トモダチ(2)
私の名前は藍夢。今日は駅の近くで散歩をしている只の魔法少女だよ~。まあ、散歩をすると言ってもデストル探しなんだけどね~。そんなことを考えながら、プライズの反応する方向に行くと、すぐにワールドが見つかった。このプライズの反応からしてワールドの中に別の魔法少女がいるのかな? 苦戦してるかも! 助けに行かなきゃ。また、あの時のようなことにならないように。
入ってみると、ワールド内のデスドールは一匹もいなくなっているみたいだった。きっと、先に入った魔法少女の子が倒してくれたんだと思う。ちなみにデスドールというのは、簡単に言えば、デストルの子供のような存在。だけど、デストルが強ければ強いほど、デスドールも強くなるの。だから、逆に言うとデスドールを一匹ぐらいは倒さないと、デストル自体の強さが図れないという事なの。でも、一匹も残さずに倒せるぐらいだと、ここのデストルもかなり弱いのかも~~。だからといって、油断するわけにはいかないけどね。
そういうことを考えながら、先に進んでいくとデストルが見つかった。案の定、魔法少女が地面に倒れていた。私は魔力を込めながら、剣を振るとあっさり真っ二つに分かれた。やっぱり、これくらいで倒せるという事は相当弱いデストルみたいだね。その後、その魔法少女の子と一緒にワールドの外に出てカフェに行くことになったの。
私はオレンジジュースとドーナツを頼んだの。でも、目の前の子はカフェラテにパンケーキという何とも高カロリーなものを頼んでいるね~。太るとか気にしないタイプなのかな? そんなことを考えながら、私は少女に名前を聞いた。少女の名前は瑠衣ちゃんというらしい。瑠衣と混沌の話をしていたときに、何か知っているの? と、聞かれた。私はこの事を言うわけにはいかなかった。いかなかったというより、言いたくなかった。ましてや、大切な魔法少女仲間であり、友達であった子を私は見殺しにしたのだ。そんなことを言って、瑠衣に引かれるわけにはいかなかった。なぜなら私はその混沌によって友達を見殺しにしたから。
数年前、私が魔法少女を初めて数ヶ月。大分、魔法少女生活に慣れてきて順調にデストルを倒している頃に、それは起こった。ある日、友達の魔法少女新倉 怜湖ちゃんと今度倒しに行くデストルの場所選びをしていたな。
「今日はここのデストルを倒しに行こう」
怜湖ちゃんがそう言って、地図を指さした。
「へ~~、渋谷か~」
思わず、感心してしまった。私は最近東京に引っ越してきたばかりで、元は田舎っ子だからそんな都会の場所には期待を抱いていたのだ。
「うん‼ ここは人が多い分デストルが集まりやすいってことでしょ? だから、人が多いところに行こうって訳よ!」
「確かにデストルが多い場所に行けば、ベクトは手に入りやすいと思うけど、そんなところは他の魔法少女が狩り切ってるんじゃないかな~?」
ちなみにベクトというのはデストルを倒したときに手に入る報酬のようなもの。魔法少女にとってのお金っていうところが正しいのかな? ベクトを消費して、プライズのメンテナンスをしたりするぐらいしか、私は使ったことがないからあんまり知らないけど、まあそんなところかな。
「うんうん。だけど、逆にそんなところにいるデストルは強いだろうから、逆に喧嘩とかは起きないんじゃないかな? 一緒に団結して倒そー‼ みたいな」
稀に魔法少女は縄張りのような場所を持っていることがある。だから、見ず知らずの魔法少女にいきなりデストルを倒されて、自分達の取り分を失ったら魔法少女で対決なんてこともあり得る。そういう魔法少女は大抵、グループなどを組んでいることが多いため、集団戦でも仕掛けられたら、堪ったもんじゃないんだよね~。
「いや、ならないんじゃないかな? 私の取り分を奪うなって喧嘩になりそうだよ~。普通に」
「ぶー! そんなこと言わずにいーくーのー‼」
玲子ちゃんは頬っぺたを膨らませて、まるで三歳の子供みたいに言った。
「分かったよ。何が起きても知らないからね~~?」
そんなことを言いながら、行くことに賛成した私。このとき、私はもっと強く言って生かせることを止めなければいけなかった。
何だかんだで渋谷に来た私たちはプライズを頼りにワールドを探した。三十分後に渋谷の裏通りのような場所でワールドを見つけた。
「じゃあ、入ろうか」
私はそう言って魔法少女に変身し、中に入ろうとした。
「藍夢」
急に名前を呼ばれて振り向いた。
「今回のデストルは多分すごい強いと思う。だから、何があっても自分の命を優先して。死にそうになったら私を見捨てて逃げて」
突然、そんなことを言われて私は驚いた。
「へ? どーゆーこと? 今までもこれからも私たちは一緒だよ?」
「でも、今回は無理かもしれないからさ」
怜湖ちゃんは強がるが、目には涙が溜まっている。
「それなら、いい」
「へ?」
「親友を無くしてでも、倒したいデストルなんていないから」
私はそう言った。そんな気があるなら倒す意味がないの。それだったら、ここを縄張りにしている魔法少女が倒せばいい。でも、縄張りにしているのに倒さないということはそれほど強いデストルなんだと思う。
「ダメだよ! 負の感情をまき散らすよ」
「・・・・・・」
黙ってしまった。その通りだから。
「分かったよ。じゃあ、一人で行くよ」
「待って!! やっぱり一緒に行こう。見捨てられないよ」
そう言って二人でワールドに入った。デスドールも強かったが、何とか倒しきった。
「最深部に行くよ」
「う・・・・・・うん」
心配になってしまった。
「大丈夫だよ! さっきのデスドール全部倒せたんだから倒せるよ」
「そうだね。行こう!!」
そういうやりとりをして、デストルのいる最深部に向かう。
今回のデストルはいつも見るデストルよりはかなり不気味だった。空に浮かんでいる無数のブラックホールのような物体と本体だと思われる不気味な猛獣がいた。
「じゃあ、行くよ!」
そう言って怜湖ちゃんは走って行ったが、デストルはすぐにブラックホールで怜湖ちゃんを吸い込んだ。
「怜湖ちゃん!」
そう叫んだ途端に別のブラックホールから怜湖ちゃんが出てきた。
「う・・・・・・うう」
怜湖ちゃんは疲労のあまり立てないようだ。
「大丈夫!?」
「大丈夫・・・・・・じゃないかも。デストルに魔力吸われた。変身できるぐらいのギリギリの量しか残ってないみたい。起き上がるのは無理そう」
本当にマジックポイントがないみたいだ。私は怜湖ちゃんに魔力を注いで、走れるぐらいにはしてあげた。
「ごめん。これぐらいしか出来なくて」
「ううん。全然大丈夫。これなら逃げるくらいなら普通に出来る」
そう言って怜湖ちゃんは武器を強くにぎった。
「へ? 逃げるつもりなんじゃないの?」
「ごめんごめん。でも、決めたの。アイツを倒すって」
しょうがないな。本当に。
「分かった! アイツを倒そう!」
私は2人で挟み撃ちにすることにした。この一発で決められるような相手じゃないって分かってるけど、ここで決めないと死んでしまう。
私たちは跳躍して、上から奇襲をかけた。
「グギョオオオオオオオ!!!!」
デストルは真っ二つに切れた。だが、怜湖ちゃんが血を吹いて倒れていた。今にも死にそうだ。だけど、私は今の一撃で殆どの力を消費していた。
「逃・・・・・・げて」
デストルは真っ二つに切れたはずなのに元に戻ろうとしている。正直、怖かった。死んでしまうことが。私は逃げ出してしまった。親友を置いて。