカリ、と開けた。
中から充電プラグが出てくる。そしてそれを家のコンセントに挿す事で食事――電気を摂取しつつ、同じく腕に付いているTVで今日のニュースを確認した。
『――続いてのニュースです。大手ロボットメーカーである【テクノトピア・ユニオン】が先ほど記者会見で、思考・人格インストールを可能とするヒューマノイド「ミュラード」の新型を開発したと発表いたしました。一世紀以上前から始まったとされる、大気汚染や水質汚染を始めとする環境問題の悪化に伴い、生物相が変化した、この西暦二五〇〇年代の地球で、私達人類が生き残るために開発されたこの「ミュラード」シリーズですが……現在我々が使用しているタイプは、エネルギー運用の点で問題を抱えていました。しかし先ほどの発表によりますと、この新型の「ミュラード」は、』
秋の桜子さん。
この度は企画参加版のタイトルバナーありがとうございました<(_ _)>
裏設定など
主人公の世界は、大気汚染や水質汚染などの環境問題が悪化した世界です。
そしてその影響で生物相が異常な進化を遂げました。ちなみに生身の人間は生活できない環境です。
網膜、という発言について。
そもそも人間の思考は電気信号で感情は脳内の化学反応。
そう考えると人間というモノは有機的な機械と言ってもいい存在。
という事は、無機物で感情があって、網膜っぽい部位があったら、彼らがそこを網膜と呼んでも不自然ではありません。
そしてミュラード。
初期のそれらは有機的な人間の脳内のデータを直接コピーするタイプでした。
しかし有機的な人間が一人もいなくなり、有機的な人間の脳内データのみが……この世界の施設内で、種子銀行のように残されるようになりました。
有機的な人間がいなくなってからは、そこから、その人間のデータを取り出し、無機的な人間が作られるようになりました。技術発展などの目的で。
でもって向こうの世界の【瘴気の森】と巨大生物。
巨大生物は主人公の推測通り主人公の世界の巨大生物が、向こうの世界で進化を遂げた存在。
そして【瘴気の森】の瘴気は……あとはお解りですね?
なお、過去の世界ではないかという感想がございましたが……もしも過去の世界であれば、いろいろとパラドックスが起きてしまいますので( ̄▽ ̄;)