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魔王にレクイエムを  作者: 流月
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103.共有

 まさかベルがそんな実験をしていたとは…。もっと目を離さずに側にいた方が良かっただろうか。

 まぁ…これから気をつけるとしよう。うん。


「ヒグレの禁忌権限(エラーコード)共有(リンク)といいます。情報を繋ぎ、一つにすることができる力です」

 ベルにしか見えない世界。その説明は常に突飛で、ボクの理解が追いつくのには時間がかかるようであった。

「いわば、何とでも一つになれる力です。ヒグレがお嬢の光の魔力の情報も、陛下の消去(デリート)の情報も取り込むことができたのがその証拠です」

 吸血鬼の能力の上限を破る形で発動していたということか。

 確かに、異常な適応力があるとは思っていたが。そんな仕組みになっていたのか。

「手で触れること、媒体である糸で触れることが発動条件のようです」

 ボクの影が、ヒグレの糸にあたるのか。色々あるんだな。

「やっぱりあの糸、特殊だったんすね」

 アラクネのように、糸を持っている種族は多い。しかし、ヒグレの糸の特徴はそれらと全く合致しなかったのだ。

「機織りをしろって言われたときはびっくりしたっすけど。自分が思っていた以上に器用に動かせたっすからね」

 あぁ、やっぱり。ヒグレは以前にも布を作ったことがあった。

 あの夏の日、服屋で見たあの生地は神の領域にあるものだったのだ。

「戦ってて、相手に触れた瞬間、相手の考えが…次の一手が自分のことみたいに頭に流れ込んできたことがあったんすよ」

 それがおそらく、思考回路の共有だったのだろう。

「それで先手取って殺すことができて。以来、触れることが勝つ絶対条件になったっすね」

 ヒグレは、ベルの方に目線をやって。

「糸で触れるだけで発動できるって教えてくれたのは、先輩だったっすよね?」

「そうですね。言うかどうか悩みましたが…貴方の禁忌権限(エラーコード)には期待していたので」

 聞いている限りでは、それほど殺傷能力が高いは思えないのだが。


「自身の持っている力を仲間に与えたり、仲間の力を自分のものにしてしまう…自他の差を埋める力、それが共有(リンク)です」

 言われてようやく、その力の恐ろしさを理解した。

「なら、ヒグレの再生能力をシノに持たせたり、私の剣技をヒグレが扱えるようになるってことかしら?」

「はい。その通りです」

 想像を絶するほどの可能性を秘めていた。

 個人の種族的な優位性も、積み上げてきた努力も自分のものにできるとは…もしも敵に回ったらと思うと、ぞっとする。

「そ、そんなおっかないことができたんすか、オレ」

「できることを知らないからできなかっただけです。応用がききやすい力ですし、やろうと思えばおおよそのことはできるはずですよ」

 自分の力の可能性に、ヒグレもおののいているようであった。

「ただし、あくまで共有です。思考回路を繋げば自分の考えていることも相手に筒抜けです。諸刃の剣であることを忘れてはいけませんよ」

 相手の力を手に入れても、使いこなせなければ意味がない。力の弱点は持ち主が一番よく分かっているところであり、逆に足元をすくわれる可能性もある。そのあたりは、ヒグレの技量が問われるところだ。


「共有させる力…やろうと思えば…マスター、一つ試したいっすけど、いいっすか?」

「まぁ、いいけど…危なくない使い方で、ね?」

 差し出した手に、ヒグレの指が小さく触れた。

「共有…感覚…」

 そのとき、ヒグレの瞳に変化が起こった。

 ベルと同じように赤く染め上がり、白い×印が浮かび上がったのである。

個体情報(パーソナルデータ)Ⅰとして、共有…」

 すると、ボクの左手の甲に赤いⅠの文字が現れた。

 え、と固まった瞬間。ずっ、と何かが繋がったような、身体の中に異物が入り込んできたような感覚があった。

「こ、これは一時的な…刻印、なのかな?呪いとかじゃないよね?」

 若干、本能的な恐怖を感じてしまった。

「大丈夫です。ヒグレが解除すれば消えます」

 ボクの方からの拒否権は…ないだろうな。禁忌権限(エラーコード)だし。いざとなれば、消去(デリート)で無理やり回路を切断することもできなくはなさそうだが。

「じゃあ、ちょっと失礼」

 おもむろに燕尾服の中に手を入れ、モソモソと自身の脇腹をまさぐるヒグレ。

 それと同時に、ボクの脇腹にもさわさわとした違和感を感じた。

「ちょ、ヒグレ、くすぐったい!や、やめっ…!そ、それ、反則じゃない!?」

 痛みには慣れているが、こういうのは本当に慣れてない。スバルがいる手前、大声で笑ってしまうわけにもいかない。

 こ、これ耐えるのかなりきつい…!

「オレ、温泉のときからずっと逆襲の機会を伺ってたんすよ」

「それ今やる必要あるかなぁ!?」

 声を必死に我慢しているボクを見て楽しそうなヒグレ。いつの間にこんな性悪になってしまったのか。


「あぁもうひどい目に遭った…」

 幸い、すぐにやめてくれたが。くすぐられている間ずっとスバルが面白そうにボクのことを見ていたので本当に恥ずかしい。

「害のない使い方その一ってことでいいっすか?」

「ボク、そこそこ被害受けてる気がするんだけど…」

 主にボクの尊厳とか。いや、ベルの説明から考えたらこのくらい可愛いものか…。

 もっと有意義な無駄遣いを考えてほしいなぁ、と思うばかりであった。

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