18.なかま
スバル様の活躍により事態は収束。
私はシノと一緒にスバル様に転移用魔道具で送ってもらい、魔王城まで帰ってきていた。
半竜は空き部屋で今も眠っている。暴れたりするとは思えないが…とりあえずベルと三人で順番に見張りをしながら、目覚めるのを待つことにした。
「う…」
目をゆっくりと開けた半竜。のそりと起き上がり、知らない部屋におどおどとしていた。
「怯えなくてもいいわ。ここは安全よ」
なるべくやさしく声をかけたつもりだったが…半竜の緊張は全く解けていなかった。
何て声をかければいいのか悩んでいると、シノが部屋にやってきた。
「おはよう、気分はどう?」
すると半竜は目をぱちくりさせ。
「…マスター」
しゅた、とシノの前に跪いた。
一切無駄のない、洗練された動きだった。
「え?いや、そんなことしなくてもいいよ。買ったのもあの場を切り抜けるためで…」
しかし私が驚いたのは、シノを一発で認識したことである。
半竜はシノの本来の姿を知らないはずで。
初めて会ったときと姿が全く違うのに、どうやって識別したのか。
「なんでバレちゃったなかなぁ…」
「魔力です。その巨大な魔力を完璧に制御するなんて、驚きです」
私でも見抜けなかったシノの魔力。
それをこの子が、一瞬で推し量ったというのか。
奴隷だなんて侮ってはいけなかった。これをシノが見越していたとしたら…恐ろしく勘が鋭い。
「さすが、竜と吸血鬼のハーフだね」
身体能力が他種族と一線を画す、竜の強靭な肉体。
そして吸血鬼は相手の血から魔力を奪い、操れる。血液そのものを武器にすることもできるという。
その二つが交わったら、どんなものが生まれるというのか。
「ねぇ、この城で働いてみる気はない?」
働く、と聞いてびくりと肩を揺らす竜。
「簡単な仕事だよ」
しゃがんで半竜の目を覗き込むシノ。
「三食きちんと食べて、好きなことして、夜にはちゃんと身体を綺麗にして、あったかい布団で寝ること」
それは人間にはごく当たり前のことで。
とても仕事とは思えない内容だった。
「え…?それが仕事、ですか?」
きょとんと首をかしげる半竜。
「うん。よく食べ、よく寝て、よく遊ぶ。ときどきボクの話し相手になってくれると嬉しいな」
間違いのない、心からの言葉だった。
「それが嫌ならどこへ行ってもかまわない。もうキミを縛る魔法はないからね」
無意識なのか故意なのかは分からないが、少し狡い言い方だ。
こんなの、断れるわけないじゃないか。
「分かりました。それがマスターのお望みであれば」
深く頭を下げる半竜。
「よろしくね。じゃあ、キミの名前は…ヒグレ、でどうかな?」
夕日みたいで綺麗な瞳だから、とシノは言った。
「はい。ありがたく頂戴します」
そしてこのとき、ヒグレが初めて笑うのを見た。
こうして、また一人魔王城の同居人が増えた。
…これが何を意味するのか、このときの私はまだ知らなかった。




