17.収束
目的の半竜は無事に保護。しかし、かなりの大事になってしまった。
ここでやっとスバルの出番である。
「第一部隊、突撃!」
スバルが懐にしのばせていたらしい魔道具。遠距離で会話するためのものである。
魔道具とは魔法が刻まれた道具のこと。スバルが今使っているのは、ベルのお手製だ。
スバルの呼びかけに応じ、出入り口の扉を破ってきたのは大量の警官。
興奮が消え、場の空気が一瞬で凍り付いた。
「ここにいる全員取り調べをさせてもらうぞ。なんせ現場をおさえたのだからな…一人も逃すな!」
はっ!と声が重なり、統制のとれた動きで一気に場を制圧していく。
王の権限が強い国だからこそできる技である。
すると、さっき金をせがんだ男がこちらを睨みつけた。
「命令だ!今やってきた人間を全員殺せ!」
半竜の額に魔法陣が浮かび、バチバチと火花を散らした。
「いやっ…いやあぁあぁぁっ!」
どうやらそれは激痛を与える魔法のようで、半竜はもがき苦しみ始めた。
「その半竜を渡せ!金はあとでなんとかする!だからその半竜をこちらへ渡せ!」
血走った目で喚くように怒鳴る男。
「…調子に乗るなよ」
どれだけ魔族を侮辱すれば気が済むのか。
「この半竜はすでにこちらのものだ。どうするかはお客様の自由なのだろう?」
言ったことの責任。大人なら分かっているはずだ。
「魔力回路へ干渉。アクセス権限断絶。術式の消去、実行」
半竜の魔法陣が黒く染まり、砕け散った。
魔力を術式に強制介入させることによる、魔法の破壊である。
…こんな荒業を使える者はそうそういないだろう。
「馬鹿な⁉三百年以上破られなかった支配魔法が…」
青ざめる男。
対して半竜は一瞬だけこちらを見て、気を失ってしまった。
「そうかそうか。貴殿が奴隷販売組織の首魁だったと…半竜の密売を行っていたと」
男に詰め寄りにこにこと笑うスバル。しかしその目は全く笑っていない。
「貴殿には被疑者としてついてきてもらおうか」
とぼとぼ警官たちに連行されていく人々。
「王よ、そちらの方は…」
「余の懐刀だ。安心するがよい」
王らしく振舞うスバルを見たのは久しぶりかもしれない。
全てを察したらしい警官はこちらに敬礼し、足早に去っていった。
「では、この半竜の処分についてだが…」
「ボクが引き取ってもいいかな?」
そのためにボクはここまでやってきたのである。
「…そうか。ではその半竜は突如現れた超お金持ちな絶世の美少女に攫われたということにしておこう」
表面的な事実は間違ってないけど。なんだろう、この微妙な違和感は。
「お金の方は寄付するよ。ボクじゃ使い切れないし」
あれは歴代の魔王が集めていた財宝。
たぶん人間から奪ったものが多いし、こうするのが世のためだろう。
「感謝する。今後とも良き隣人であろうぞ」
あとはスバルに任せて大丈夫だろう。
「私、出番なかったわね…」
はぁ、と少しししょんぼりした様子で溜め息をつくミコト。
こうして調査という名の襲撃は終わり、スバルの伝説がまた一つ増えたのであった。




