表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王にレクイエムを  作者: 流月
73/198

66.しんわざ

 目の前でヒグレが捕まってしまった。

 グラケーノの悔しさが、ここまで伝わってくる。

 動けない自分が、不甲斐なく感じた。

 

 情けない。悔しい。もっと力があれば。

 内に沸く自分への怒りが、思考を堂々巡りさせている。

 胸の奥が、ずきずきと痛む。血のためか視界が赤く染め上がり、痛みが走った。

 私が今よりずっと強ければ…。

 負の感情に、吞まれそうになったとき。


 かぁんっ!と甲高い音が響き渡った。

 シノの頭部に、弾丸がぶつかる音だった。

「…時間稼ぎは、足りたようじゃな」

 グラケーノが見つめる遠方。山肌に身を低くして大きな銃を構えていたのはベルだった。

 そう、この瞬間をずっと待っていたのだ。

 シノの意識が、完全にベルから外れる瞬間。

 ベルが使ったのは、時計に仕込まれた道具の十番目。

 名はミョウジョウ。その銃の特性は、魔力を一切使わずに弾丸を撃ち出せること。

 一昔前までは笑い話とされていた、魔法抜きの完全なる物理攻撃。法則を歪めることによって力を生み出す魔法と違い、法則の全てを理解し従うことによって生み出される力。

 戦闘において最も用心すべきなのは、魔法による死角からの狙撃である。

 そのため、敵の魔力を常に意識し続けるものだが…ミョウジョウはその裏をかく。

 魔力の動きがないため、攻撃をする素振りがないと誤解させるのである。

 そもそも、グラケーノに山を作ってもらった理由。

 それは、高度があり、かつシノから死角になる点を作るため。全てはベルの弾丸を意識外から撃ち込むため。

「お嬢!」

 シノも不意打ちを食らい、ヒグレを拘束する手を緩めた。

「あとは頼んだっすよ!」

 その隙にヒグレが抜け出し、ハクジツを拾って駆けてきた。

 走りざま私に投げ、そのまま全速力でこの場から離れていく。

「ええ。私に任せなさい」

 立ち上がり、愛刀を受け取った。

 再生は十分にできた。時間もぴったりである。

 

「思ったより痛いね、この弾」

 鱗に弾かれたものの、シノにダメージを与えたのは確かだった。

「とうとうライフルを復元させたかぁ。てっきりすぐ報告に来るかと…いや、あの子なりに驚かせたかったのかもね」

 ゆらりとシノの尾が楽し気に揺れる。

「さて、キミは何を見せてくれるのかな?」

 試している。そんな目をしていた。

「これは、あんたのためにつくった、私だけの必殺技よ」

 グラケーノとヒグレが、十分に距離を取ったことを確認してから。

「受け取りなさい。私の全て」

 それは、日の出と共に刻一刻と威力が高まる技。

 太陽の力を借り受ける、ハクジツの力を最大限に引き出す一撃。

 地を強く蹴り、太陽を背負うようにして刀を構える。

「この世あまねくに降り注ぐ太陽の慈愛よ、このひと時だけ、我が宿敵を滅ぼさんがために一条の光へと姿を変えたまえ」

 イメージは収束と貫通。膨大な陽光を、一点に集中させて焼き貫くのだ。

「陽の光よ、この手に力を」

 刀身の紋が輝き、肌を焦がすような熱を帯びる。巻き起こる風に、髪が大きく揺れた。

「【天照あまてらす!】」

 傲慢にも、神の名を騙る一閃。

 太陽が最も高く、輝いた瞬間。それを逃すはずがなかった。

 一条の光は、真っすぐに全てを貫いた。

 ごぉぉぉっ!と圧倒的な熱量に暴風が巻き起こり、大地は白熱して弾け飛んだ。

 

 そして当然私は力尽き、真っ逆さまに落下し始めた。

 思いの外再生に魔力を使ってしまっている。今から再生させようとしても間に合わないだろう。

 目の前に、ガラス化して赤く輝く地面が迫って来る。

 触れれば大やけどどころではない。

 でも大丈夫。だって、ほら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ