14.こくおう
おそろいがいいと言われて、どうしようもないくらいの興奮をおぼえた。
だっていつもは何もかもが違うから。ほんのひと時だけでもおそろいができるって思ったら、嬉しかったのだ。
まぁ、晒も巻いていないことには驚いたが。
なんとかしてシノの着替えに成功。
「うーん、なんだかむずむずする…」
さっきまでひらひらのワンピースだったのだから当然だ。
「アラクネの糸だから、耐久性はそこらの鎧より高いわよ?」
今日だけというのはあまりに惜しい一品である。
「…どう?変じゃない?」
深い藍の生地に、白い小さな梅の柄。清楚であり可憐でもある姿は浮世離れしていた。
「絶世の美少女ね…」
「そりゃあ見本が可愛いからね」
何気なくシノは言ったが、これはかなり恥ずかしい台詞だ。
殺し文句をすらすらと…きっと数々の女を誑し込んできたに違いない。
…こんなに可愛い可愛いと言ってくるのはスバル様以来かもしれない。
その後支払いを済ませたときには、すっかり日が暮れてしまっていた。
「スバルとの待ち合わせ場所は…ここだね」
狭く、暗い路地裏。街の喧騒もどこか遠い場所。
というか…待ち合わせ?
「スバル様も調査に行くの?」
「うん。そもそもスバルが持ってきた案件だし。もし見つかったらそのまま現行犯逮捕してやるって」
大国の王が二人も…そんなに大事だったとは。
「やぁ、待ったかい?」
町人風の軽装で現れたのはスバル様。
今日の雰囲気は王というよりおじさんに近い。
「今日はこれから酒宴に行くからな。しかしシノ殿はなかなかめかしこんだようだ」
「そんなじろじろ見ないでよ。ボクだってちょっと恥ずかしいんだから」
けらけらと笑うスバル様とそっぽを向くシノ。
この二人もだいぶ仲がいいらしい。旧友といった雰囲気だ。
「カゲロウ家主催の大規模な宴会があるらしくてな。そこにきっと何かあるはずだ」
ちょっと騒ぎになってもなんとかしてやろう、と息巻くスバル様。
「この格好でボクだってバレたら恥ずかしすぎるよ…」
「なに、その変装を見破れるのは余くらいだろうさ」
事実、私でも難しいのだが…スバル様の魔力は読心なのだ。
読んで字のごとく、心を読む力。
アカツキ王家に伝わるもので、その反則的な力は人心掌握に適していた。
王の前では嘘もまやかしも一切通じない。アカツキが大国であり続ける理由の一つである。
ただその力を妬み恐れる者も多いことから、国民には知らされていない。
「あと、ボクお酒飲めないんだけど」
「一杯で酔いつぶれる竜もなかなかいないと思うがな」
それは初耳だった。
私は勇者の能力の一つで無効化できる。だからてっきり魔王にこそういうものがあるのかと思っていた。
酒に弱い…酔ったシノ…。
「ちょっと見てみたい気もするわね」
「あのねミコト、これはちゃんと真面目な調査で…」
「そうだぞミコトちゃん。あんなに可愛いシノ殿を大衆にさらしてはいけない」
ややずれた発言をするのがスバル様らしい。
「大丈夫かなぁ…」
こうして三人は宴の会場へと向かった。




