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魔王にレクイエムを  作者: 流月
23/198

22.としょかん

 ヒグレと最近、よく図書館で出会うようになった。

 壁一面に敷き詰められた本。古くさいインクの匂い。

 ひやりとした空気は静けさに満たされており、時間の流れ方すら違う空間。

 それが魔王城地下の大図書館だ。


「ヒグレも調べものをしているの?」

「調べものっていうか、好きなものを見つけてくるようにマスターに言われたんで。それを探しているところっす」

 かなり話し方も軽くなってきたヒグレ。初めて会ったときとは別人である。

「オレの魔力って、糸?なんすけど。使い方が分からないんすよ…何か役に立てればって思うっすけど…」

 竜が糸を操るという話も聞いたことがないのだが。

 まぁ、シノが目をつけるくらいだし。他と大きく違う部分もあるだろう。

「糸なら…裁縫とかは?」

「裁縫っすか。そうっすね…頑張ればいけるかもしれないっす」

 裁縫なら、まだシノも習得していない。もちろん私もしていない。

 それと…思っていたことが一つ。

「あなたは全裸なのね」

「そういう言われ方だと、少し恥ずかしいっすけど…」

 シノはマントをつけている。

 しかしそのマントはかなり大胆なデザインである。背に大きなスリットが入っており、そこから翼を出しているのだ。裾の方にも切れ込みがあって、尾がのびるようになっているのである。

 見え隠れするというものには不思議な力があるようで、何だかちょっと色気を感じるのだ。ベルが言っていたチラリズムというやつだろうか。

「服っすか…確かにずっと着てたんで、なくなるとなくなるとスースーするっすね」

 竜族は何故隠すものがないのか。不思議である。

「えっと、ミコト様は…」

「そんな呼び方しなくてかまわないわ。立場はあまり変わらないもの」

 魔王城に居候。シノのご飯の虜。

「でも、一応勇者様なんで…」

 一応ってどういう意味なのか。風格はそれなりにあると思っているのだが。

「なら、お嬢?かしら。ギルドのみんなはそう呼んでいるし」

 私も、あまり意味は知らないが。冒険者の男連中がよく使うのである。

「は、はい…お嬢」

 …受付のお姉さんも使っていたし、特に気にしていなかったが。なんか、若干引かれているような気がしないでもない。


「で、その服のことっすけど。どんなのがいいと思います?」

 竜は基本的に裸族。力が強い方が、自身の肉体を見せびらかす習性があるらしい。そういう観点で見れば、シノはかなり謙虚な姿である。

 しかし私は人間として、きちんと服を着てもらいたいと思う。竜に服を着せると仮装っぽさしかないが…まぁ、いいか。

「じゃあまずは服の本を探しましょ。きっとあなたに似合うものを見つけてあげるわ」

「え?お嬢の調べものはいいんすか?」

「あなたの手助けをする方がいいと思ったのよ。さぁ、行きましょ」

 

 私に人助けの心があったことに驚いたが…それは勇者の血によるものなのだろうか。

 勇者が勇者たりえるのは、ひとえに血筋である。

 神が生きていたとされる大昔から一度も絶えずに受け継がれてきた血と力。

 その歴史がどんなものなのか、私はまだ知らない。 


 

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