67.火傷
ミコトの新たな必殺技。
全て受け止めた。覚悟はしていたが、かなり痛かった。骨まで溶けるんじゃないかと思った。
何とかもちこたえたが…案の定ミコトは力尽きていた。
「ほんと、キミって無茶ばっかりするよね」
どろどろに溶けた地面に落っこちそうになったミコトを空中で受け止める。
文字通り一撃必殺。あまり実践向けではないが、瞬間火力でいえば四人の中で最強の一撃だろう。
「あー、まだ火力足りてないのね。これ以上どうやって上げればいいのかしら」
だらんと全身の力が抜けきったまま、うんうんと悩むミコト。
「…眠いから寝るわ。夕食になったら起こしてちょうだい」
そして考えるのがめんどくさくなったらしく、寝てしまった。
この状況で眠れるって、このこすごいな…。
「うーん、地面がこれじゃ続行は無理かな」
ヒグレやグラケーノはギリギリ射程外に逃げ切れたみたいだけど…普通の人間だと、消し炭も残らないな、これ。
ここでひとまず戦闘は終了。
グラケーノが地面を元の状態に戻してくれたが…流石にみんな疲れていたらしく、城に戻って休むことになった。
…物質の状態まで操れるのには驚いたな。
「では妾がお嬢の着替えを行います。男子禁制ですから、この部屋には入らないでください」
そんな具合で、手持ち無沙汰となってしまった男性陣。
「ヒグレ、ケガはない?きゅっと締めちゃったけど…」
「あ、大丈夫っす。自己再生で何とかなったんで」
ずっとハラハラだったっすよ、とヒグレは笑った。
「それより坊っちゃんの方が心配なんじゃが…」
グラケーノが見つめるのは、ボクの左腕に残された大きな火傷であった。
応急処置はしたが、痕が残ってしまったのである。回復薬を何度も使えば、綺麗に治るだろうが…。
ボクはこれでいいと思った。
だってこれは、彼女が初めてくれた傷跡だから。
「お嬢も派手にやったっすよね…聞いてはいたっすけど、まさかあんな超火力だったなんて」
ヒグレは、少し悔しそうな表情で。
「…オレにはできない芸当っすよ」
ヒグレも魔力の応用次第ではまだまだ伸びると思うのだが…。
「痛みとかないっすか?痛み止めの薬、持ってくるっすけど」
「大丈夫だよ。ありがとう」
実をいうと、ちょっとヒリヒリする。でも、これも余韻として楽しんでいた。
こんな痛み、傷。三百年ぶりかもしれないな。
今夜はミコトのためにごちそうを作ってあげないと。
あ、でもその前に。
「お風呂、入らないとね…」
あれだけの戦闘をしておいて、泥だらけにならないはずもなく。
「この服、気に入ってたんすけど…泥汚れって落ちにくいっすよね…」
普段ミコトが森から帰ってきた服を洗濯しているヒグレが、そうこぼした。
その表情は、まるではしゃぎ回った子供がしょんぼりとしたようで。見ていておかしくてつい笑ってしまった。
「ちょ、そんなに笑わなくてもいいじゃないっすか」
「ごめんごめん、つい」
ボク自身も、はしゃぎ回ったった子供のような気持ちだった。
「今日はごちそうにしよう。何がいいかな?」
「お嬢はハンバーグが好きじゃったな」
ミンチは確か買い置きがあったはず。
「あ、オレは唐揚げがいいっす!」
吸血鬼はニンニクが苦手。ヒグレも若干その性質を引き継いでいるため、ニンニク料理は控えている。
なので唐揚げは、生姜で味付けした特別製だ。これがみんなに大好評だった。
唐揚げなら、きっとミコトも喜んでくれるだろう。
「よし、じゃあ唐揚げも作ろうか」
するとヒグレは嬉しそうに尾を揺らした。
…みんな意外と子供かもしれないな、と思うのだった。




