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名なしの薬屋とアンダーグラウンド  作者: 蟹谷 ノッポ
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どこで道を外してしまったのだろうか。何故私はここにいるのだろうか…そう思ったところで私の意識は途切れた。


************


3月。ドルメンタ国には春が訪れていた。


ドルメンタ国は1年中温暖な気候だが、それでもやはり季節というものはあるのだ。

この国では四季の変化を楽しむという文化はあまりないのだが、それでも春の訪れを喜ぶ国民は少なくはない。

そして今年もこの時期が来たとばかりに、町では祭りの準備が進められていた。


しかし、そんな賑わいには目もくれず歩く一人の大学生がいる。それが私だ。


私にとっては春が来た喜びも、祭りもどうでも良い。今重要なことは薬剤師になれたかどうか。ただそれだけだ。


中学生の時に私は自分がしたい行動と、実際にする行動が異なる難病にかかった。家族は医者から


「娘さんが病気を完治することは不可能です。」


と言われた。両親は


「お医者様ですよね、なんで治せないんですか、、。」


と問い詰めた。


そこで医者が言った言葉は衝撃的なものだった。


「気持ちは分かります。でも、この病気を完治させる治療法と薬はないんです・・・。」


私の両親と兄はそれを聞き、絶望し、悲観していたが、私にとっては家族が私のことで悲しむことの方が辛かった。そんな時にどこからともなくある男と長髪のお姉さんが私の前に現れた。


「君達はなんだ。」


「まぁまぁまあ。」


長髪のお姉さんが言った。


そして彼らは私達家族に対してこう言った。


「私達があなたがたの娘さんの病気を治してみせます。」


「それは、不可能だとお医者様が、、。」


「そりゃ不可能でしょうね。何故ならあなたがたを診ているそこにいらっしゃるお医者様の腕がゴミだからです。」


「ゴ、ゴミとは随分失礼ですね。じゃああなたがたは治せるというんですか。」


「えぇもちろん。なんてたって貴方より腕の良い医者ですから。」


「ほ、本当ですか?」


「えぇ。ただし条件があります。ご両親には何も要求しません。要求するのはそこにいるゴミに対してです。」


「わ、私?な、なにをですか。」


「貴方はこの娘さんの病気を治すことができないと断言できますか?」


「勿論。この国の医者100人に聞いたら100人とも治せないと言うだろう。」


「言いましたね。」


「あぁ、言ったよ。」


「では、私がこの娘さんの病気を治したときは、この病院の医者1人を私にください。治せなかった時はあなたに1000万トルクをさしあげましょう。」


その場にいる全員が驚いた。男が言った1000万トルクは小型船一隻が買えてしまうほどの額だからだ。


「意味が分からない。医者1人を私にくださいぃー。どういうつもりなんだ。ふざけるのも大概にしろ。」


「あなたはさっき言ってましたよね。絶対に治せないと。そう思うのなら貴方は1000万トルクを簡単に手にすることができるんですよ。そこで黙って見といてください。」


憤慨している医者と対照的に男は非常に冷静だった。


「すぐ終わりますからね。」


そう私達に告げ、男は長髪のお姉さんからアタッシュケースを受け取り、中から緑色の液体が入った瓶を取り出した。


家族はその色を見てゾッとした様子だったが、私には病気を治してくれるスーパーマンのように思え、色は綺麗な緑色の水晶のような色だと思った。


「大丈夫なんですよね?」


父が男に聞く。変わりに長髪のお姉さんが答えた。


「問題ないんで、見といてください。」


とお姉さんが答えた後に男はすぐさま私に瓶の中の液体を投与した。


そうすると、直ぐに私は眠りについた。夢を見た。暗い闇の中だった。が、突然光が目の前に広がり、何も見えなくなった。そして、目が覚めた。


「さぁ、お嬢さん。手を上に上げてみてください。」


全員が固唾を飲んで見守る。


「う、動く。自分の思うとおりに動きます。」


医者と家族は驚き言葉が出てこない。


「それは良かった。」


男の頬が一瞬緩む。が、直ぐに真顔になって医者に対して言った。


「また医者を貰う件で話があるのとお嬢さんの経過観察をする必要があるので、また来ます。私が来るとは限りませんが。」


「本当にありがとうございました。なんとお礼を申し上げたら良いのか。」


「いえいえ。お礼なんて言いいんです。では私達はこれで。」


医者は俯いていた。だが、突然スイッチが入ったかの如く病室を出ようとする男にしがみついて言った。


「頼む、その薬がどんな薬か教えてくれ。」


医者は跪いていた。しかし、男が教えることはなかった。


「お前みたいなゴミが多いから、私達が困るんだよ。」


そう言い残すと男と長髪の女は嵐のように去っていった。


後日、退院まじかに迫り、1人窓の外を見ていた私のもとに長髪のお姉さんだけが尋ねてきた。


「もう来ないかと思っていましたよ。」


「来るよ。必ずね。」


「前一緒にいた男の人は?」


「あの人は何かと忙しいの。だから、今日は私だけがあなたの経過観察に。どう?その後は?」


「私自身も信じられないんですけど、自分の思う通りに体が動くんですよ。本当に感謝しています。今はお医者様になるために必死に勉強してます。」


「そう。それなら良かった。」


明るい口調で長髪のおねえさんは話してくれた。後から聞いた話だと、私が入院していた病院で働いていたお医者さん1人が病院で働くのを辞め、行方が分からなくなったそうだ。


「じゃあ私はこれで。楽しい人生を送ってね。」


「待ってください。あなたがたは何者なんですか。」


出ようとするお姉さんの足が止まる。そして後ろを振り向きながら言った。


「質問。一緒にいたさ、男は『なんてたって貴方より腕の良い医者ですから。』みたいなこと言ってたけど、何か特別な手術とかした?」


「うううん。」


「そう、何もしてないの。()()()()()()()()()。あの男は医者じゃないわ。モグリの薬剤師よ。」


「や、薬剤師?」


「そうよ。それもこの国正規の薬剤師じゃなくて、モグリのよ。私が言えることはここまで。あなたが薬剤師になったらりしたらまた会えるかもね。」


この言葉がきっかけで医者を目指さずに薬剤師を目指した訳ではない。薬剤師を目指したのは、医者になることが現実的に難しいと勉強していくうちに感じとったからだ。しかし、私の為に莫大な治療費を払い、大変な思いをさせた両親に金銭面で恩返しをしたと思ったのと、国の中でも大きな部類に入る製薬会社で、薬剤師の資格を取得し、研究者として働いている兄の姿に憧れた。だから、薬剤師を目指している。そもそもこの言葉自体最近まで忘れていた。


思い出させたのは、友人の言葉だった。



















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