23. 服装
朝と夜はひんやりとするくらいになってきたころ。
ヒグレとミコトが何やらこそこそとしている。
まぁ本人たちは楽しそうだし、ボクが口出しすることもないよね。
「できたわ!さぁご覧なさい!」
「ちょっ、お嬢!マスターに見せるのはまだ…!」
ばぁんっ!と部屋の扉を開け放つミコト。引きずられてきたらしいヒグレが、壁の後ろから顔だけのぞかせた。
一応ここボクの部屋なんだけどなぁ…。
今に始まったことじゃないし、気にしないでおこう。
「どうしたの?」
「やっと完成したから、そのお披露目にきたのよ!」
何を作っていたのか聞かされていないんだけど。
「い、いや、その…作っておいてなんですけど、ちょっと恥ずかしくなってきて…」
ミコトがヒグレに何か吹き込んだのだろうか。
強要されたって感じではないけど…。
「かっこいいんだからいいじゃないの」
「…マスターは見たいっすか?」
まぁ気になるのが普通だよね。
「ヒグレのかっこいい姿、見てみたいかな」
するとヒグレは、ぽっと頬を赤くして。
「マスターがそう言うのなら…」
出てきたヒグレが着ていたのはいわゆる執事服というやつだった。
白いシャツに黒い燕尾。ネクタイもきちんと留め、ズボンまで穿いていた。
竜の観点からすると、かなり異様な姿をしている。
しかし露出した足先の爪はきっちりと磨かれており、竜としての身だしなみも気にしていることが分かる。
「その服キミが作ったの?」
「あ、はい、そうっす」
どうりで妙な気配がするわけだ。
…やっぱり同じ。舐めると痛い目に遭いそうだ。
布を織って、切って、縫ったのか。なかなかに器用らしい。
「魔力でできた糸なら防御性能も高いだろうし…うん、すごくいいと思うよ」
物理攻撃で切るのはまず不可能だろう。魔力を使えば切れるだろうが…戦闘時、この子を相手に魔力を見せるのは危ない気がする。
よく分からない恐怖というものは、確かに存在するのである。
「この季節だと、ちょっと暑いんじゃない?大丈夫?」
「暑いときは上の燕尾は脱ぐんで、大丈夫っすけど…」
するとヒグレは一呼吸おいて、もの言いたげにこちらを見つめて。
「その…似合ってますか?」
似合っているのかときかれても。そもそもボクには服のセンスというものがないのだが。
給仕服、使用人らしい服が似合うって言うのも失礼なんじゃ…。でもヒグレが好きでやっているのなら…。うーん、分からないなぁ。
「似合っているかは分からないけど…なんか新鮮で面白いね。ボクは好きかな」
むやみに力をひけらかすよりも、隠しておく方が好ましい。
最近はたくましくなってきたし、人間の執事姿とは違うかっこよさがある。
「なら良かったっす!」
ぱぁぁと顔を輝かせ、ピコピコと尾を揺らすヒグレ。
なんだかちょっと可愛らしくも見える。
「たてがみもすごく綺麗だし…さらさらで気持ちいいし、ずっと撫でてたいなぁ」
「そ、そうっすか?」
嬉し恥ずかし、といった表情のヒグレ。
「じゃあ次はメイド服を作りましょ。シノに着せる用の」
さらっとミコトがとんでもないことを宣った。
「ボクは男だからね⁉」
「あんたは女装もいけるわ。私が保証する」
いや保証されても困るんだけど。
「マスターなら何でも似合うと思いっすよ!」
ヒグレがやけにやる気なのが気がかりだった。




