表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王にレクイエムを  作者: 流月
96/198

89.昼食

 第四、第五の腕まで使って大急ぎで支度をした。

 とりあえず、さっと火を通してできるものを。食べている間にハンバーグを整形する。

 一時間以上かかったが…立派なごちそうが出来上がった。

 ミコト、喜んでくれるといいな。


「ハンバーグ、オムライス、エビフライ、ナポリタンに香草スープ…これは、世にいうお子様プレートというやつかい?」

 ミコトが好きな献立なのだから仕方ない。まぁそもそも量はお子様用ではない。

「ずいぶん待たせちゃって、ごめんね」

「別にかまわないわよ。私はずっと食べてたもの」

 おかわりを待ってましたとばかりに目をきらきらさせるミコト。こういうところは子供っぽくて可愛いと思う。

「というか、なんでスバルは食堂に来てるの?安静にしてた方がいいんじゃ…部屋にご飯も持っていくよ?」

「一人でおかゆをすするのも寂しかったのだ。あと、めっちゃいい匂いがして我慢できなかった」

 来たら来たでおかゆしか食べれないのも可哀想に思えてきた。

 しかしここは心を鬼にして、スバルの胃腸を守らなければ。

「…キミのお昼は卵おかゆだよ」

 台車の上の鍋から一杯掬い、スバルへと手渡す。

「今朝見たものより、茶色っぽい気がするな」

「味があるものがいいって言ってたから、味噌を入れたんだよ。味噌なら身体にいいっていうし、大丈夫かなって思って」

「卵に…味噌?味の想像ができんのだが…」

 首をかしげながら、匂いを確かめるスバル。

「お疲れ様、ほら座って。早くしないと、私が全部食べちゃうわよ?」

 ミコトに急かされるまま、その隣の椅子に座った。


「いただきます」

 みんなで一緒に声を揃え、手を合わせた。

 気疲れしたのか、今日はベルも一緒に食べてくれるらしい。

 おいしいものを食べれば元気が出る、って小さい頃言ってたな。

「お嬢、おかわりはいるかの?」

「ええ。ハンバーグをもらえるかしら」

 ひとりだけ食べれないグラケーノは、おかわりをよそう役をしていた。

 …味覚もなく、一緒に食事ができないのはとても残念だ。そういった生理的欲求がないからこそ、永い時を生きられるとも言えるのだろうが。

「意外と旨いな。卵おかゆ」

 火傷しないように気をつけながら、おかゆを口に入れていくスバル。

「こういう味を、家庭的というのか…ミコトちゃんの報告通り、女子力は高めらしいな」

 あの子は一体何を報告しているのだろうか。

「マスターのハンバーグって、甘めの味付けっすよね」

「ミコトがこの味がいいって言ったからね」

 ぱく、とハンバーグを一口食べてみる。

 ケチャップが多めの甘口のソース。肉からしみ出る熱い脂。柔らかい玉ねぎの食感。ケチャップのトマトの味が後を引き、もう一口と手が伸びてしまう。

 うん、やっぱりおいしい。


「…陛下」

 ごく小さな声でボクを呼び、視線を寄越すベル。その手には、グラケーノからもらった二杯目のスープがあった。

「もしこの料理のどれかに毒が入っていたら…陛下はお召し上がりになりますか?」

 小さな器の中で揺れるスープを見つめながら、そう問うてきた。

 匂いを嗅ぐ範囲では、毒は盛られていないようだが…。

「食べないかな。だって…こんな幸せな食卓、壊したくないよ」

 みんな過去に背負うものはあるけれど…ここは幸せで満ちているから。

「…そう、ですか」

 それっきり、ベルは話しかけてこなかった。


 ボクはまだ、その言葉の意味を知らなかった。

 …その言葉の違和感にすら、気づけないでいたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ