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魔王にレクイエムを  作者: 流月
10/198

9.失礼

 ミコトが城で住むことになった。

 人間の女の子と一つ屋根の下。

 …年頃の娘をどう扱えというのか。

 スバルめ、あとで文句の手紙を送ってやろう。


 今日で同居三日目。朝の食堂にて。

「にしても、大きい物から小さい物まであるのね」

 サイズがあまり統一されていない家具やトイレを見たミコトが言った。

「大型魔族や獣人も出入りしていた頃の名残だよ。今はボクとベルしかいないけど」

 今日の朝食はベルが作ってくれているため、のんびりと駄弁ることにした。

「ベル…あのメイドのことね?あの子は何なの?」

 何なのか。この場合答えるべきは種族名である。

「悪魔だよ。しかも大悪魔」

 生き物の欲望から生まれる種族、悪魔。

 その特殊な生まれから肉体という概念は薄く、食事も不要だし年も取らない。

 下級悪魔なら数年で自然消滅するが、自我をはっきりと持つ大悪魔に寿命はないといわれている。

 まぁ、魔力を込めた武器で攻撃されればかなりダメージを受けるらしいが。

「私、大悪魔って初めて見たわ」

 大悪魔は大罪系の欲望から生まれる強力な悪魔。下級悪魔がより強い力を得たもので、発生まで数百年はかかるといわれているくらいだ。

 ふーん、とミコトは鼻を鳴らした。

「てっきりサキュバスか何かかと思ってたわ」

 サキュバスはみだらな下級悪魔。人間、魔族問わず誘惑し、快楽と引き換えに生命力を吸うものらしい。

 その姿はとても卑猥といわれている。

「じゃないとあのおっぱいの大きさはおかしいわよ…でもアスモデウスでもなさそうだし…」

 自身の断崖絶壁を見ながら大変失礼なことを言うミコト。

 うーん、大きいとは思うけど…ボク、竜だからそこらへん分からないんだよなぁ…。

 人間と魔族では美醜の基準もデリケートな部分も全く違う。ベルに言われて、女の子の扱いには気を付けるようにしてるけど…ミコトもだいぶ世間知らずな部分があるように思う。

「私、もう十五なのに…ちゃんと大きくなるかしら?」

 何を言っても怒られそうだし、黙っておこう。

「…何か言いなさいよ」

 じろり、とこちらを睨むミコト。目をそらしていたのがバレたらしい。

 でも何かって言われても…。

「ミコトは可愛いんだし、そんなに気にする必要もないと思うんだけどなぁ」

 これが本音だ。黙っていれば可愛いのは事実だし。ボクは人間の女性の魅力も分からないし。

「…可愛い?」

「うん、可愛いと思う」

 女の子を褒める言葉って可愛いだったと思うけど…間違っていただろうか。

「この女たらしめ…」

 頬を朱に染めもじもじと目を伏せるミコト。

 するとおもむろに腰の大太刀を抜いて。


「殺し合いをしましょう」

 この三日で十回は言われた気がする台詞。

「ちょっと待って?今ここで!?」

 せめて朝食を食べてからにしてほしいのだが。

「勇者と殺し合いなんて、魔王なら朝飯前でしょう?」

 やっぱりこの子はひとの話を聞かない。

 …ご飯、冷めないといいなぁ。


 

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