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魔王にレクイエムを  作者: 流月
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48.じぎ

 今日はシノとグラケーノはどこかへお出かけしたらしい。

 聞けば、離れ小島で模擬戦を行うらしい。

 それがシノの提案だというのだから驚きだ。


「ここからじゃ全く見えないわね」

 冷たい潮風が吹き付ける海岸。城やアカツキからも遠く離れた場所。

 水平線の近くでかすかに見える黒い点。あれが戦場になっているらしいが…何も分からない。

 時折低い衝突音が聞こえるがから、すさまじい戦闘であることは分かるのだが。

「でも近くで見るのはダメって言われてるんすよ」

 ややしょんぼりとした様子のヒグレ。

「こんなときは…これの出番ですね」

 じゃじゃーん、とでも言いたげなベルの笑み。

 かばんから取り出されたのは、小さな玉のような魔道具。

 続いて大きな石板を取り出し、魔力を込めていく。

 なるほど、このくらいの魔力量ならベルも平気らしい。

「【起動】」

 魔法が発動し、石板の表面に何かが映し出された。

「…私たちが、映ってる?」

 くるくると周囲を飛び回る魔道具。石板の映像もそれに合わせてくるくると回っている。

「古い文献に書かれていた魔道具で、ドローンというそうです」

 ドローン?初めて聞いたな。

「飛行用の風魔法と重力魔法。遠隔操作魔力回路と周囲の光を分析する魔法。最新式の多重付与型魔道具です」

 何て言っているのか全く分からないから、とりあえず黙っておく。

「これをいくつか飛ばしてみましょう。ここからでも戦いの様子を見ることができるはずです」

 あくまで邪魔にならないように、と。

 かばんからごろごろと出てくる魔道具一気に飛ばしていくベル。とても楽しそうだ。

 石板にそれぞれの魔道具の視点で映像がずらりと映し出され、ヒグレと並んで食い入るように見る。

 

 まず見えてきたのは、巨大な動く山。最初に出会ったときよりも大きいグラケーノの姿である。しかも、身体の表面が金属質になっていた。

 そして絶えず飛び回るシノの姿。グラケーノの大ぶりの攻撃を的確にかわし、反撃の機を窺っているようだった。

 ヨイヤミをチョーカーにしているので、割と本気でやっているらしい。

 ごっ、という音がして、シノの拳がグラケーノの脇腹に打ち込まれるのが見えた。が、表面はなかなかに硬いようで、全く傷がつけられていなかった。

 …シノが攻撃しているのは初めて見た。でもグラケーノが相手じゃ強さはよく分からないな。

 せめて肉眼で見ることができれば分かったかもしれないが…残念だ。

 

 続く一撃。今度は黒い影を纏った蹴りである。魔力を帯びた攻撃の威力上昇はヒグレの糸からよく分かることだが…これもまた弾かれた。

 グラケーノの表面に幾何学模様が浮かび上がったのである。

「あれは…防御魔法術式ですね。しかも起動時間もかなり短いです。流石ですね」

 これにはベルも感嘆していた。

 物理、魔力防御共に最強クラスである。

 より速く、鋭く、続けざまに攻撃を仕掛けるシノだったが、唐突に距離を取った。

 その直後グラケーノの背から放たれたのは、真っ赤な溶岩。

 どろどろに溶けた大地の血が、雨のように辺り一帯に降り注いだ。

 圧倒的な弾幕攻撃に攻めあぐねるシノ。そこに尾の薙ぎ払いがきて、回避に集中せざるを得なくなった。

 が、赤い雨の雫をかわしながら一気に距離を詰めるシノ。ただでやられる気はないらしい。

 シノの足元の影が巨大な手を象り、グラケーノの脚を掴んで地面へと引きずり倒した。

 あんなに巨大な影まで操れるのか…射程も恐ろしいほど広がるし、気をつけないと。

 バランスを崩したグラケーノ。そこに畳みかけるように拳を振り抜くシノ。

 またすさまじい音がした、かと思えば映像が一斉に途切れた。


 余波で魔道具が全滅。あれだけ距離を取っていたのに…なんて威力だ。

 これが殺し合いじゃなくて、ただの模擬戦だというのか。

 あれがシノの、魔王の実力。

 そう思うと、背中が凍り付いていくのを感じた。

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