表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王にレクイエムを  作者: 流月
78/198

71.襲撃

 ヒグレがようやく落ち着いてきたころ。

 風はまだ冷たいが、日の下では少し暖かくも感じる日々。

 しかし、油断もしていられない。


 暗い夜。執務室でベルからの報告を聞いて。もう寝るかと立ち上がったとき。

 唐突に、部屋の隅の転移の魔法陣が発動した。

「だから、来るときは先に言ってくれと何度行ったら…」

 ときどき何も言わずにやってくるスバルに対し、いつも通り文句を言ってやろうとしたが。


 鼻先をかすめた血の匂いに、声が止まった。

 スバルは腹部を押さえ、肩で息をしていた。服は赤くじっとりと濡れており、かなりの出血であることはすぐに分かった。

「はは、すまないね…治療、頼めるかい?」

 血の色のない顔で、スバルはそう言った。

「分かった、分かったから、もう喋るな」

 スバルを床に寝かせ、傷の状態を見る。表面的な外傷はないが…おそらく、回復薬を使って応急処置をしたからだろう。

 止血の方法としては間違っていないが、内臓まで傷ついていたとしたら厄介だ。万が一、異物が入っていたりしたら摘出の手術まで必要になる。

「ベル、治せそうか?」

「傷の方は。しかし、内臓に銃弾が残っています。これは人間の外科医を読んだ方が…」

 すると、スバルは首を横に振って。

「今の状態じゃ、人間はどこまでが味方か分からない」

 暗躍する輩。その力は人間全てにまで及ぶ。

 文字通りの操り人形。銃撃も、手術のために病院に行くことまで計画されたものかもしれない。手術に失敗して死んだとすれば、人間側に非はない。

 むしろ、銃撃したのは魔王の手先だと言うかもしれない。

 考えすぎだとも思うが…どうにも気が立ってしまう。

 相手は、戦争を仕掛けようとしているのだから。

「抉り抜くか?」

 銃弾がありそうなところを、周囲の内臓ごと。麻酔はないが、傷口は後から治せば…。

「危険すぎます。第一、抉ったあとの傷を治せるだけの回復薬はこの城にありません」  

 それもそうだった。内蔵を複数同時に修復するとなると、最上位のものが必要になる。それも、大量に。

 ミコトの光の魔力は回復向きだとも聞くが…いかんせん魔法技術が足りてない。再生魔法なんて使えないだろう。

「転移魔法で最小範囲だけを切り取ります。陛下は倉庫からありったけの回復薬を持ってきてください」

 袖をまくり、空間探査系の魔法をいくつも展開していくベル。

「分かった、すぐ戻る」

 部屋から飛び出し、廊下の窓から外へと降りる。

 倉庫の南京錠を引きちぎり、回復薬をありったけ影の中へ放り込んで引き返す。


 もしかしたらと思っていたが…まさかスバルにまで手を出すなんて。

 余が死ねば奴を止める者はいなくなる、と以前スバルが言っていた。相手にとっては、邪魔者の排除と戦争の理由付けの療法ができて好都合なのだろう。

「…やはり、あちら側の人間か」

 だからボクは嫌いなんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ