15.発見
女の子の格好にされてしまった。
まぁ、可愛いけど…男としては複雑である。
でもミコトがあんなに楽しそうだと文句も言えなくなっちゃうんだよなぁ…。
三人でやってきたのは巨大な宴会場。
一面の畳に所狭しと並べられた料理。肉から魚まであり、酒を飲んだらしい楽しげな笑い声があちこちから聞こえる。
「普通に屋敷の中に入れたね…」
「こういうときの警備はザルだからな」
城をよく抜け出す経験者は語る。
…城に影武者を置いてくるという暴挙をなす王とは一体。
人ごみに紛れてこそこそと動き回る。
するとぽつりぽつりと人の姿が減っていることに気づいた。
「追うぞ」
スバルの言葉に頷き、三人で追いかけた先にあったのは何の変哲もない扉。
しかしずっと観察していると一人、また一人とその中へと入っていく。
宴はカモフラージュ。本命はこちらというわけだ。
扉の奥には百に近い人間の気配。やや遠いから…地下室だろうか。
魔力感知で探ってみると、一つだけ異質な魔力があった。
端的にいえば、混ざっている。どうにも異様だ。
「…今夜あの先の部屋で闇オークションが行われる。品は一つだけ…竜と吸血鬼のハーフ」
ほのかに魔力を感じさせるスバル。
…やはり王族固有の能力は強い。
「合言葉は分かった。潜入するぞ」
その表情は静かな怒りをたたえていた。
スバルが扉に向かって何かを伝えると、かちりと鍵が開く音がした。
音声によって発動する魔法か。そのあたりのセキュリティは今度ベルにきいてみよう。
暗い階段を降りるとまた扉があり、それをまた開くと大きな部屋に出た。
まるで歌劇場の舞台のような空間。仮面で顔を隠した人々。
舞台をぐるりと囲む観客席でひそひそと囁き合っている。
「今日は目玉商品らしいですね」
「なんでも、数百年前に捕獲して調教したらしい」
「やっぱり魔物は調教しなくちゃ」
観客席の一番後ろで、そんな言葉を聞いていた。
人間は一枚岩ではないのだ。
昼間の店の人もここにいるのも同じ国の人間なのだ。
殺してしまうのが手っ取り早いが、そうはいかない。
人間の法で、人間の手で罰を与えさせなければ。
「では今宵の一品は…こちらです!」
小太りの男が大きく声を張り上げる。
舞台に置かれた檻の布が取り払われ…中にいたのは少女であった。
目隠しをされ、手枷、足枷をはめられている。病的に白い肌に着せられたぼろきれのような粗末な服から、ろくな扱いをされていないことがうかがえた。
「竜として戦わせるもよし、吸血鬼として血を吸わせるのもよし!こうして人に化けることも可能なので…どうするかはお客様の自由!」
その男の目は金への欲に濁っていた。
本当に魔族を道具としてしか見ていないようであった。
虫唾が走った。我慢ならなかった。
「お値段は金貨百枚から!さぁ今宵の落札者は…」
男が甲高い声で早口にまくしたてようとした、そのとき。
があんっ!と耳をつんざくような破壊音が響き渡った。
その場にいる全員が目を見開いた。
…檻が粉々になったのだから当然だ。
ひ、と人々が息を飲む中。
「…今、あんた魔法を使ったの…?」
目で追いきれなったらしいミコトが困惑した様子で問いかけてきた。
…その通りである。あまり使いたくなかったが。
鉄屑と化した檻。しんと静まり返った会場。
「…後始末は任せた」
頷くスバルとやや怯えたミコトを尻目に。
客席を飛び越え、ボクは半竜の前に降り立った。




