100.かくりつ
世界とか演算とか、神とか言われたが…矛盾は意外とありふれたものだということが分かった。
しかし欠陥とは、一体どういうことだろうか。
「一番分かりやすいもので言うと、双子ですね。特に一卵性双生児は、本来一人で生まれてくるはずだったものですから」
…ちょっと待て。双子だって?
「ミコトちゃんとリンネは二卵性だ。性別が違うからな」
拍子抜けした。てっきりそこで矛盾が発生したから、機構権限が二つに分かれたのかと…。
「同じ胎内、というだけで矛盾が発生したのかもしれません。忌み子は転生者ですから…もし一卵性だったら、お嬢は記憶や性格もリンネの前世を引き継いでいたでしょう」
…二卵性で良かった、と思った。
いや待て。今、何か重要なことを言われた気が。
「私、その、ぱ…何とかデータに既に矛盾があることがあるのは確定なのかしら?」
「えぇ、ありますよ。はっきり表示されています」
ベルの眼には、見えているのか。
「なら、私にも禁忌権限が宿る可能性はあるのね?」
「そう、ではありますが…」
えっと…と、ベルは言い方を少し考えてから。
「妾もそうですが。陛下、グラケーノさん、ヒグレも禁忌権限を持っています」
衝撃的すぎる発言だった。名指しされた三人もめちゃくちゃ目を見開いて驚いている。
「個体情報に重大な欠陥がある確率、そこから禁忌権限を宿す確率を考えると、天文学的な数字になるのですが…」
それが四人同じ部屋にいる確率とは一体。
…いつもの五人の中で、私だけが持っていない。だからこそベルも言い辛かったのだろう。でも。
「問題ないわ。私も絶対に手に入れてみせるから」
可能性が無いわけじゃない。それが分かっただけで十分だった。
「どうすれば、手に入るのかしら?」
正攻法じゃシノを殺せない。宿命を捻じ曲げてシノを殺すには、私も人知を超えた力を手に入れる必要がある。
「強く願うこと、だと思います」
返ってきた答えは、やけに抽象的なものだった。
「強くって、どのくらいよ?」
「自己演算領域を神の領域まで接続して、情報を引きずり出すくらいです」
やっぱり分からない。神の髪を引っこ抜くイメージでやればいいのか?
「命の危険を感じるくらい、でしょうか?」
なるほど。分かりやすくていい。
「シノ、ちょっと表に出なさい。決闘よ」
「ボクとの決闘って、そんなお手軽に命の危険を感じちゃうものなの…?」
少なくとも、前回の決闘で追い込まれたときはかなり命の瀬戸際を感じた。
「とりあえず、ベルの話を最後まで聞いてからにしようよ?ね?」
やや混乱した表情のシノ。
確かにその通りだ。グラケーノやヒグレも禁忌権限を持っているというのは初耳だったみたいだし。経験者に聞けばより良い努力ができるというものだろう。
「オレがマスターやグラケーノさんと同じような力、持ってる気がしないっすけど…」
「ワシ、全部初耳で、何言っておるのか全く分からんのじゃが」
「ボクも、一つ一つ説明してほしいかな」
三人とも、自覚は無いらしかった。参考になるといいのだが…。
「では、妾の眼で分かることの、全てをお話しましょう」
その瞬間からが、ベルの本領発揮なのであった。




