4.しゅくてき
あたたかくて、優しくて。
久しぶりの安心感に、眠ってしまった。
ぼんやりと目を開き、見慣れない天井を見つめる。
花の香りがするベッド。ベッドの横には椅子が一つあるだけで、部屋はがらんとした印象だ。
「目が覚めましたか」
そろ、と扉から入ってきたのは色白の女性。
人間…ではない。この魔力はどうにも異質だ。
「森で倒れた、ときいて。勝手ながらお召し物を替えさせていただきました」
着たことのないワンピースに、艶がかかった髪。
ずいぶんと高待遇である。
しかし、私をここまで運んできてくれたのは…。
「あなた、あの竜の配下?」
どう見てもメイド。使用人を雇うなんて、竜だとかなり珍しいのだが。
「まぁ、そんなところです」
こんこん、とノックの音がして、あの竜がやってきた。
「良かった、気がついたんだね」
安堵した様子で竜は笑う。
私は腰元に手を伸ばし…愛刀がないことに気がついた。
「あ、刀は置いてきちゃった…」
少し申し訳なさそうな竜。
「大丈夫よ、今 喚び出すわ」
魔力は回復してるし、問題ないだろう。
ベッドから降りて、集中。
そして宙に浮かぶ、魔法陣。白い光が複雑な幾何学模様を描き出す。
す、と陣の中心に現れた鞘を掴み、引き抜く。
赤い鞘に納められた大太刀が、そこにあった。
「武器の召喚かぁ。すごいね、まだ若いのに」
感心したように竜は手を鳴らした。
「あんたの方がすごいわよ。私の全力を受けても無傷だったし」
そして、二人の言葉は重なった。
「これでも私、勇者なのに」
「これでもボク、魔王だもん」
じゅばっ、と二人の顔が突き合わされた。
心臓がバクバクといってうるさい。
そりゃそうだ。一族代々の宿敵が目の前にいるのだから。
今代の魔王は和平を結んでいるが、きっといつか人間を滅ぼそうとするに違いない。その脅威から人々を守るために勇者がいるのだ。
大人たちが、口をそろえてそう言っていた。
だからきっとそれは本当で、出会ったら私が殺さなくちゃいけないんだと思っていた。
しかし、勘違いで挑んだとはいえ私は大敗した。
人間がどうこうできるものじゃなかったのだ。
「え、勇者…?本当に?」
「勿論よ。この刀の名はハクジツ。この太陽の紋を知らないかしら?」
少しだけのぞかせる白銀の刀身に描かれた、日輪。太陽の女神から授かったとされ、この刀を折った者はいないといわれている。
「そっちこそ、そんなゆるふわな喋り方なのに魔王なの?」
我こそは、とかいうのが魔王のイメージ図なのだが。
「ゆるふわなんて…この瞳で信じてくれないかな?」
竜が指さしたのは、金色の瞳。
…そういえば、金色の瞳を持つ者は魔王しかいないって言われたような。




